肝臓がん 異なる生存率

肝臓がん、ゲノム異常で6タイプに分類 異なる生存率

日本人の肝臓がん患者300人のがん組織のゲノム(全遺伝情報)を解読したところ、ゲノムの異常から六つのタイプに分けられ、生存率が大きく異なることがわかった。
国立がん研究センター理化学研究所などのチームが2016年4月11日付の米専門誌ネイチャージェネティクスで発表した。
がんの診断や予防、治療法開発につながる可能性がある。

私的コメント
具体的には、タイプごとに効く薬の創薬や、既存の抗がん剤の効き方を予測する技術の開発につながる、と見られる。

2008年に発足した「国際がんゲノムコンソーシアム」と呼ばれる国際共同研究の一環。
肝臓がん患者300人のがん組織と血液からDNAを抽出し、次世代シーケンサーと呼ばれる装置でゲノムを解析して比較した。
 
一つのがん組織で見つかったゲノム異常は平均約1万カ所。
肝臓がんの発生にかかわることが知られている遺伝子異常のほか、これまで知られていなかった新しいがん関連遺伝子も10個以上見つかった。

私的コメント
細胞は日々分裂を繰り返しているが、その際、まれにゲノムの配列に異常が起きる。この異常がたまたまがんに関わる遺伝子などに起きると、細胞ががん化する。

がんの進行にかかわる遺伝子異常などをもとに6グループに分けることができ、患者の5年生存率をみると0%から85%までグループごとに違いがあった。
今後、さらに研究を進めると、がんの原因となるウイルス感染やアルコール性肝障害の有無にかかわらず、がんの悪性度を予測できる可能性があるという。

私的コメント
総計約70兆個の塩基の配列をスーパーコンピューターで解析した。
 
また、がん組織ではB型肝炎ウイルスの遺伝子がDNAに組み込まれているケースのほか、人に感染してもほとんど症状が出ない「アデノ随伴ウイルス」が組み込まれている例も見つかった。
ウイルスが組み込まれた周辺の遺伝子の働きが変わり、がん化にかかわることが示された。

私的コメント
がんを抑制する遺伝子として知られる「P53遺伝子」に異常があるタイプは患者全体の5分の1を占め、5年生存率は20%と低かった。ARID2という遺伝子に異常があるタイプは、0%とさらに低かった。逆に生存率が80%と高いタイプもあった。

国立がん研究センターでは「がんになる仕組みが解明されると、新たな治療法や予防法の開発につながる可能性がある」と話している。
 
肝臓がんは年に約3万人が死亡し、がんの部位別でみると肺や大腸などに続いて多いほうから5番目。
国立がん研究センターによると、肝臓がんは年に4万人以上が新たに診断されている。そして3万人以上が死亡する。
05~07年に診断や治療を受けた肝臓がん患者の5年生存率は約35%という。

私的コメント
従来のがん治療では、同じがんであれば同じ抗がん剤で治療することが多い。
だが近年、がんの特定の原因遺伝子の異常によって生じるたんぱく質を抑えてがんの増殖を抑える「分子標的薬」が登場。
肺がんや乳がん慢性骨髄性白血病などで効果が上がっている。
肝臓がんには、まだ分子標的薬がない。
今回、日本人の肝臓がんに多い遺伝子異常のタイプがわかったことで、肝臓がんの分子標的薬の開発につながると期待される。
日本では年間約4万人が肝臓がんと診断され、3万人以上が死亡する。
全国がんセンター協議会のがん生存率調査では、肝臓がんの5年生存率は全体で約35%、10年生存率は約15%と低く、有効な治療薬の開発が求められている。

出典
朝日新聞・夕刊 2016.4.12



 
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2016.4.3 撮影