高齢者の「てんかん」

高齢で突然のてんかん発作、自覚なく

けいれんなどの発作を繰り返す「てんかん」は、子どもの病気と考えられていたが、高齢者でも多いことがわかってきた。
年を取ってから初めて発作を起こす初発のケースも多く、原因がはっきりしないこともある。
認知症に似た症状もあり、正確な診断が重要だ。

認知症と似た症状も
てんかんの発作は、大脳の神経細胞に異常な電流が流れ、過剰に興奮して起きる。
診断では、問診や脳波、CTやMRIによる脳の画像を使う。
側頭葉のほか、意思・思考・運動などを担う前頭葉など、障害の起きる脳の部位などによって症状やタイプが異なる。
 
てんかんの発症は20歳未満と60歳以降に多く、日本は超高齢化社会を迎えることからも高齢者の患者は増えることが予想される。
患者は65歳以上で推計で約30万人(有病率1%)。
 
赤松さんらによる大規模な疫学調査では、高齢者の有病率は1%を超える見通しだという。
原因は脳卒中や脳腫瘍などが3分の2を占めるが、3分の1は原因がわかっていない。
 
高齢者の初発では全身のけいれんは起きないことが多い。
9割以上は「部分発作」という、手足の軽いけいれんや匂いや味の異常などで、記憶がないまま、もうろうとした状態が数日続くこともある。
失神や認知症と間違えることもある。
アルツハイマー型の認知症と診断され、誤った治療で症状が悪化する患者さえある。
 
てんかん薬には多くの種類があり、タイプや症状などによって、薬の組み合わせや量を調整する。
薬で7割は発作を抑えられる。

■専門医で詳しく検査
一方、抗てんかん薬を飲んでも、発作が残る場合がある。
高齢者に限らず、投薬治療を始めて1年たっても発作が治まらないときは、専門の医療機関で詳しく検査を受けたほうがよい。
薬がてんかんのタイプにあっていない場合や、そもそもてんかんが原因ではないことも少なく無い。
 
てんかんは、脳神経外科神経内科、精神科、小児科など多くの診療科がかかわる。
厚生労働省は昨年度、専門的な鑑別診断が可能な全国8つの医療機関を「てんかん診療拠点機関」に指定。
行政と一緒に相談や啓発を行い、患者と家族を支えるためのモデル事業を始めた。
 
鑑別診断で決め手になるのが「長時間ビデオ脳波モニタリング検査」だ。
入院して病室のベッドでの様子をカメラで録画しながら、脳波も測定し続ける。
ある大学病院では約4日間かける。
発作の瞬間をとらえることで診断が大きく変わることもあるという。
 
発作時に本人に意識がなく、病気を認識しにくいことも多い。
発作のビデオを本人に見てもらうことで、自分の状態を理解し、治療に向き合うことにつながる。
発作の様子を家族が録画して持参すると、診断に役立つこともあるという。

 
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出典
朝日新聞・2016.5.4