家族性の脂質異常に新薬

家族性の脂質異常に新薬 生まれつき高いコレステロールに効果

悪玉のLDLコレステロールが生まれつき多い「家族性高コレステロール血症」という病気がある。
若いうちから動脈硬化が進み、心筋梗塞などの危険性が増す。
今年4月、効果が高い新薬が登場した。
ただ、病気に気付いていない患者が大勢いるとの指摘もある。

20代で心筋梗塞
この病気は、生まれつきLDLが肝臓で十分に分解されないため、動脈硬化が進んで男性は20~30代から心筋梗塞狭心症の危険性が高まる。
スタチン系の薬などでLDLを抑えていく必要があるが、薬が十分に効かない患者も多い。
 
診断基準は、
(1)LDL値が180以上
(2)手足などに黄色腫(黄色いしこり)か皮膚結節性黄色腫がある
(3)2親等以内に、家族性高コレステロール血症か、男性なら55歳未満、女性なら65歳未満で心筋梗塞などを起こした人がいる
の二つ以上が当てはまる場合だ。
 
新薬のレパーサは、LDLの分解を妨げるたんぱく質「PCSK9」の働きを抑える。
家族性高コレステロール血症の患者を対象とした国内の治験では、従来の薬と一緒に使うとLDL値が平均で7割下がったという。
 
従来の薬ではLDL値を100未満にできない患者でも、この薬で多くの人は達成できる。
 
今年4月から公的医療保険が使えるようになった。
対象は、従来の薬による効果が十分でなく、心筋梗塞などを起こすリスクが高い患者。
価格は1本2万2948円(患者の自己負担はこの1~3割)で、4週間に1回3本か2週間に1回1本打つ。
ただ、すべての患者に効くわけではない。

早い診断、突然死防ぐ
家族性高コレステロール血症は、年齢を重ねるほど心筋梗塞などのリスクが高くなるため、早期の診断と治療が重要となる。
 
しかし、患者や医師の認知度が低く、LDL値が薬で一定程度は下がることなどから、見過ごされている面があるという
。国内の患者は数十万人とみられるが、実際に診断されているのは1%以下とする推計もある。
 
日本動脈硬化学会は診療指針で、この病気の患者についてはLDL値の目標値を健康な人よりも厳しい100未満にするよう求めている。
診断されるまでにLDL値の高い状態が長く続いており、動脈硬化が進んでいるためだ。
 
患者が見つかれば、その血縁のある人にも患者がいる可能性がある。
夫と妻のどちらかが患者の場合、その子どもは2分の1の確率で、この病気になる。
病気とわかれば、治療や生活習慣の改善に取り組むことで、心筋梗塞による突然死などを防げるという。

健診でコレステロールが高く、心筋梗塞などを起こした家族がいる人は医師に相談したい。

 
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参考
朝日新聞・朝刊 2016.6.22