更年期障害と甲状腺疾患

更年期障害甲状腺疾患 多様な症状、見分け肝心

「仕事中にイライラしたり不安を感じたりすることが多く、疲れやすい。動悸が激しくなり、通勤電車に乗るのが怖い」。
更年期の女性の健康相談などを実施するNPO法人「女性の健康とメノポーズ協会」の電話相談で、48歳の会社員A子さんは訴えた。
 
内科を受診しても異常は見つからず、精神科で処方された薬を飲んでいるが改善しないという。
「こなしていた仕事がうまくできず自信がなくなった」と話すA子さんに、担当者は「婦人科や更年期外来を受診してみては」と勧めた。

疲労感などの症状
同協会には、40~50代女性から職場での体の不調を訴える相談が増えている。
「1986年の男女雇用機会均等法施行前後に社会に出た女性が働き続け、更年期にさしかかっている影響もある」と同協会はみる。
 
相談ではほてりやのぼせ、頭痛、めまい、肩こりといった症状に加え、疲労感や倦怠感、無気力など心の症状を訴える例が目立つ。
管理職など責任ある立場になったものの、集中力の低下や効率の悪化で能力不足と悩む人も多い。

更年期とは閉経を挟んだ前後約10年間を指す。
閉経の平均年齢は約50歳なので、45~55歳程度になる。
卵巣の機能が低下し、女性ホルモンのエストロゲンの分泌が急激に減る。
この時期に現れる症状で日常生活に支障が出る状態を更年期障害と呼ぶ。

エストロゲンは妊娠・出産に必要なだけでなく、感情や精神の安定、皮膚や粘膜の潤いなどを全身に影響を及ぼす。
動脈硬化の予防、記憶・認知の働きを助けるといった作用もある。
更年期障害と一言でいっても、症状は人によってさまざまだ。
医師は問診と血液検査の数値などを踏まえて診断する。

治療法の一つが減った女性ホルモンを補うホルモン補充療法だ。
1カ月で症状が改善する人もいる。
この治療に関する米国の研究から、乳がんのリスク上昇を心配する人もいるが、医師が適切に管理し、定期的な検診を受ければ大きな問題にはならない。

<私的コメント>
理想はそうですが、医療現場では果たして「適切に管理し、定期的な検診」がされているのでしょうか。
ホルモン補充療法が保険適応ということ自体も個人的には疑問です。

更年期の症状は、家族や職場の人間関係などのストレスが重なり起こる人も多い。
つらいと感じたら早めに婦人科などを受診しよう。
更年期障害か別の病気かを判断する窓口にもなる。
 
別の病気の一例が、甲状腺疾患だ。
ホルモンの異常が関係し、更年期に出る症状と似ている部分も多い。
見分けがつきにくいため的確な治療を始めるのが遅れる人もいる。
甲状腺は喉にある器官でホルモンを分泌して全身の新陳代謝を活発にする。
しかしホルモンが多すぎるとバセドウ病に、少なすぎると橋本病になる。

治療法は確立
バセドウ病甲状腺にできる自己抗体を常に刺激し、ホルモンが大量に分泌される。
発症は20~40代が中心だ。
いつも運動しているような状態になり、心臓にも負担がかかる。
治療ではホルモンの合成・生産を抑える薬を服用する。
手術や放射性ヨウ素内用療法を実施する場合もある。
 
40~60代に多い橋本病は自己抗体が甲状腺を破壊し、ホルモンの量を減らす。
疲れやすい、元気がなくなるなど更年期障害うつ病と症状が似ているが、汗が出ないのが特徴だ。
治療では甲状腺ホルモンを補う。
 
いずれも命に関わる病気ではなく、治療法も確立している。
診断は血液検査が基本で、自己チェックシートもある。
専門家のもとで適切に治療すれば治りやすい。

女性の健康とメノポーズ協会は、働きやすい職場づくりを進める「女性の健康推進員」という資格を設け、2012年から「女性の健康検定」を始めた。
知識を増やす目的で女性が活用するケースのほか、管理部門の男性が受ける場合もあるという。
 
ホルモン分泌の変化の影響を受けやすい女性の体は、生活習慣病など男女に共通する病気とは区別し、正しい知識を持ってケアをすることが大切だ。

 
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参考・引用
日経新聞・夕刊 2014.7.11