たばこと病気

たばこと病気 様々な臓器のがん死亡リスク上昇

2020年の東京五輪パラリンピックに向けて、受動喫煙防止対策を強化する必要がある・・・。
厚生労働省は昨年、「たばこ白書」(喫煙の健康影響に関する検討会報告書)の最新版を発表した。
たばこと健康の問題にいま改めて注目が集まっている。
 
「たばこの害」と聞いて多くの人がまず思い浮かべるのは、喫煙とがんの関係だろう。
 
たばこの煙には5千種類を超す化学物質が含まれており、その中には発がん性の物質も約70種類あることが知られている。
これらの物質は、細胞が分裂するときに遺伝子のコピーミスを起こさせ、がん細胞の発生につながる。
 
たばこを吸わない人に比べて喫煙者は、肺がんで死ぬリスクが男性で4・8倍、女性で3・9倍も高くなるとの調査結果がある。
こうしたデータは、国立がん研究センター「がん情報サービス」内のサイト
http://ganjoho.jp/public/pre_scr/cause/smoking.html
で見ることができる。
 
忘れてはならないのは、喫煙は肺がんだけでなく、様々な臓器のがん死亡リスクを高めるという点だ。
今回の白書では、喫煙者本人への健康影響として、「胃がん」や「食道がん」「肝臓がん」「膵臓(すいぞう)がん」など複数のがんについて、因果関係を「確実」と認定している。
 
肺から吸収された発がん物質は、血液に乗って体のあちこちに運ばれる。
このため、吸い込んだ煙の通り道である肺やのど(喉頭咽頭だけでなく、体中の様々な臓器にがんを引き起こすのだ。
 
喫煙はがんだけでなく、心筋梗塞などの「虚血性心疾患」や「脳卒中」などのリスクも高める。
煙に含まれる様々な有害物質の影響で動脈硬化が進み、血管が詰まりやすくなることが原因の一つだ。
さらに、血栓もできやすくなり、心筋梗塞脳卒中のリスクが上がると考えられている。
このほか、「歯周病」や「2型糖尿病」も、喫煙によって発症しやすくなることが分かっている。
 
まわりの人のたばこの煙を吸わされる受動喫煙の影響も深刻だ。
本人はたばこを吸わなくても、受動喫煙のある人は肺がんになるリスクが1・3倍になるとの解析結果が昨年発表された。
 
たばこが原因で病気になると、医療費がかかったり働けなくなったりする。
白書では、喫煙に伴う社会的な損失が年間で総額4・3兆円にのぼるとの試算が紹介されている。
 
日本はたばこに寛容な社会だ。
しかし、健康被害の大きさを考えると、もっと厳しく規制していく必要がある。
 
大人による喫煙は、次の世代の健康にも悪影響を与えます。
 
たばこを吸う妊婦から生まれた赤ちゃんは、乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクが高くなる。
また、自宅で親がたばこを吸うことなどによる受動喫煙でも、SIDSや子どものぜんそくのリスクが高まると指摘されている。
 
このように、健康への悪影響が様々に指摘されるたばこだが、「意志が弱いから禁煙できない」のではなく、ニコチンという依存性の物質が原因で、たばこをやめにくくなってしまう。
 
日本は先進国の中でもたばこの価格が安く、屋内で喫煙できる場所も多い。たばこを吸いやすく、やめにくい社会だ。
喫煙による病気のリスクを社会全体でしっかりと認識し、特に受動喫煙を防ぐための具体的な取り組みを強化していくことが必要だ。

日本では喫煙が原因で年に約13万人、受動喫煙で約1万5千人が死亡すると推計されている。
その合計数は、交通事故や自殺で亡くなる人の数をはるかに上回っている。
国民の命と健康を守るため、目先の利益にとらわれず、国レベルで実効性のある対策を進めてほしい。

 
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朝日新聞・朝刊 2017.3.18


JTについて
https://ja.wikipedia.org/wiki/日本たばこ産業
・旧日本専売公社から1985年(昭和60年)4月1日に業務を承継している。
特別法「日本たばこ産業株式会社法」による特殊会社で、根拠法には、全株式のうち3分の1以上の株式は日本国政府財務省)が保有しなければならないと法律で規定されている。

・戦略にも積極的であり、JTインターナショナルを含めた販売シェアは世界第3位。2007年(平成19年)には世界2位のブリティッシュ・アメリカン・タバコに迫ってきた。
最近はJT自体の収益も国内消費の低下を海外消費の上昇で補っている面がある。
(私的コメント;原発輸出やカジノ解禁を連想させます)