がん治療の進歩確認は

がん 治療の進歩確認は難しい

医学は進んでいるのに、がんで死ぬ人は増えている。
一体、がん治療は進歩しているのだろうか? 
この質問に答えるのは、実は簡単なことではない。
 
がんは細胞の老化といえる病気だから、高齢化が進めばかん死亡数が増えるのは当然だ。
社会の高齢化の影響を排除して比較するには、「年齢調整がん死亡率」を使う。
これは実際の社会のがん死亡率を、もし社会が1985年の年齢構成だったらと仮定した場合の死亡率に換算したものだ。
年齢構成の違いを気にせず、異なる地域や時代の問でがん死亡を公平に比較することができる。
 
わが国の年齢調整がん死亡率は国際的に高い水準だが、90年代以降はゆるやかな減少傾向にあり、この10年では約15%も減少している。
 
がん治療後の5年生存率も着実に向上している。
93~95年に治療した患者の5年生存率は53.2%だったが04~07年では68.8%にアップ
した。
だからといって、がん治療が進歩したとは言い切れない。
検査法が進歩したり、がん検診の受診率が向上したりすれば、早期がんの比率が高くなり、全体の生存率もよくなるからだ。
比べるなら、同じ進行度(ステージ)の患者どうしで比較する必要がある。
 
早期がんであるステージ1の患者の5年生存率は、97年は89.7%。
2007年は93.2%に上昇した。
ステージ2では77.9%から83.7%に、ステージ3は46.1%から53.6%になった。
転移を伴うステージ4では、12.0%から20.2%と増え、10年で着実に生存率は改善し
ている。
 
ただこれも、厳密には、がん治療が進んでいる証拠とはいえない。
診断技術が進歩すると、治療が進歩しなくてもステージ別の生存率は向上するからだ。
以前はがんが脳に転移してもなかなかわからなかったが、CTなどがある今ではみつかる。
すると患者は早期がんではなくなる。
小さな転移も発見できるから、ステージ4の生存率もよくなる。
 
がん治療全体の進歩を確認するのは、容易ではない。
といって、個々の治療の有効性を確認できないわけではない。
この2つを混同しないことが重要だ。

参考・引用
日経新聞 ・朝刊 2017.2.2



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京都・龍安寺 鏡容池の桜