「口中調味」でおいしく健康

ごはん・おかず交互に 「口中調味」でおいしく健康

唾液分泌促し満腹感/塩分取り過ぎ防ぐ
口中調味という言葉がある。
日本の家庭の食卓で昔から普通に実践されてきた食べ方で、米飯とおかず類を交互に食べ、口の中でゆっくり混ぜ合わせて味わうことを指す。
かむ回数も増えて唾液が増えるなどし、早く満腹感を感じられ、食べ過ぎや塩分・脂質の取りすぎを防ぐことも期待できる。
 
ある女性(42)は、太り始めてきたので主食の米飯を極力抜く糖質制限を続けていた。
ところが、正月に新潟に帰省し、だしの効いた雑煮や塩ザケと炊きたての白米を前に「我慢しきれずほお張ってしまった」と話す。
米飯を我慢しなくてもいい方法はないか悩んでいる。

日本食ならでは
こんな人にお勧めなのが三角食べによる口中調味だ。
主食の米飯と主菜、副菜、汁物などを交互に少しずつ食べる食べ方で、口の中で米飯とおかずを混ぜ合わせて、よくかんで味の広がりを楽しむ。
日本の家庭では当たり前のようなスタイルだが、実は日本食ならではの食べ方として見直されている。
 
口中調味には良い点がいくつかある。
まずは唾液量の変化。
米飯だけ食べる時よりも、おかずと一緒に米飯を食べる方が咀嚼回数が増えて唾液量も増加する。
 
食べ物をよくかみ砕くことで、唾液が増え、その中の酵素が働き、栄養素を消化吸収しやすくなる。
すると血糖値が比較的すみやかに上昇し、食べる量は少なくても脳の満腹中枢を早く刺激して食欲が抑えられる。
 
さらに、塩分の取り過ぎ防止にもつながる。
早く満腹感を味わえて量が減ることに加え、例えば肉や魚に塩気があれば、米飯自体が調味されていなくても、おかずの塩気だけで食べられる。
漬物や昆布、ふりかけで食べると、どうしても米飯を食べ過ぎる人にもお勧めだ。

食べる際には、スプーンやフォークではなく、なるべく箸を使いたい。
箸なら必要以上に量がつかめないため、意識して食べる量を減らすことができる。
 
米飯だけ、おかずだけ食べる「ばっかり食べ」をする人も食べる量が多くなりがちだ。
海藻や豆腐、野菜をたっぷり入れたみそ汁などから口にすると、だしのうま味の満足感で食べ過ぎを抑えやすくなる。

危うい糖質制限
ダイエットのため糖質制限をする人がいる。
ただ、適度にブドウ糖を取らないとエネルギー代謝がうまくいかない可能性がある。
 
糖質が極端に減り、タンパク質や脂質が増えると、ケトン体と呼ばれる物質が体内に増える。
すると糖尿病の人では、体が酸性に傾いて意識障害などを引き起こすケトアシドーシスになる危険性もある。

私的コメント;
もちろん大量にケトン体が出現することは意識混濁などの障害があります。
しかし、少量のケトン体の出現はあながち悪いことばかりとはいえません。
現にダイエット中や空腹時に少量のケトン体が尿の中にみられることはめづらしいことではありません。
最近話題になっている糖尿病治療薬のSGLT2阻害薬の心臓や血管に対する好影響には、この薬によるケトン体出現が関係しているのではないかという論文さえあります。
参考
SGLT2阻害薬のケトアシドーシス
http://blog.livedoor.jp/cardiology_reed/search?q=SGLT2++ケトン
(医療関係者向けのサイトで専門的な内容です)

米飯を中心に一汁三菜を基本とする日本食を科学的に検証しようとする試みもある。
糖尿病患者にも、摂取総カロリーの50~60%は白米など炭水化物から取るよう指導。
肉や魚などタンパク質の調理にうまみの強いだしを使い、みそ汁や発酵食品などと組み合わせてバランスの良い日本食を薦めている。
ただしその際、米飯を先に食べると血糖値がいきなり上がりやすいので食べ方には工夫が必要だ。
 
血糖値が急激に上昇すると、下げようとインスリンが過剰に膵臓から出される。
それで血糖値が下がると空腹感が増強し、食欲が再び出て過食や肥満につながりやすい。
これを防ぐには副菜に野菜料理を用意し、野菜から先にゆっくり食べ、その後主菜と米飯を交互に食べた方が血糖値の上昇がゆるやかになる。

ゆっくり食べるというのも一つのポイント。
食べる速度の速い人はゆっくり食べる人よりも、糖尿病に2倍近くもかかりやすいとの結果が、国民健康・栄養調査で明らかになっている。
 
そもそも、肥満の原因は、食べ過ぎや偏食という食生活の乱れの影響が大きい。
カロリーオーバーに気をつけながら食べる順番を考え、食後の血糖値の急上昇を防ぐようにすれば、過度に炭水化物を控えるダイエットに走る必要はないだろう。
 
口中調味はどの食材を混ぜ合わせるかによって味のバリエーションが広がる。
日本食の特徴をいかしたいものだ。

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正しいかみ方で肥満抑える
咀嚼は、食べ物をかみ砕くだけではなく、全身の機能を活性化する重要な役割を担っている。
唾液を出やすくするほか、脳内血流の増加、食後体温の上昇、脳内のセロトニンの増加につながる。
満腹中枢を刺激してくれるため、食べ過ぎにも効果がみられるという。
 
肥満防止には、かむ食品が硬いか軟らかいかより、かむ人自身の咀嚼リズムが関係する。
正しいかみ方は前側の小さな奥歯でかみ砕き大きな奥歯ですりつぶす。
硬い物を食べて、かむ回数を増やすより、一口の量を減らして正しくかむ方が取り組みやすい。

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参考・引用
日経新聞・朝刊 2017.2.18