足の動脈硬化にステント治療

広がるステント治療 足の動脈硬化に有効

血管内に脂肪がたまる動脈硬化は、脳や心臓だけでなく、足でも起きる。
悪化すれば切断の恐れがある。
足の動脈硬化の治療でも、血管内に金網の筒(ステント)を入れる方法が広がってきた。体への負担は小さいが、症状や部位によっては適切でない場合もあり、注意が必要だ。

狭い部分、15センチ未満で
Aさん(男性、87)は、ある夏にゴルフに行った際、右足のふくらはぎにしびれるような強い痛みを感じた。
近くの整形外科を受診し、湿布を貼ったが、よくならない。
「年齢のせいだろう」と我慢していたら、痛みで右足が上がらなくなり、入浴にも苦労するようになった。

同年の11月、脳梗塞の薬物治療で通院していた総合院で症状を伝えた。
血管外科の医師はCT検査の結果を見て、右太ももの動脈が狭くなっている部分が2力所あることを確認した。
足の動脈硬化である「閉塞性動脈硬化症」と診断した。
長さは計12センチあった。

足の動脈硬化は、70歳以上の男性、喫煙する人、糖尿病の人でリスクが高い。
患者は400万~600万人と推定されるが、多くは飲み薬などで改善できる軽症だ。
 
国際指針に基づくと、画像で血管に狭くなった部分が見つかっても、無症状なら治療は必要ない。
しびれや歩いて痛む程度なら、血行をよくするウオーキングや、血液を固まりにくくする薬で改善をめざす。
安静にしていても痛む場合や、血液が届かなくなって潰瘍ができるなど重症化すると、足を切断するリスクも出てくる。
バイパス手術のほか、血管が狭くなった部分の長さが15センチ未満ならば、ステントを血管内に入れる治療が有効だ。

歩いて痛む段階で適切な治療を始めれば、切断に至るケースは余りない。
 
男性は、脳梗塞の治療で血液を固まりにくくする薬を飲んでいたにもかかわらず、血管が狭くなり、痛み
も増していた。
足腰が丈夫で活動的な生活を送っていたことを踏まえて、主治医はステント治療を男性に勧めた。
局所麻酔で済み、血管が再び詰まる可能性は低いことを説明した。
 
治療は11月下旬に実施。
左足の付け根からカテーテルを入れ、右太ももの動脈まで通した。
血管が狭くなった2ヵ所をバルーンで膨らませ、それぞれにステントを装着した。
約2時間で終わり、入院は3日間だった。
その後、痛みがひいた。
 
再発を防ぐため、禁煙に取り組みゴルフの予定も立てれるまでになった。

不要な人に施す例も
国内では、足の動脈硬化に公的医療保険が使えるステントは3種類ある。
腹部より細い大ももの動脈向けのステントは、2012年7月から適用になった。

狭くなった血管の長さが15センチ未満の患者にステントを装着すると、腹部で95%、太ももで85%は、1
年たっても脂肪がたまって再び血管が狭くなることはない。
 
太ももで血管が狭くなった部分が15センチ以上ある場合や、ひざより下にある場合には、保険が使えるステントは国内にない。
このため、重症患者にはバルーン治療かバイパス手術をする。
現在、ひざ下の動脈向けなど、新たに2種類の治療法の臨床試験(治験)を国際的に進めている。    
 
足の動脈硬化でステントやバルーンを使う「血管内治療」は、国内で年間約3万8千件実施されている。
バイパス手術の10倍ほどとみられる。
 
一方、日本血管外科学会が国内の88施設を対象に昨年実施したアンケートによると、治療が不要な無症状・
の患者に血管内治療をしていたケースが35例あった。
うち5例は治療が原因で足を切断し、死亡も1例あったという。
体への負担が小さいことから治療が不必要な患者にも積極的に勧める医師がいる。
しかし、血管に管を入れるのだからリスクは当然ある。
 
最初に受診した病院がステント治療しか実施していなければ、バイパス手術もしている別の病院でセカン
ドオピニオンを受けてみる方法もある。 


足の動脈硬化の治療のポイントは
① 無症状
 血管が狭くなっていても症状がなければ治療は不要!
 ↓(悪化)
② 動くと痛み・しびれ
 歩いて血行を良くし、抗血小板薬などで様子をみる
 ↓(改善しない・悪化)
③ 安静時の痛みや潰瘍など
基本的な治療
・腹部  ステント治療が第一選択
・太もも 血管の狭まりが
     15センチ未満  ステント治療
     15センチ以上 バイパス手術
・ひざ下  バイパス手術が第一選択

狭くなっている位置や箇所、患者の全身状態に応じて最も良い方法を選ぶ



参考・引用
朝日新聞・朝刊 2014.2.18