植え込み型除細動器

除細動器、皮膚下に置くだけ 新型、心臓傷つけるリスク回避

心臓の拍動が異常になる不整脈の治療法の一つに「植え込み型除細動器」(ICD)がある。
体内に埋め込んだ装置が電気ショックなどを起こして、不整脈による突然死を防ぐ仕組みだ。
国内では1990年代から使われてきたが、昨年2月、体への負担が少なく、取り換えやすい新タイプが発売された。

東京都内の女性(34)は小学校3年生のときに遺伝性の心臓病(先天性QT延長症候群)と診断された。心臓を拍動させる電気信号に異常があり、突然の不整脈や失神をもたらす病気だ。
 
不整脈は、本来は規則正しい拍動が乱れる状態。
拍動が1分間に100回を超えるような「頻拍」や、心室の筋肉がぶるぶると震える「心室細動」などのタイプがある。
 
女性は当初、薬で治療していた。
だが、「子どもだったので薬をのみ忘れる時もありました。何度か失神するような発作を起こした記憶があります」という。
そして20代になって、医師のすすめもあり、突然死の予防のためにICDを手術で埋め込んだ。
 
ICDは、静脈を通じてリード(導線)を心臓内に挿入し、電池などが入った装置本体を鎖骨の下に植える。
リードが不整脈を検知すると、本体から心臓に電気ショックなどを送り、心拍を正常に戻して突然死を防ぐ。
年間5千~6千台が使われ重症の心臓病患者にとって標準的な治療法だ。
 
ただ、課題がある。少なくとも10年に1度、電池交換のために本体を取り換えなければならない。
その際、心臓や血管を傷つけるリスクがある。
血管を通じて細菌などが入り込んで全身に回ったり、血管にリードを入れるため血流障害を招いたりする恐れもある。
 
実際、女性も細菌感染を2回も経験した。
「次に感染を起こしたらと、家族もすごく心配した。ずっと電池交換もし続けなければならないし、不安だった」と振り返る。
 
そこに昨年2月、新しいタイプの皮下植え込み型除細動器(S―ICD)が発売された。
リードを血管や心臓に入れずに、皮膚のすぐ下に置くだけで心臓の状態を把握できる。
手術では、胸部を7、8センチほど切開し装置本体を皮下に置く。
リードも1センチほど切開し皮下にいれるので血管や心臓を傷つけるリスクがなく、感染症などの不具合があっても比較的容易にリードを引き抜いて除去することができる。
 
女性も発売されてすぐ、S―ICDを埋め込む手術を受けた。
そして今、パートをしながら子育て中で、生活する上で大きな問題はないという。
 
ICDに詳しい専門医は「若い患者さんの場合、何回も電池交換が必要になるが、皮下なので血管が温存され、万が一の時にも除去しやすく、大幅に負担も軽くできるのが利点だ」と話す。

「頻拍」には未対応
日本不整脈バイス工業会の調査では、ICDの国内実施は2016年で6367台。
これに対し、製造するボストン・サイエンティフィックジャパンによると、S―ICDはすでに1千台が使われている。
ただ、不整脈のうち少し速いペースの電気信号を送る必要がある「頻拍」にS―ICDは対応していない。
 
ある専門医は「頻拍が頻繁に起きるような患者以外はS―ICDの選択を考慮すべきだろう。心室細動の危険が高い患者に予防的に植え込む場合や、先天性QT延長症候群やブルガダ症候群で適応患者が多いのではないか」と見る。
 
一方、不整脈の中でも脈が遅くなる「徐脈」対策として、心臓の拍動のリズムをコントロールするペースメーカーも進化している。
医療機器メーカーの日本メドトロニックは9月、リードが要らないカプセル型の販売を始めた。
10円玉ほどの大きさで重さもわずか2グラムで、カテーテルで心臓内に送り込む。欧米で先行して使われ、日本でもすでに約200件が実施された。
 
今後、「頻拍」対応のカプセル型のペースメーカーの開発も期待されている。
将来的には、S―ICDと連携させて使うことも視野に、技術開発が進められていく可能性がある。

 
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参考・引用
朝日新聞・朝刊 2017.10.18