運動と食事、健康長寿のかぎ

運動と食事、健康長寿のかぎ

健康で長生きする秘訣。
それは体の筋力を衰えさせないための運動と、体のもとをつくる食事が車の両輪だ。
また、栄養摂取のための口の機能維持も重要となる。
 
筋力を維持 姿勢良く1万歩/家でも鍛えて 
若いころにどれほど運動していても、筋力は「貯金」されず加齢とともに低下する。
統計ではどんな人でも70歳を過ぎると筋力が明らかに落ちていく。
低下をゆるやかにするには、正しい姿勢で一定の距離、時間を歩くことが最も効果的だ。
 
正しい姿勢とは、立ったときに耳、肩、腰、ひざ、土踏まずが一直線に並んでいる状態だ。
お尻にある大殿筋を意識し、下腹部に力を入れて立つのですが、大殿筋がしっかりついていないとできない。
また、太ももの内側にある大内転筋、腹部の腹直筋、背骨まわりにある多裂筋が弱ると、前傾姿勢になってしまう。
 
これらの筋肉は、毎日平均1万歩を歩くことで維持できる。
歩くときは、前足を出しすぎないようにすること、ひざを伸ばすことがポイントだ。
腕を大きく振る必要はない。
ただし、加齢で腰が曲がってくるのは自然のこと。
こうした人は、シルバーカーを押しながらでも、杖をつきながらでも構わない。
胸を無理に張ると、転倒時にけがをしやすくなる。
1万歩が無理でも、1日にトータルで1時間歩くのでもかまわない。
 
正しい姿勢で歩くために必要な筋肉が鍛えられる、簡単なトレーニングがある。
両足にクッションを挟む運動〈1〉は、歩くことに必要な筋肉の多くを鍛えられる。
左右の大腿骨のお尻側の付け根付近にある梨状筋のストレッチ〈3〉も有効だ。
また、ベッドに横になり足を垂らす動作〈2〉は、腸腰筋をリラックスさせる効果がある。
背中にある広背筋を伸ばしたり〈4〉、胸の前で手を合わせたり〈5〉する動きは、背中が丸くなる猫背の改善になる。
いずれも頑張りすぎないで、継続することが大切だ。
    
食べる機能 口・のども鍛え、むせない・つかえない 
食べる機能のことを、医学用語で「摂食嚥下機能」という。
この機能は、高齢になり、口やのどの筋肉が衰えるにつれ低下すると考えられている。
 
機能の低下は、低栄養や誤嚥性肺炎の引き金になる。
誤嚥性肺炎は、食べ物などが誤って気管に入り肺炎を起こすことで、高齢者の主要な死因の一つでだ。
「食事の時によくむせる」「1回で飲み込めない」「薬がつかえる」といった症状の改善・予防のためにも、日頃から口まわりの筋肉を鍛えることがおすすめ。
 
食べ物をのどへ送り込み飲み込むという流れにおいて重要な役割を果たしているのが、のど仏の上にある舌骨上筋と舌だ。
舌骨上筋は飲み込みに関わる筋肉で、鍛えるには、あごが外れないように気をつけながら、思い切り口を大きく開けるのが効果的だ。
声は出しても出さなくてもよく、大切なのは「本気の力」を出すこと。
1カ月ほど続けることで、むせやつかえが楽になる。
 
舌は筋肉の塊のような組織で、食べ物を口の中でまとめて、のどに送り込む働きをしている。
上下左右に精いっぱい動かすだけで、十分なトレーニングになる。
また、口の運動を促す「パ・タ・カ・ラ」の発声を取り入れた早口言葉、ぜひ楽しみながら挑戦してみよう。
   

しっかり栄養 体を保ち病気と闘う/たんぱく質中心に 
「飽食の時代」と言われる今の日本。
しかし一方で、高齢者などの低栄養は増加し、大きな問題になっている。
 
栄養は、体力や免疫力が落ちてくる高齢者にとって、病気や外傷と闘う力になる。
高齢者が栄養をとらずに痩せてしまうと、筋力が低下し、だんだんと体が動かなくなる。
動かなくなると食欲が減り、更に痩せ、体力が落ちていくという悪循環にも陥る。
独り暮らしの高齢者の中には、買い物や料理が億劫になり、コンビニのおにぎりや菓子パンですませてしまう人がいる。
しかし、それでは健康を保つための栄養はとれていない。
また「自分は動いていないから、食事も少なくて良い」と考えてしまいがちだが、人間は動いていなくてもエネルギーを消費している。
栄養は体をつくる材料であり、動かす燃料でもある。
そして、体の細胞は常に入れ替わっているため、栄養はとり続けないといけない。
 
筋力を維持し、いつまでも人生を楽しむためには、食事はたんぱく質を中心に、糖質、脂質などとバランス良くしっかりとること。
たんぱく質は、骨、筋肉、血など、体のもとをつくる重要な栄養素だ。
一度ご自身の今の食事を書き出してみて、たんぱく質がどれくらいとれているかチェックしてみると良い。
そして、もし足りていないようであれば、卵や豆腐、ヨーグルトなど、たんぱく質を含む食品を意識して一品付け加えてみよう。
体は食べた物からでしかできていないのだ。
1回の食事でたくさんの量を食べられない高齢者は、朝昼晩に分け、こまめにとることが大事だ。
もし心配であれば、病院で栄養指導を受けよう。

1日に必要なたんぱく質量(70歳以上) 
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2015年版)」によると、男性60グラム、女性50グラムを推奨量としている。

 
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参考・引用
朝日新聞・朝刊 2017.10.13