大人のせき、実は百日ぜき?

大人のせき、実は百日ぜき? 子に感染の恐れ、長引けば受診を

せきが長い間続く百日ぜき。乳児が感染すると重症になり、呼吸が止まったり、脳症になったりすることがある。
近年は乳児よりも大人の患者が多い状態が続いている。
大人は症状が軽いため、気づかないうちに「感染源」となる恐れがある。専門家は、せきが続く場合は早めの医療機関への受診を呼びかけている。

東京都文京区の男児(5)はせきが続いたため、昨年4月下旬にかかりつけの小児科でせき止めを処方してもらった。
気管支が弱かったため、母親(40)はそのためと考えていた。
 
しかし、その後もせきは治まらなかった。
息が苦しそうで、せきとともに吐いてしまうこともあった。
5月下旬、再びかかった小児科で百日ぜきを疑われ、抗菌薬の処方を受けた。
感染を予防するワクチンは打っていたが、免疫が落ちていたとみられる。

乳児は重症化も
男児の症状は次第に治まったが、6月になると今度は母親と当時生後5カ月だった弟(1)もせきが出始めた。
特に弟は、どんどんせきがひどくなった。
 
百日ぜきは、せきやくしゃみのしぶきを通して百日ぜき菌に感染して発症する。
はじめは軽いかぜのようだが、1~2週間するとせきがひどくなる。
「コンコンコンコン」という連続したせきの後、息を吸うときに「ヒュー」と音が出るのが特徴だ。
6カ月以下の赤ちゃんは重症化しやすく、脳症や肺炎になることがある。
 
弟も発作のようなせきを何度も繰り返した。
特に夜になるとひどくなり、息が苦しそうで顔は真っ赤になっていた。
抗菌薬を処方され、症状は次第に治まったが、一時は入院も検討された。
女性は「普通のせきとは違い、呼吸が止まってしまうのではないかと怖かった」と振り返る。

大人は症状軽め
文京区では昨年、保育園や幼稚園を中心に百日ぜきが集団発生した。
国立感染症研究所(感染研)などが調べると、3~7月に計57人(確定、可能性例を含む)の患者が確認された。
 
さらに内科など別の複数の医療機関を調べたところ、区内では昨年2月ごろから患者が出ており、その多くが大人だったことがわかった。
調査に協力した開業医は「大人から子どもに感染し、保育園や幼稚園で広がったのではないか」と指摘する。
 
感染研によると、近年は全国的に大人の患者が多く報告されている。
患者報告数のうち20歳以上が占める割合は2010年には50%近くにのぼり、15年も約25%と乳幼児の年代と比べても多い状態が続いている。
 
大人の場合、感染してもせきがだらだらと続くものの症状は軽いことが多い。
治療には抗菌薬があり、発症して早い段階でのむことで菌の排出を抑えられる。
 
予防する四種混合ワクチンは乳幼児では定期接種となっており、生後3カ月から打てる。

ワクチンを打つ前の小さな子どもがいる家庭では特に注意が必要だ。
気づかないうちに大人が『感染源』とならないよう、せきが長く続く場合は医療機関を受診する必要がある。

全ての医療機関で報告へ
これまで百日ぜきの患者数の報告は全国3千の小児科の医療機関が対象だった。
内科など小児科以外にかかった患者は報告されておらず、大人の患者は実際には報告数よりももっと多いとみられていた。
 
大人を含めた百日ぜき患者の実態を正確に把握するため、厚生労働省は来年1月から全ての医療機関を対象に患者を報告するように変える予定だ。
 
昨年11月には、これまでよりも速く簡単に百日ぜき菌を検出できる新たな検査法に公的医療保険が使えるようになっており、医療機関での診断がしやすい環境が整いつつある。
 
全数報告になることで、大人を含めた国内の百日ぜきの実態がわかり、より効果的な対策が打てるようになることが期待される。

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参考・引用
朝日新聞・朝刊 2017.11.15