抗がん剤の脱毛

抗がん剤の脱毛、冷やし抑制 毛根に薬届きにくく、半数に効果

抗がん剤による脱毛は、患者にとって最もつらい副作用の一つだ。
治療のときに機械で頭皮を冷やし、脱毛を抑えようという研究が進み、国内でも実用化が近づいてきた。

愛媛県の女性(50)は今年6月の検査で乳がんがわかり、四国がんセンター松山市)で7月から11月上旬にかけて計7回、抗がん剤の点滴治療を受けた。その度に脱毛を抑えるための「頭皮冷却」をした。
 
機械につながった専用キャップをかぶり、抗がん剤を始める30分前から終了の90分後まで、マイナス4~5度の冷却液で頭皮を冷やし続ける。冷やすことで血管を縮め、抗がん剤を毛根の細胞に届きにくくするなどして、脱毛を抑えることをねらう。
 
抗がん剤の使い方にもよるが、4~5時間かかることが多い。
「冷たくてつらいけど、電気毛布を使ったりしてなんとか続けています」と女性は話す。
髪は頭頂部がやや薄くなっているが、横や後ろはふつうの人と区別はつかない。
 
センターは2年半前から、早期の乳がん抗がん剤治療を受ける希望者に、研究としてこの手法を試してもらっている。
1個約12万円のキャップ代などは自己負担だ。
これまでに120人ほどが参加。正確な効果の検証はまだだが、続けた3分の1ほどの人は脱毛がほとんどないか、あっても目立たないという。
 
乳腺外科のO部長は「効果は明らかにあると感じる」と話す。
ただ、参加者の3分の1は、冷たすぎるといった理由で1回でやめてしまった。
 
英国製のこの機械を使った効果について調べた米国の研究結果が今年2月に出た。
使った95人のほぼ半数が50%までの脱毛に抑えられ、ウィッグを必要としない「成功」と評価されたのに対し、使わなかった47人は全員が失敗とされた。
重い副作用はなく、機械は米国で脱毛予防のための機器として承認された。
すでに承認を受けている別の機種は今年7月、乳がん以外のがんでの脱毛予防にも適応が拡大された。
 
英国製の機械は、国内でもすでに「頭痛を抑える」という使用目的で承認されている。
機械を扱う国内の業者は、適応を脱毛予防に広げるための治験をしている。
「毛髪クリニック リーブ21」(大阪市)も機械を開発して治験を実施。近く承認を申請するという。

脱毛、「非常に苦痛」は6割
仙台医療センター乳腺外科のW医長らが全国の乳がん患者約1500人にアンケートしたところ、抗がん剤で99.8%が脱毛を経験し、60%が脱毛を「非常に苦痛」と答えた。
 
頭皮冷却の効果についてWさんは「評価できる」としつつ「現時点で過剰な期待はしないほうがいい」という。
米国の研究では「成功」とされた人を含め、頭皮冷却を受けた人の63%がウィッグなどを使った。
冷却に長時間かかるため、混雑ぎみの外来施設では導入するのは難しい面もある。
四国がんセンターは、研究参加者に1泊入院をしてもらっている。
 
抗がん剤がすべて脱毛を起こすとは限らない。
国立がん研究センター中央病院のN・アピアランス支援センター長は、使う薬が脱毛しやすいかを医師に早めに聞くようすすめる。
 
そのうえで「治療中にどう過ごすかで、対応を考えてほしい」という。
脱毛がつらいかは接する相手との人間関係によって違ってくる。
「おしゃれにする選択もあれば、脱毛をあえて隠さない選択もある。場面によっても選択は変わる」
 
ウィッグを選ぶ一番のポイントは自身の納得感という。
価格は1万円未満から数十万円と大きく幅がある。
かぶり心地がよく、自分で似合うと思えば、安い商品でも問題はないと野澤さんはアドバイスする。
 
がん治療に伴い外見が変わることへのケアの大切さは、新しいがん対策推進基本計画にも盛り込まれた。
同病院は全国の拠点病院のスタッフを対象に、外見へのケアに関する研修会を開いている。
これまでに約340人が修了したという。

 
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参考・引用
朝日新聞・朝刊 2017.11.22