コーヒーと健康

コーヒーって体にいいの?

一部のがん・糖尿病発症抑える 様々な効果、徐々に解明
コーヒーを飲むことは健康に良いのか悪いのか・・・。
様々な成分とその作用の研究が進み、良い影響を及ぼす点が少しずつ明らかになってきた。
効用を当てにして飲みたくはないが、一部のがんや糖尿病に対する予防効果は、ほぼ定まってきたようだ。他の病気との関連についても調査が進んでいる。
 
コーヒーは体に良いという視点からの研究が近年、相次いで報告されるようになった。

1980年代までは「黒く焼け焦げた物質には、発がん性があるのではないか」といった疑いの目が向けられ、コーヒーは体に悪いという視点に立った報告が多かった。
90年代以降、より精度を高めた検証が進み、見方ががらりと変わった。

「秘薬」として摂取
エチオピア原産のコーヒーは、古くはイスラム教の聖職者が「秘薬」として飲用し、400年ほど前から広く飲まれるようになった。
長く飲まれてきたからには、それなりの機能があるはずだ。
それがやっと科学的に明らかにされ始めた。
 
代表はがんの発症を抑制する効果だ。
全てのがんではないが、肝臓がんや大腸がん、頭頸部がんなどでは、毎日コーヒーを飲む人の方がコーヒーを全く飲まない人に比べ、がんになりにくい傾向がはっきりしてきた。
 
国立がん研究センターによる肝臓がんの調査では、毎日1~2杯飲む人の発症リスクは全く飲まない人の2分の1に、毎日5杯以上飲む人は4分の1に低下した。
また愛知県がんセンターの頭頸部がんの調査でも、1日3杯以上飲む人の発症リスクは1杯未満の人に比べ約40%下がった。
 
コーヒーには眠気を抑える作用のあるカフェインや、抗酸化作用のあるポリフェノールの一種「クロロゲン酸」など数百種類の化合物が含まれている。
未知の成分も多い。
カフェインは細胞を保護する役割が最近注目されており、クロロゲン酸とともに正常な細胞のがん化を抑える働きがあると考えられている。
 
クロロゲン酸は血糖値の上昇を抑える効果でも注目を集める。
オランダで平均7年間、約1万7千人の男女を追跡した米ハーバード大学の調査がきっかけだ。
2002年に「1日7杯以上飲む人の糖尿病の発症リスクは、2杯以下の人に比べて半分」という結果を発表。
クロロゲン酸の機能が一躍脚光を浴びた。
対象にしたコーヒーは薄めなので7杯は日本では4杯に相当するという。
 
クロロゲン酸が作用する詳しい仕組みは世界で解明中だ。
糖質を分解する酵素の働きを抑制して血液に含まれるブドウ糖の濃度上昇を抑えているのではないかとみて研究を続けている研究所もある。

飲み過ぎには注意
一方、動脈硬化血栓脳卒中など循環器系の病気との関係はまだ評価が定まっていない。
国立がん研究センターと国立循環器病研究センターなどがこの3月、コーヒーの摂取と脳卒中などとの関連について調査をまとめたが、確証をつかめなかった。
 
海外でもコーヒーを飲む人の脳卒中発症が飲まない人と比べ低いとする調査結果と、関係はないとする結果がある。
喫煙など他の生活習慣や別の病気にかかっている場合などの影響を考慮すると、コーヒーの効果だけを探り当てることはなかなか難しい。
 
逆に飲み過ぎる場合の問題はないのだろうか。
よく指摘されるのが神経興奮作用のあるカフェインの摂取だ。
個人差はあるが、1日0.5~1グラムを超えると心臓や血管の負担を高める恐れがある。
妊婦が大量に飲むと流産の危険が高まるという調査もある。
コーヒーの種類にもよるがカフェインはコーヒー1杯当たり平均0.1グラムあり、5~10杯までが目安となりそうだ。
 
また成分は突き止められていないが、胃酸の分泌を促す効果もある。
胃酸過多の薬を服用している人は、コーヒーを避けた方がよい。
 
コーヒーの香りには鎮静効果もある。
薬になると期待を込めて飲むのではなく,幸せな一杯を楽しみたい。

参考・引用 一部改変
日経新聞・朝刊 2013.7.7



<関連サイト>
コーヒーの健康への影響に関する内外の最新研究動向を知るには
全日本コーヒー協会「コーヒーと健康」
http://ajca.or.jp/webmagazine/health