膵臓がん、病診連携で早期発見

膵臓がん、病診連携で早期発見

膵臓は胃の裏側にあり、画像検査でがんを見つけにくい。
自覚症状も乏しく、症状が進んでから見つかるケースが多く、診断後の生存率は他のがんに比べてかなり低い。
そこで、かかりつけ医と専門医の連携や血液検査で早期発見しようとする取り組みが始まっている。

超音波で早期発見、0期で手術
広島県尾道市の女性(62)は、2014年12月、膵がんと診断された。
 
大阪で暮らす母親の介護に通い始めた数年前から、揚げ物を食べると気持ちが悪くなることが多かった。
介護疲れやストレスだと思ったが、近所のクリニックの超音波検査で「慢性膵炎の疑いがある」と言われた。
膵臓の働きが弱まり消化吸収機能が落ちていた。
 
紹介されたJA尾道総合病院を受診。
超音波の画像診断装置がついた内視鏡検査で膵がんだとわかった。
ただし、膵管内に腫瘍がとどまっており、進行度は最も軽い0期だった。
 
2カ月後に手術。
がんを切るだけで、抗がん剤は必要なかった。
現在も定期的に検査を受け、今のところ再発はない。
「早いときに見つかって本当によかった」と、女性は振り返る。
 
早期発見できたのは理由がある。
尾道地域では、07年にJA尾道総合病院と尾道市医師会が始めた「膵がん早期診断プロジェクト」(尾道プロジェクト)が動いていたからだ。
 
仕組みはこうだ。
 
診療所などのかかりつけ医が、糖尿病や慢性膵炎など膵がんのリスク要因に二つ以上当てはまる人が受診した際に超音波検査を勧める。
検査で膵管が部分的に太くなったり膵液がたまる

袋ができていたりすれば、総合病院での精密検査を勧める。
 
「治療ができる段階の患者を何人も見つけることができた」とJA尾道総合病院消化器内科・診療部長は話す。
 
国立がん研究センターによると、15年にがんと診断された時の進行度を示すステージで、膵がんは最も進行した4期の患者が43.2%を占め、胃や大腸など12種類のがんで最も多かった。
0期の患者は1.1%だった。
08年に診断を受けた患者の5年生存率は、がん全体では65.2%、膵がんでは9.9%だった。
 
一方、尾道プロジェクトでは15年6月までの8年半で、0期は冒頭の女性も含めて21人(4.6%)いた。
国立がん研究センター0期の患者は1.1%)
患者の経過(生存率)も向上。
06年度に7.4%だった3年生存率は09年度27.3%に。
5年生存率は10年度18.5%になった。
 
尾道プロジェクトを参考に、同様の取り組みを始めた地域もある。
山梨県では、6年ほど前から大規模な健診施設で疑いがある人に精密検査を実施。
早期発見につなげている。

ただ、早期発見の態勢(体制)が整う地域は限られる。
尾道の場合、病院と在宅医の連携が密な土壌も幸いした。
膵臓を専門とする医師は少なく、超音波を使った内視鏡検査技術の向上にも時間がかる。
かかりつけ医の受診段階でリスク要因を意識して、精密検査につなげることもポイントだ。

新たな腫瘍マーカー開発
膵がんの早期発見につなげようと、血液を使った腫瘍マーカーの開発も進む。
リスクが高い人にしぼらず、幅広い人の中からがんの恐れがある人をすくいとるのに適している。
 
国立がん研究センター日本対がん協会などは7月から、鹿児島県内で健診を受ける50歳以上の男女の血液を調べる臨床研究を姶めた。
従来とは別の腫瘍マーカーの確立が狙いだ。
 
同センター研究所は、早期の膵がんや、膵がんになるリスクが高い慢性膵炎などの患者で、血液中の「アポA2アイソフォーム」というたんぱく質が下がることを確認。
繊維大手の東レ(本社・東京)と共同で検査キツトを開発した。
臨床研究では、このたんぱく質の値が低い人にCT検査を行い、発症の有無を詳しく調べる。
19年3月までに5千~1万人の登録を目指す。
 
膵がんの腫瘍マーカーでは、「CA19-9」がすでに実際の診療で使われている。
併用すれば互いの弱点を補い合える可能性がある。  

膵がんのリスクが高い人 → 超音波検査
・家族に膵がん患者がいる
・糖尿病や慢性膵炎などがある
・肥満、喫煙、大量の飲酒など

参考・引用一部変更
朝日新聞・朝刊 2017.8.30



<(ドクター用)膵がんの超音波検査による診断>
膵がん早期発見のための超音波検査の有用性─超音波スクリーニングの基礎と技術応用
http://www.innervision.co.jp/ad/suite/hitachi/seminarreport/160902
・主膵管の計測のポイントは主膵管の内腔だけを計測するのではなく,必ず前壁の上から後壁の上まで計測する。
その理由は,パルスの長さが変わっても前後壁の上端同士,あるいは下端同士は平行移動するため,計測距離はまったく影響を受けないからである。
前壁の中央から後壁の中央もしくは前壁の下から後壁の下までの計測でもよいが,前壁の上から後壁の上までが一番計測しやすい。
また,高周波プローブを使用することで,計測の正確性が向上する。

膵臓がんについて知っておいてほしいこと
http://www.do-yukai.com/medical/44.html