心肺蘇生法

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フクロウのウインク (週刊文春2007.12.27)

AED(自動体外式除細動器)は2004年7月よりどなたでも使用できる
ようになりました。
平成17年、半年の開催期間中に2,200万人を集めた愛・地球博で、
会場内に100台のAEDが設置されて4名の心停止例が救命されました。
当時の新聞報道でご覧になった方も多いかと思いますが、横浜の医大生4人が
会場内でこのAEDを使って倒れた人を救命しました。
この4人は救急蘇生の研究会に所属していたとのことでした。
昨今、街でAEDが設置されているのを見かけられた方も多いかと思います。

きょうはこのAEDをテーマとしてとりあげました。


心肺蘇生法

心肺停止患者の救命には、居合わせた人の迅速な蘇生法開始が不可欠。

冬場は心筋梗塞脳卒中などで救急搬送される人が増える。
家族や友人が目の前で突然倒れたとき、とっさに蘇生法を試みる自信が
ありますか。

心臓と呼吸が止まった「心肺停止」の状態は、迅速に蘇生法を行えば
救命の可能性も高い。
心肺停止に陥る主な原因は脳幹部出血や心臓血管系疾患(心筋梗塞
弁膜疾患、心筋炎、大動脈瘤破裂、肺塞栓など)、呼吸器疾患による
窒息など。
外傷や中毒などでも起こるが、多くは心臓由来で、迅速に対処すれば
救命率を上げられる。
心臓に電気ショックを与えるAED(自動体外式除細動器)の普及による
ところ大なのだが、いまだ十分に使われず、効果を発揮しえない状態
にある。

全国の救急隊は一年間に約十万件の心肺停止に対して心肺蘇生法を行
っている。
119番通報をした人をはじめ患者を目撃した人は少なくないはずなのに、
救急隊が到着する前に蘇生法を施されていた患者は2~3割にすぎない。

日本循環器学会では、心肺停止患者の救命率を高
め、かつ心臓停止による後遺症のない状態での社会復帰につなげるには
「救命の連鎖となる四つの輪」が機能しなければならないとして、啓発
に力を注いでいる。

四つの輪とは、
�迅速な119番通報
�迅速な一次救命処置(胸骨圧迫など)
�迅速な除細動(市民または救急救命士や医師による)
医療機関における迅速な二次救命処置(救命センターなどにおける専門的治療)
だ。

呼吸が止まると、すぐに全身の血の巡りは途絶え、血液循環が止まると脳は
たったの3分、心臓は20分で、元の状態には戻らなくなる。
その他の臓器には数時間の余裕があるものの、3~5分以内に蘇生法を開始
しないと、再び心臓が動いても脳死状態になったり、深刻な後遺症が残る危険
も大きくなる。


胸骨圧迫とAEDとで十分
現在、救急車到着までの時間は平均6~7分。
蘇生開始に最善である3分以内に間に合うのは患者のそばに居合わせた人だけだ。
その機転と行動にかかっているわけだが、それではいざというとき、具体的に
何をすればよいのだろう。

一般の人に勧められているのは、
�意識があるかどうか
�呼吸しているかどうか
の確認だ。
どちらもなければ一刻も早く二つの蘇生法を試みよう。
一つは1分間に100回ペースの心臓マサージ(胸骨圧迫)だ。
もう一つはAEDが近くにあれば、これを誰かに運んでもらって施行する。
日本で明らかにされたのだが、マウス・ツー・マウスの人工呼吸はしなくても
十分な効果が得られるという。一般人には抵抗感の強い人工呼吸を省いても
よい分、取り組みやすくなる。
救急蘇生法のガイドラインは改定のたびに少しずつ方法が変わっている。
世界中の蘇生法の経験が集積され、よりよい方法を求めて進化しているためだ。

身近な救急要員としての私たちは、近隣のAEDの設置場所を把握し、胸骨圧迫
のやり方を覚えればよいわけだ。
家族や近所の人と、あるいは職場単位で日赤や消防署の講習会に参加しては
いかがだろう。
定期的に訓練していれば、いざというときに頭で考える前に手が出るだろう。

医師たちは「心肺蘇生の最終目標は単なる救命では
なく、後遺症なしに社会復帰に結びつく助け方にあ
る」という。
患者にとっても理想の治され方だろう。
その実現に必要なのは一人一人の自覚と行動だ。

週刊文春 2007.12.27
版権 文芸春秋社




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