高齢者肺炎

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肺炎  高齢者はご注意  風邪邪こじらせ以外にも・・・・

誤嚥もとで細菌に感染
肺炎は年間の死者が10万人にも達し、日本人の死因の第4位にランクされる恐ろしい病気だ。
一般的には風邪をこじらせると肺炎になると思われているが、細菌を多く含んだ唾液(だえき)
や食べ物が誤って気道に入って起こともある。
特に高齢者はちょっとしたきっかけでかかりやすく、回復にも時間がかかるので注意が必要だ。

肺の組織に炎症が起こる病気が肺炎で、その原因は鼻や口から入ってきた細菌やウイルス健康
な人なら体内に細菌が入っても痰(たん)とともに体外に出るなどして発症を防げるが、「体力
が衰えた高齢者は抵抗力が弱く、病原性がそれほど強くない細菌でも肺炎になってしまう」と
奈良県立医科大学の三笠桂一感染症センター長は話す。


ワクチン効果5年

肺炎で死亡した人の約95%は65歳以上の高齢者。
風邪やインフルエンザをこじらせて肺炎になる例が多い。
典型例は、風邪を引き1週間程度で治ると思っていたのに長引き、セ氏38度程度の発熱や
黄色い痰、せきなどが伴うケース。
放っておくと呼吸不全になるので、早めに医療機関を受診したい。

せきや痰などの症状はないのに、元気がなかったり、食欲低下やいつもと違った言動が見られ
たりするケースも要注意
高齢者ではこうした訴えが肺炎の初期にみられる例も少なくないからだ。
三笠センター長は「家族など周囲が気をつけてほしい」と指摘する。
高齢者の肺炎は入院して抗菌薬などで治療するのが基本だが、重症に陥りやすい。
治療がうまくいっても、体力の回復に一カ月程度かかる場合が多いという。

有効な予防策の一つが、肺炎球菌に対するワクチンの予防接種。
重症化したり、死亡したりするのを減らす効果が確認されている。
ワクチンの効果は約5年。
健康保険は利かず、厚生労働省は安全性が十分に確認できていないとして一生に一度しか接種
を認めていない。
「心配ならかかりつけ医などに相談してほしい」(三笠センター長)。風邪の対策と同様に、
外出先から戻ったら手洗いやうがいを徹底するとともに、栄養を十分とることなどが重要だ。

一方、食道に入るはずの食べ物や唾液が誤って気管に入り、唾液などに含まれた細菌によって
引き起こされるのが誤嚥(ごえん)性肺炎。
食べ物をのみ込む時は気道の入り口が瞬間的に閉じ、食道の入り口が開く。
しかし高齢者ではこの働きが低下し誤嚥が起こる。
特に脳血管障害がある人は誤嚥を起こしやすいことが知られている。
食事中の誤嚥は分かりやすいが、大阪大学歯学研究科の舘村卓准教授は「就寝中など気付かない
間に誤嚥する例も目立つ」と指摘する。


大阪府内に住む70代の中本みどりさん(仮名)も誤嚥性肺炎を経験した。
脳内出血の影響でほとんど自宅ベッドで寝たきりの生活を送ってい
た。
食べ物も上手に食べられないため、胃ろうという小さな穴を胃に作って栄養を摂取していたが、
知らぬ間に細菌を含んだ唾液が入るなどして肺炎に度々かかった。



口を動かし予防
しばらく入退院を繰り返したあと、病状が安定したので、約2年前から舘村准教授が定期的に
訪問し、口腔(こうくう)ケアに取り組んだ。顔や口腔の筋肉をストレッチしたり、特殊なゼリー
を使って食べ物をのみ込んだりする訓練を実施。
食べ物も工夫し、食前食後のブラッシングなどで口の中もきれいに保つようにした。
中本さんは約1年で口から食べられるようになり、肺炎も起こさなくなった。

舘村准教授は「要介護者は少なくとも月1回は、歯科医院などでチェックしてもらい口を清潔に
保ってほしい」と話す。
最近は舌を動かしたり発音練習をしたりする口腔体操も考案されているので、自分にはどんな
体操が合っているか、専門家に聞きながら取り組むのもよいだろう。
ロの筋肉を使わないと、のみ込むための筋肉がさらに衰える悪循環を生んでしまう。
ロを動かし、使うことが肺炎の予防につながる。

一曰の多くをベッドで過ごす人は特に姿勢に注意が必要・食事後すぐに横になると、食べた物が
胃から逆流して気管に入ってしまうケースも少なくない。
寝かせきりだと唾液が気管に入りやすく、細菌の侵入を妨げるせき払いも難しい。
日中や食後はできるだけ長く上体を起こした姿勢を保つのがよい。

ただ、上半身の姿勢を保持するのには工夫がいる。
大きめの枕やバスタオルなどを丸めてひざの下に置き、腰が滑
らないようにするだけでなく、「足底にも段ボールなどでストッパーを作り、ずれないように
するべきだ」(舘村准教授)。
足が踏ん張れないと力が入らず、せき払いもうまくできないからだ。

「高齢になるほど肺炎に対する備えが重要。正しい知識を身につけてほしい」と専門家は
呼びかけている。

日経新聞・朝刊 2008.3.16
版権 日経新聞

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