”違いがわかる”とは

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8月29日、日経新聞夕刊に脳科学者のエッセイが載っていました。
題して ”違いがわかる”とは です。
読まれた方もお見えになりかと思いますが、ちょっと興味のある内容
だったので紹介させていただきます。

脳研究者 池谷裕二先のエッセイです。

”違いがわかる” のこの文中でのエッセンスは以下の2つです。


大脳皮質のその領域が拡大していること(カリフォルニア大学メルゼニヒ博士)

よいものを知っているという意味ではない。
なにがどうよいかを知っているということだ。
よいものを知るには、そうでないものも知る必要がある。
これはひいては、どんなつまらぬことでも無意味な経験はない。
 
二つのネズミの実験が紹介されていました。

実験1
ある音を聞かせるとその音に対する脳領域が広くなり、音の聞き分けが上達する。
音階で言えば半音ほどの微妙な違いを区別することさえできる。
実験2
ある特定の音程のみ、たとえばラに対応する大脳皮質が他の音しか流れていない
部屋でネズミを育てたらどうなるか。
もちろん、ラに対応する大脳皮質が他の音に比べて拡大する。
しかし、ラの音程しか聞いたことのないネズミを、ラと微妙
に異なる音程を区別できなかった。どうやら、ラ以外の音も聞いて育つ必要が
あるようだ。
  
rationalは「理性的・論理的」という品格のある英単語だ。その語源がratioにある
ことを最近知った。
ratioは「比率」という意味だが、ラテン語では「比べて判断する」というニュアンス
だったらしい。
要するに、ものを尖鋭に比較することのできる人にこそ、悟性が宿るということ
なのだろう。

<コメント>
メルゼニヒ博士ってどんな研究者かと思ってググッてみました。
この記事をモチーフにしたブログが数件載っていましたが、本人自体がどんな研究者
かはよくわかりませんでした。
このエッセイ自体は素晴らしいことを述べているわけですが、この書き方だと何だか
二つの実験の結果が矛盾しているみたいにも感じますが。
科学者のエッセイとしてはこの点ちょっと、と思ってしまいましたが、皆さんはどう
思われましたか。
それに、二つまたは三つ以上の事例のうち、どれが本物あるいは重要だったり、
正しかったり、素晴らしかったり、という選択ができるようになるのでしょうか。
なのに、そのこと自体はどうやって養うのでしょうか。
違いが分かるだけでは意味がありません。

さて
テレビ番組でのごちそうを前にしてのタレントのコメント。
口をモグモグさせながら言葉を選んでいます。
美味しいと言うだけでもいいのではないかと思ってしまいます。
味覚は本能です。
好き嫌いも生理的なものです。
物事の分析や解説や能書きは大切です。
一面で、どうでもいいのではとも思ってしまいます。
野球でいえば、かつての求道者の王選手みたいなのもいれば、長嶋選手
みたいな直感野球がいてもいいんですよね。
ここで思い出したことがあります。
広島カープの当時監督の山本氏が利き酒大会で、並みいる専門家を抑えて優勝した
というエピソードがありました。
ちょっと痛快な話だったので覚えています。

「違いがわかる男」   コーヒーのTVのCMでこんなのがあったような。


話が脱線してしまいました。


エッセイを書いた先生の紹介です。

池谷裕二のホームページ
http://gaya.jp/ikegaya.htm
(この池谷裕二先生は英語の発音をカタカナで覚えるといった本を出している
面白い先生です)

「ホッタイモイジルナ(掘ったイモいじるな)」は、What time is it now? のこと
だということはいまや小学生でも知っている。
江戸時代、米国に渡ったジョン万次郎の英会話のひとつだといわれている。
water はワラだ。
同じように、英語のつづりをヘボン式で読んでしまうより、英語の発音を聞いた
まま開き直りのカタカナで読むほうが通じることはあるようだ。
日本人はヘボン式ローマ字をまず習う。
だから「animal」はアニマルと読みたくなる。
しかし実際の英語は「アネモウ」といったほうが通じる。
このギャップを開き直りのカタカナ発音で埋めてしまおうというのが本書だ。
著者は「海馬」の共著者でユニークな脳の研究家である。
研究のために渡米したのはいいが、さっぱり通じない英語にプライドは痛く傷
ついたという。そんな苦労から開き直りのカタカナ英語が生まれた。
Can you take our picture? をキャンニュウテイクアワピクチャー?と言うより、
ケニュテイカワペクチャ?と言ったほうが英語らしい。
僕が学生のころ通った会話学校で唯一覚えているのが シユワラミン? だ。
(これ何だかわかるかなー?笑)
面白い法則をいくつか・・
「Tはラ行の法則」 tomato トメイロ、 forty フォーリ、bottle バロウ
「最後のLはウの法則」global グロウボウ、special スペショウ
言われてみれば確かに。
なんだかタモリ空耳アワーみたいだ。
さらにあとがきにも面白い法則が書かれている。
非線形取得の定理と言語能転移の定理である。
学習を続けているとある日、突然理解できるようになった・・・みたいなのが
非線形取得の定理だ。
実際には突然ではなく徐々に積み重なっていったもが見えるようになっただけ
だと著者はいう。
また言語能転移の定理というのは、簡単に言えば「日本語もダメな人は英語
もダメ」ということだという。
一理ある。
さすが脳の研究をする学者さんだ。

以上、「魔法の発音カタカナ英語」という本の紹介文からでした。
「魔法の発音カタカナ英語 ~池谷裕二http://www.webook.tv/archives/2004/10/post_388.html

<おまけに>
ヘボン先生は横浜で医師として活躍され、フェリス女学院明治学院大学とも
大いなる関係のある方です。
また横浜市立大学医学部構内にはヘボンの名前のついたホール(「ヘボンホール」)
があると聞いたことがあります。
映画俳優のオードリー・ヘップバーンの祖先という話も耳にしたこともあります。
   (ヘップバーンすなわちヘボン
あれ! キャサリン・ヘップバーンだったかな?

<自由時間>
お盆に山に分け入り、プチ登山をして来ました。
ちょっとはまりそうな気配です。
ある日のこと。
診察が終わって居間に戻ると、女房が通販のカタログを見ていました。

女房「登山服とリュックを通販で買おうと思うんだけど、どんな色がいいかなあ?」
私「・・??」
女房「熊がでるといけないからどんな色だと熊は襲ってこないかなあ? 鈴も買わな
くっちゃね。」
私「わたしゃー熊に出遭うより、同じ格好をした夫婦に遭う方が怖い」

         お後がよろしいようで。


医療専門のブログは別にあります。
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