腸内細菌調べ病気予防

理化学研究所は、おなかにいるありふれた腸内細菌のバランスを調べ、健康づくりを指南するサービスを事業化する。
便に含まれる悪玉細菌と善玉細菌の割合や、病気と関係する菌の有無などからおなかの健康状態をチェックする手法を考案。
2011年春のもベンチャー「おなかクリニック研究所」を設立し、食生活の見直しや病気予防の助言に乗り出す。
 
人の身体には大腸を中心に500~1000種類の腸内細菌がいる。
乳酸菌や大腸菌など様々だが、食生活の乱れやストレスでたちまちその種類や数が変動。悪玉菌が増えるとがんや免疫の乱れにもつながるとされる。
大腸がんと関連の深い菌や糖尿病予備軍の人に特徴的な菌の組み合わせも分かってきている。
便の潜血検査などで異変が見つかるよりも前に病気の兆しや健康状態を知るバロメーターとして注目されている。
 
新サービスは、特定の食材の影響を避けるため栄養成分を整えた「試験食」を3日間食べてもらう。
4日目の便を少量特殊な容器に入れて郵送し、腸内細菌を網羅的に調べる。食事代込みで1回の検査料1万5000円前後に設定する予定。原則自己負担となる。
 
腸内環境は、肉食が多いと悪玉菌が増えるなど食生活の乱れや体調が反映される。病気の早期発見や予防
肉食が多いと悪玉菌が増えるなど食生活の乱れや体調が反映される。
病気の早期発見や予防に活用が期待される。

出典 日経新聞・夕刊 2010.8.18
版権 日経新聞

<私的コメント>
最初に読んだ時は、15,000円は高いと思いました。
しかし9食付きということなら安いかも知れません。
「試験食」がどんなものかが問題ですが。



<関連サイト>
「おなかの病気」治療に光、消化器官内の微生物の全容を解明
http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/2705147/5439336
ヒトの消化器官に生息する微生物の遺伝子の全容が3日、100人余りの科学者らによる研究で解明され、英科学誌「ネイチャー(Nature)」に発表された。
潰瘍や炎症性腸疾患(IBD)などの疾患治療に利用できる可能性があるという。

■2年以上かけ微生物1000種のゲノムを調査
研究は中国科学院北京基因組研究所(Beijing Genomics Institute、BGI)の主導で2年以上をかけて行われた。
デンマークとスペインで、健康体、肥満体、炎症性腸患者などさまざまな成人124人を対象に、腸内検査を実施。
最新のDNAの塩基配列決定法を用いて、ヒトゲノムに換算して200人分に相当する遺伝子データを収集、そこから単細胞生物約1000種の遺伝子約330万個を発見した。
これは、研究者らの予想の2倍で、事実上すべての微生物に相当するという。
研究に参加したベルギー・ブリュッセル自由大学(Vrije University)のイェルン・ラース(Jeroen Raes)教授は、「今回の研究は青写真だ。発見された微生物の大半は、これまで知られていないものだった。今後はそれぞれの機能や、疾患にどのように関連するのか調べることができる」と成果について話した。

だが、驚くべきは見つかった微生物の数ではない。

■大半の人は同じ微生物を共有
研究の最大の発見は、食事や住環境の違いにかかわらず、大半の人がその体内の微生物叢(そう)について、かなりの最小公分母を共有していたことだ。
これまでは、特に異なる地域の人の間では微生物叢に共通点はほとんどないとみられていた。

研究では、各人につき少なくとも160種の微生物が生息していることが分かった。
これは遺伝子別に換算して50万個以上に相当し、うち約40%が被験者の約半数に共通していた。
また、体内に生息する微生物の個体数は、人間の細胞の約10倍に上り、数兆個が口内、皮膚、肺、そして特に腸内に集中して生息していた。

■微生物の「最適化」で病気予防や治療も
微生物は健康には欠かせない存在で、消化の悪い食べ物を分解し、免疫システムを活性化させ、ビタミンを生成する。
しかし、最近の研究では、肥満や心疾患、IBDなどの腸内疾患に影響を及ぼすことも指摘されている。

今回の研究について、やはり研究に参加したフランス国立農学研究所のスタニスラブデュスコ・エールリッヒ(Stanislav-Dusko Ehrlich)博士は、「研究者の考え方を完全に変えるものだ」と述べた。

どの主要微生物が健康な腸内に生息するのかが分かれば、潰瘍や炎症性腸疾患、IBDの1種で痛みを伴うクローン病などのより正確な診断や予後診断ができるようになる可能性があるとエールリッヒ博士。
「将来的には、健康のために微生物叢を『最適化』することもできるだろう。食事による病気予防や、個人の遺伝子や微生物の状態に合わせた治療もできるようになるのではないか」と語っている。(




<自遊時間>
日経新聞・夕刊 2010.8.18の「あすへの話題」でファッション・デザイナーのコシノジュンコ女史が「お箸」をとりあげていました。

・成田からローマへのアリタリア航空を利用した際、イタリア料理の機内食にお箸が出て来た。
・中国人は西洋料理を食べる際のフォークやナイフの使い方がまだまだぎこちない。
・イタリア人も、毎日自国の料理しか食べない人が多いため、お箸を使う時はぎこちない。
・フランス人は、植民地だったベトナムの料理に始まり、日本料理など多くの料理を好むので、お箸の使いかたが様になっている。
・世界で箸を使う人々の割合は約3割。宇宙飛行士も無重力の中で、しっかりつかむことができる箸を使うそうだ。
・何よりも箸の素材は竹が良い。軽くて抗菌、消臭作用もある。
・イタリア語の「GIUNCO」は竹の意味があるといい、「ジュンコ」と発音する。

女性の視点からのエッセイで面白く読ませていただきました。





<きょうの一曲> A Lovely Way To Spend An Eveni
A Lovely Way To Spend An Evening - Ann Burton
http://www.youtube.com/watch?v=ImToJBZ6uRE



他に
井蛙内科開業医/診療録(4)
http://wellfrog4.exblog.jp/
(H21.10.16~)
井蛙内科開業医/診療録(3)
http://wellfrog3.exblog.jp/
(H20.12.11~)
井蛙内科開業医/診療録(2)
http://wellfrog2.exblog.jp/
(H20.5.22~)
井蛙内科開業医/診療録 
http://wellfrog.exblog.jp/
(H19.8.3~)
(いずれも内科専門医向けのブログです)
「井蛙」内科メモ帖 
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/
葦の髄から循環器の世界をのぞく
http://blog.m3.com/reed/
(循環器専門医向けのブログです)
「葦の髄」メモ帖
http://yaplog.jp/hurst/
(「葦の髄から循環器の世界をのぞく」のイラスト版です)
があります。