食中毒、秋も油断せず

食中毒、秋も油断せず

夏疲れ・野外活動 リスクに 

魚の寄生虫に注意 / キノコむやみに採らず 

食中毒の件数が多い夏や冬に比べ、秋は予防の意識が薄れがちだ。

夏の暑さで体力が落ちていたり、野外で食事する機会が増えたりして実はリスクが高い。

対策法をしっかり押さえ行楽シーズンを楽しみたい。

 

夏は高温多湿の環境を好む細菌性の食中毒が、冬は低温乾燥の環境で長く生存するウイルス性の食中毒の発生が多くなる。

そのため、夏や冬には食中毒予防に意識が向くものの、秋には油断が生じやすい。

夏の厳しい暑さで体力や免疫力が低下していると、秋に食中毒を起こしやすくなるとも考えられる。

 

厚生労働省の統計によれば、細菌性食中毒の発生件数が最も多い原因菌はカンピロバクター

肉類の中でも特に鶏肉の汚染率が高く、加熱不足から下痢や嘔吐、腹痛や発

熱を引き起こす。

 

O157など腸管出血性大腸菌も増加傾向にあり、2018年は10月にも発生報告があった。

 

秋はキャンプや芋煮会など野外で食事をする機会が多い。

普段とは環境が異なるため、野外では改めて衛生管理を徹底し、調理や良材の管理にも気を付けたい。

 

バーベキューなどでは、カンピロバクター腸管出血性大腸菌による食中毒を防ぐために、肉類にしっかり火を通すことが重要だ。

中心の温度が75度以上で、1分以上の加熱が必須となる。

 

野菜にも注意が必要だ。

ジャガイモやニンジンなど根菜類に付着した土に多く見られるウエルシュ菌は、100度で加熱しても完全には死滅しない。

 

キャンプでは根菜類を使ったカレーも人気だが、ウエルシュ菌は45度前後で増殖しやすくなるため、作ったあとに鍋を常温で放置するのは危険だ。

鍋を水につけるなどしてなるべく早く20度以下に冷ましクーラーボックスなどで保管する。

肉ジャガやシチューでもウエルシュ菌による食中毒が発生することがあるので用心したい。

 

秋以降、ウイルス性食中毒の中で発生件数が多いノロウイルスにも注意が必要だ。

カキなどの二枚貝の加熱不足、ウイルスの付いた調理器具や手指を介して汚染された食品を口にすることが原因で11月ごろから増え始める。

調理前やトイレ後の手洗いを徹底し、食品の十分な加熱や調理器具の洗浄・消毒を心がける。

 

サラダなど生で食べるものは先に調理し、その後に汚染のリスクがある肉

や魚介を調理するなど手順にも工夫が必要だ。

 

そのほか寄生虫アニサキスによる食中毒も発生報告が増えている。

魚介類の内臓に生息し宿主の鮮度が落ちると身の方に移動する。

白い糸がとぐろを巻いているような姿が目視できるが、気づかずに刺し身など生で食べると激しい腹痛を起こすことがある。

 

秋にはサバ、サケ、サンマが出まわるが秋冬のアニサキスの原因食品として報告されている。

予防策として、70度以上で加熱するか、マイナス20度以下で24時間以上冷凍してから解凍して食べるようにする。

 

さらに、秋に気をつけたいのが、キノコによる食中毒だ。

 

発生報告が多いツキヨタケクサウラベニタケは、食用のシイタケやシメジ類によく似ていて、一般の人が見分けるのは難しい。

自生するキノコはむやみに採らず食べないのが賢明だ。

 

参考・引用一部改変

日経新聞・朝刊 2019.10.12