夜中に目覚める「中途覚醒」② 2/2

夜中に目覚める「中途覚醒」② 2/2

*時間しか眠れないのに、8時間寝ようとするから中途覚醒

2つ目の「長寝」は早寝に通じるところもありますが、「眠れないまま長時間ベッド(布団)の上で過ごすこと」を指します。

「横になっているだけでも体は休まる」というのは単なる気休めで、すでに否定されている古い常識です。それどころか、眠れないまま長時間ベッドの中で過ごす経験を重ねると、不眠症が悪化することが分かっています。

長寝で最大の問題となるのが、ベッドにいる時間と実際に眠れる時間との間に大きなギャップを生むことです。

歳をとると必要な睡眠時間は短くなります。若い頃よりもエネルギー消費量が少なくなって基礎代謝が落ちるため、短い睡眠で間に合うようになっていくのです。年代ごとの平均睡眠時間を調べると、25歳で7時間、40歳で6時間半、65歳で6時間、80歳で5時間半…と歳をとるほど着実に減っていきます(下のグラフ参照)。

「毎日8時間以上眠れるのは中学生くらいまで。70代になったら6時間程度しか眠れませんし、眠る必要もないのです」と三島さんは話します。実際に眠れる時間より長くベッドにいれば、眠れない時間は増えるわけです。

 

三島さんによると、「日本人の65歳以上の人は、平均で9時間程度ベッド(寝床)にいる」そうです。一方、65歳の平均睡眠時間は6時間ちょっとで、70歳になると6時間を切ります。あくまで平均ですが、3時間程度は眠れないまま、ベッドで過ごしていることになります。「眠れる時間が短くなっているのに、無理に8時間眠ろうと布団にこもっていれば、不快な中途覚醒早朝覚醒が増えるのも当然」と三島さん。

 

なお、ここに挙げた睡眠時間はあくまで平均値ということにも注意してください。必要な睡眠時間は個人差が大きく、「同じ年代でも3時間くらい違います」(三島さん)。70代なら6時間が普通といっても、中には8時間眠らなければつらいという人もいれば、逆に5時間少々で目が覚める人もいます。必要以上に数字にこだわらないようにしましょう。

 

**問題となるのは「長すぎる昼寝」

誤った習慣、その3つ目は「昼寝」です。午後の短い仮眠は、その後の作業で眠気や疲れを感じにくくなるなど“いい面”もありますが、問題となるのは「長すぎる昼寝」です。

 

30分以上眠ると徐波睡眠(脳を休める最も深いノンレム睡眠)に入りやすく、そうなると夜の徐波睡眠が大幅に減ってメジャースリープ(夜のまとまった睡眠)の質が悪くなってしまうのです。

「1時間の昼寝は夜の3時間分の眠気を取ると言われます。実際、不眠症に悩んでいる人は昼に長く寝ていることが多い」と三島さんは指摘します。昼の仮眠は20~30分以内にとどめるようにしましょう。また、昼寝は遅い時間にするほどメジャースリープへの影響が大きくなります。仮眠を取るなら15時までにしましょう。

 

中途覚醒を減らす「睡眠制限法」

中途覚醒に悩む人が具体的に取り組むべき対策は、ここまで解説してきた「3つの習慣」をやめることになります。

中でもポイントになるのが「早寝」と「長寝」の対策です。具体的な対策として、ベッドにいる時間を実際の平均睡眠時間に合わせて制限するという「睡眠制限法」が有効です。強制的に「早寝」と「長寝」を防ぐことから睡眠制限法と呼びます。

具体的には、「睡眠日誌」をつけるところから始めます。就寝時刻(ベッドに入った時刻)、実際に寝入った時刻、途中で目が覚めた時刻と持続時間、起床時刻(起きた時刻)。以上の数字を起床直後にメモし、あとから実際に眠った時間をグラフにします。昼寝をした場合は、その時間も入れておきましょう。

この睡眠日誌を2週間つけて、中途覚醒を引いた毎日の平均睡眠時間を計算します。ここでは仮に、計算して分かった平均睡眠時間が5時間半だったとしましょう。ベッドにいる時間はプラス30分~1時間(高齢者や持病がある人は1時間)、高齢者であれば1時間を足して6時間半になります。朝6時に起きるのなら23時半に就寝し、ベッドにはきっかり6時間半しかいてはいけません。

「ポイントは、どんなにつらくても決めた就寝時間まで寝ないことです」(三島さん)。そして、眠かったとしても、とにかく就寝から6時間半(上記の例の場合)たったらベッドから出ます。昼寝は夜の睡眠に影響するのでできるだけしないようにしましょう。

 

参考・引用一部改変

日経Gooday 2020.11.30