急な腰痛

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1週間続くと筋肉以外に原因も

1歳の息子を、ひざを曲げずに抱え上げようとしたら、腰に激痛が走った。
「痛っ」。
思わず叫んだ。
高校時代はアイスホッケーに打ち込み、体力には自信があった。
それなのに……。
歩くのもつらく、その曰は寝てばかりいた。
 
同じような経験を持つ人は多いのではないだろうか。
腰痛を抱えたまま、出張先の福岡市でO整形・リハビリ医院(O院長)に
駆け込んだ。
診断は「急性筋・筋腫性腰痛症」。腹筋や背筋など腰を支える筋肉の一部が
切れたり、引き伸ばされたりしたのが原因だ。
筋肉に力を入れずに重いものを持った時に起こりやすい。
レントゲン写真を見たOさんに、「一番多いタイプの腰痛ですね。
運動不足で筋力が落ちているのが原因でしょう。しばらく安静にした後、
腹筋や背筋を鍛える運動をしてください」と指摘された。
    
  ■ ■ ■
 
腰痛に悩む人は多い。
厚生労働省国民生活基礎調査(2004年)によると、何らかの自覚症状を
訴える人のうち、男性では最多だ。
女性でも「肩こり」に次いで2番目に多かった。
 
でも、なぜそんなに腰痛が多いのか。
よく言われるのが「二足歩行を始めた人類の宿命」という点だ。
背骨には計24個の頚椎、胸椎、腰椎が缶詰を重ねたようになっている。
重い頭を支えるため、背骨はS字にカーブしてバランスをとっている。
 
だが、何らかの負荷がかかってバランスが崩れると、警告として腰痛を発する。
なかでも腰椎には体重の60%の重さの負荷がかかっていると言われ、腰痛の
大半が腰椎下部の異常だ。
 
その負荷をカバーするには、腹筋と背筋を鍛えることが重要だ。
ストレッチで柔軟性も高めながら筋力を高めたい。
 
横浜市スポーツ医科学センターのNセンター長が勧める運動は、とてもシンプルだ。
腹筋はひざを曲げて仰向けに寝て、肩を床につけたまま頭を起こす運動を、
10~30回程度。
柔軟運動では、仰向けに寝て、片脚を太ももから伸ばしたまま痛くない程度に上げ、
交互に、10回ほど繰り返す。
2~3ヵ月続ければ効果が出るという。
    
  ■ ■ ■
 
ところで、一言に腰痛と言っても、さまざまな原因がある。
Nさんが気にするのは、痛みが「1週間以上」続くかどうかだ。
1週間以内で消えれば、主に筋肉の異常などが原因とみられる。
安静にした後、運動での予防も可能だ。

1週間以内で消えれば、主に筋肉の異常などが原因とみられる。
安静にした後、運動での予防も可能だ。
だが1週間以上続くと、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、腰椎分離症、座骨神経痛
などの心配がある。
 
Nさんは「内臓の病気で腰痛になる可能性もある。1週間以上痛みが引かないなら、
必ず、近くの専門医を受診してほしい」と呼びかける。
 
ただし、激しいスポーツをしている人なら、痛みが数日で消えても要注意だ。
普通の人なら痛みが続く脊椎分離症になっても、筋力が痛みをカバーしてしまう
可能性がある。
子どもの場合、大人が痛みを見逃さないようにしよう。 

出典 朝日新聞・夕刊 2008.5.12
版権 朝日新聞社

<参考サイト>

日本脊椎脊髄病学会
http://www.jssr.gr.jp/jssr_web/html/sick/index.html
腰痛は、日常生活の中で非常に多い症状です。
小さい子供さんが腰痛を訴えることは非常に稀ですが、いわゆる老若男女、幅広く
みられる訴えと言えるでしょう。
その原因は、多種多様です。最も一般的な原因は、腰椎(腰骨)の一部である椎間板
や椎間関節と呼ばれる組織の老化(退行性変化)によって起こるものです。
これに不良(悪い)姿勢が絡み合って起こる腰痛が最も頻度の高いものといえます。
その他、腰痛の原因になる病気として、腰椎椎間板ヘルニア、脊椎分離症・脊椎すべり症、
腰部脊柱管狭窄症、骨粗鬆症などがあげられます。
また、時には、悪性腫瘍(癌)の転移、化膿性脊椎炎、脊椎カリエス結核)、外傷
(圧迫骨折など)も原因となります。一般的な腰痛の経過は比較的良好で、1~2週間で
痛みは和らぐのが普通です。
しかし、激しい痛みがある場合、痛みが長引く場合、腰痛以外に下肢症状(足の痛み・
しびれ)が出る場合などには、特に注意が必要です。
いずれにせよ、腰痛の治療に際しては、初めに的確な診断をうけることが大事ですので、
脊椎脊髄病専門医の受診をお勧めいたします。



出典 日経新聞・朝刊 2008.5.11
版権 日経新聞社