プール後の洗眼、効果は?

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プールでの目の感染症についてはつい最近、6月19日のこのブログでとりあげました。

プールで注意 目の病気
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy/archive/2008/06/19

きょうは少し重複するところもありますが季節柄ということで再度とりあげました。

粘液が流出、角膜に傷 眼科医ら疑問視「ゴーグル着けて」

プール後の洗眼について、水道水で洗うと目を保護する粘液が洗い流され、
逆に感染症にかかりやすくなる恐れがあるとの研究報告が相次いで発表
された。
小学校などでは洗眼を指導するところも多いが、眼科医の多くは効果を
疑問視している。

慶応大医学部の研究チ-ムは2月、米医学誌に洗眼の影響に関する論文を
発表した。
研究では「蒸留水」と「水道水」とで比較実験した。
20~40代の男女10人全員に250ミリリットルを使って目を洗って
もらった。
目を保護する粘液の量を調べたところ、「水道水」だと量が減り、粘液が
洗い流されていた。

医学的根拠なく

さらに 「生理食塩水」と「塩素消毒剤を溶かした生理食塩水」を使って
比較実験もした。
一定の塩素濃度が保たれたプールで目を開けた際の、塩素による角膜への
影響を調べるためだ。
「塩素消毒剤を溶かした生理食塩水」は角膜の細胞を傷つけることも
分かった。

研究チームの加藤直子慶応大講師は「水道水による洗眼で粘液が洗い流され、
傷ついた角膜に細菌やウイルスが入りやすくなる恐れがある」という。

国立病院機構東京医療センター眼科の山田昌和・視覚研究部長らの研究
でもほぼ同様の結果が出た。

国や自治体はプール熱などの感染症を予防するためにプール後の洗眼を
勧めている。
厚生労働省は遊泳用プールの衛生基準を設け、洗眼のための機器を備える
よう定めている。

しかし、洗眼で感染症を予防できるという医学的な根拠は示されていない。
加藤講師や山田部長は水道水による洗眼の有効性についての学術論文を探
したが「見つからなかった」という。

東京都は条例でプール設置に対し洗眼設備の設置を義務付ける。
「直接的な科学的根拠と言われれば困るが、プール熱やはやり目など目から
感染する感染症は多数あり、(洗眼の)有用性は認められる」(環境衛生課)。

都内のある総合スポーツクラブでは、水泳を習う児童に洗眼を指導してきた。
慶応大の研究成果が報道され、戸惑いが広がった。
担当者は保健所が開いた講習会で「洗眼を勧めても大丈夫なのか」と質問
したが、保健所は「感染症を予防するためにこれまで通り洗眼を勧める
ように」と回答、現在も指導を継続しているという。

目ぬらさぬよう

プール後の洗眼はなぜ始まったのだろうか。
加藤講師によると「衛生状態か悪く感染症が多かった時代に、洗って予防
しようという考えがあったのではないか」。
現在はプールの水質は衛生状態を保つため国の定めた塩素濃度で管理
されている。

加藤講師は「(国の定めた)塩素濃度を保っていれば『細菌は数10秒で
死滅してしまう。
プール後に目を洗う必要はないだろう」と話す。

プールでの感染予防に最も効果的なのは、ゴーグルを着用し極力目を水に
ぬらさないようすうにすることと眼科医の多くの意見が一致する。
山田部長は「洗眼が重大な障害に結びつくわけではないが、対応を考えて
いく必要がある」と語る。

小学校では水中で目を開ける練習をするために、ゴーグルを着用できない
ときもある。
目の充血などが気になる場合は「涙に近い成分の目薬を差して洗い流す
とよい」(加藤講
師)。
ただ、長く充血が続いたり、かゆみがあったりするようだと、眼科で診て
もらうのがよいだろう。

出典 日経新聞・夕刊 2008.6.24
版権 日経新聞

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