絶対でない疫学研究結果
降下薬使いすぎに警鐘コレステロールが低いほど、死亡率が高くなる・・・・。
3月末、こんな疫学研究結果が発表されて注目を集めた。
「コレステロールはからだによくない」という健康常識を覆す内容だったからだ。
「コレステロールが下がりすぎると、感染症やがんにかかるリスクが高まる。遺伝的な
病気で高い人や、過去に心筋梗塞(こうそく)を起こした人などを除けば、無理に薬で
下げる必要はない」。
発表の場で浜崎教授は訴えた。
4月にスタートした「特定健診・保健指導制度(通称メタボ健診)」を前に、コレス
テロールを下げる薬の使いすぎに拍車がかかることを憂えたからだという。
病気で高い人や、過去に心筋梗塞(こうそく)を起こした人などを除けば、無理に薬で
下げる必要はない」。
発表の場で浜崎教授は訴えた。
4月にスタートした「特定健診・保健指導制度(通称メタボ健診)」を前に、コレス
テロールを下げる薬の使いすぎに拍車がかかることを憂えたからだという。
コレステロールの中でも動脈硬化の原因になるのが悪玉コレステロールだ。
浜崎教授と共同研究を進める東海大学の大櫛陽一教授は神奈川県伊勢原市の男女約2万
6千人のデータをもとに、血中の悪玉コレステロール濃度と死亡率を分析した。
約8年の追跡期間中、やはり濃度が低いと死亡率は高くなる傾向がみられたいう
(グラフ2)。
コレステロールが低い人で死亡率が高くなるとの研究報告はほかにもあるが、データの
解釈を巡って見方が大きくわかれる。
浜崎教授と共同研究を進める東海大学の大櫛陽一教授は神奈川県伊勢原市の男女約2万
6千人のデータをもとに、血中の悪玉コレステロール濃度と死亡率を分析した。
約8年の追跡期間中、やはり濃度が低いと死亡率は高くなる傾向がみられたいう
(グラフ2)。
コレステロールが低い人で死亡率が高くなるとの研究報告はほかにもあるが、データの
解釈を巡って見方が大きくわかれる。
「因果逆転」悩み
特定集団の健康情報を分折して病気の原因などを探る疫学研究では、よく「因果の逆転」
と呼ぶ現象が起こり、研究者を悩ませる。
特定集団の健康情報を分折して病気の原因などを探る疫学研究では、よく「因果の逆転」
と呼ぶ現象が起こり、研究者を悩ませる。
例えば外出する高齢者ほど長生きするというデ-夕があっても、外出のおかげで長生き
できたのかどうかは分からない。
あまり外出しないグループには病気のせいで外出したくてもできない人が含まれ、寿命を
引き下げている可能性があるからだ。
同様に、浜崎教授や大櫛教授らのデータだけでは、コレステロールが低いために病気に
かかりやすくなったのか、それとも何らかの病気を抱えていたためにコレステロールが
下がっていたのかは、完全には説明できない。
コレステロールを巡る診断基準は昨年春、大幅に見直された。
総コレステロールは除外されて、悪玉コレステロールで判断するようになった。
基準改定の中心メンバーでもある寺本教授は、 悪玉コレステロールが高くても、すぐに
薬が必要なわけではない。
喫煙や高血圧、糖尿病など別の要素も考慮しながら決めなければならない」と話している。
できたのかどうかは分からない。
あまり外出しないグループには病気のせいで外出したくてもできない人が含まれ、寿命を
引き下げている可能性があるからだ。
同様に、浜崎教授や大櫛教授らのデータだけでは、コレステロールが低いために病気に
かかりやすくなったのか、それとも何らかの病気を抱えていたためにコレステロールが
下がっていたのかは、完全には説明できない。
コレステロールを巡る診断基準は昨年春、大幅に見直された。
総コレステロールは除外されて、悪玉コレステロールで判断するようになった。
基準改定の中心メンバーでもある寺本教授は、 悪玉コレステロールが高くても、すぐに
薬が必要なわけではない。
喫煙や高血圧、糖尿病など別の要素も考慮しながら決めなければならない」と話している。
<関連サイト>
Interview Walter Willett,M.D.
http://www.pbs.org/wgbh/pages/frontline/shows/diet/interviews/willett.html
「健康な食事の影響力は、禁煙や定期的な運動と結びついた場合には、甚大です。
例えば、
我々の研究によれば、健康なライフスタイルの一環として正しい栄養の選択が行われた場合
には、心筋梗塞の82%を予防することが可能であり、脳卒中の70%を予防し、2型糖尿病の
90%以上を予防し、大腸がんの70%以上を予防することができるのです。
これに対して、最良の薬は、心筋梗塞については、それを20%~30%減らすことができる
だけです。
そうであるのに、我々の資源のほとんどは、健康的なライフスタイルや栄養の遂行に向け
られておらず、薬物治療の遂行に向けられているのです。
Interview Walter Willett,M.D.
http://www.pbs.org/wgbh/pages/frontline/shows/diet/interviews/willett.html
「健康な食事の影響力は、禁煙や定期的な運動と結びついた場合には、甚大です。
例えば、
我々の研究によれば、健康なライフスタイルの一環として正しい栄養の選択が行われた場合
には、心筋梗塞の82%を予防することが可能であり、脳卒中の70%を予防し、2型糖尿病の
90%以上を予防し、大腸がんの70%以上を予防することができるのです。
これに対して、最良の薬は、心筋梗塞については、それを20%~30%減らすことができる
だけです。
そうであるのに、我々の資源のほとんどは、健康的なライフスタイルや栄養の遂行に向け
られておらず、薬物治療の遂行に向けられているのです。
東北大学大学院医学系研究科創生応用医学研究センター・片桐秀樹教授、分子代謝病態学分野・
岡芳知教授らのグループは、血中酸化LDLを低下させると、動脈硬化の進行が完全に抑え
られることを発見した。
この研究成果は、米国科学誌Circulation(米国時間7月1日)に掲載予定である。
岡芳知教授らのグループは、血中酸化LDLを低下させると、動脈硬化の進行が完全に抑え
られることを発見した。
この研究成果は、米国科学誌Circulation(米国時間7月1日)に掲載予定である。
過食などの生活習慣にもとづき、心筋梗塞・脳梗塞といった動脈硬化性疾患が増加している。
これらはがんと並ぶ我が国の主要な死因であり、大きな社会問題となっている。その原因の
一つとして、血中コレステロール値の上昇が知られている。
コレステロールの中でも、LDLは「悪玉コレステロール」とも呼ばれ、動脈硬化をひき
おこす原因と考えられている。
本研究は、LDLのうちのごく一部の成分である酸化LDLが、動脈硬化を進行させる主要な
要因であることを解明したものである。
これらはがんと並ぶ我が国の主要な死因であり、大きな社会問題となっている。その原因の
一つとして、血中コレステロール値の上昇が知られている。
コレステロールの中でも、LDLは「悪玉コレステロール」とも呼ばれ、動脈硬化をひき
おこす原因と考えられている。
本研究は、LDLのうちのごく一部の成分である酸化LDLが、動脈硬化を進行させる主要な
要因であることを解明したものである。
本研究で我々は、高脂血症モデルマウスに遺伝子導入することにより、血中の総コレステロ
ールやLDLの値をほとんど減らさず、酸化LDLのみを取り除くことに成功した。
その結果、動脈硬化の進行は完全に予防され、酸化LDLこそが、真の意味での「悪玉コレス
テロール」であることを証明した。
さらに、このマウスを詳しく解析することで、LDLが酸化されて生じる酸化LDLが、全身
に酸化ストレスをもたらして動脈硬化をひきおこすという新たなメカニズムを解明した。
ールやLDLの値をほとんど減らさず、酸化LDLのみを取り除くことに成功した。
その結果、動脈硬化の進行は完全に予防され、酸化LDLこそが、真の意味での「悪玉コレス
テロール」であることを証明した。
さらに、このマウスを詳しく解析することで、LDLが酸化されて生じる酸化LDLが、全身
に酸化ストレスをもたらして動脈硬化をひきおこすという新たなメカニズムを解明した。
心筋梗塞・脳梗塞などの発作の発症は、動脈硬化病変が破裂して血管が詰まることが引き金
となるが、本研究により、酸化LDLは動脈硬化病変を破裂しやすくする働きがあることも明
らかとなった。
現在は、LDL全体を下げる薬剤が、世界の薬剤の中でも最大の売り上げとなっているが、
LDLの下げ過ぎへの懸念もある。
本研究の発展は、「真の悪玉コレステロール」のみを減少させることにより、動脈硬化の進行
を止め、さらに、発作の発症をも予防する治療法の開発につながるものと期待される。
(2008/07/02 日経プレスリリース)
となるが、本研究により、酸化LDLは動脈硬化病変を破裂しやすくする働きがあることも明
らかとなった。
現在は、LDL全体を下げる薬剤が、世界の薬剤の中でも最大の売り上げとなっているが、
LDLの下げ過ぎへの懸念もある。
本研究の発展は、「真の悪玉コレステロール」のみを減少させることにより、動脈硬化の進行
を止め、さらに、発作の発症をも予防する治療法の開発につながるものと期待される。
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(~H20.5.21)
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