夏の食事

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暑い季節には食欲が減退しがちだが、これを 「食 」で乗り切り体調を維持しようといろんな
料理が工夫されている。
ポイントのひとつは暑い夏にこそ、温かいものをとるように心がけることだ。
また、飲食に関しては「入れる(食べる)」と並んで「出す(排せつ) も大切。
腸の働きをうまく整えることに通じる。
適切なものを食べ、上手に排せつすることが夏バテを防ぐコツだという。

暑い夏こそ温かい食事

未病医学研究センターの劉影所長は、「一日一食でもい
いから温かいものを食べた方がよい」と指摘する。
暑さでダメージを受ける胃や小腸などの消化器官を、温かい食べ物で守ろうというのである。
 

スープですんなり

夏はついつい冷たいものを口にする。
消化器、特に小腸は体の免疫機能をつかさどるといわれる。
消化器が弱ると体の免疫力の低下を招き、健康を損ないやすい。
病気の一歩手前、中国医学で古くからいわれている「未病」の状態になる。
温かいものをとることによって、これを防ごうというわけだ。
 
とはいえ、体力を消耗する夏には食欲も低下する。
「ロにしやすいように、スープにするのがよいでしょう」と劉所長。
暑さで固形物を口にするのがおっくうな人でも、スープにするとすんなりと口を通ることが
多い。
「夏は生野菜をたくさん食べるのも大変。温野菜にすると同じ量をとってもかさは小さくなる」
と付け加える。
 
建物の内外で寒暖の差が激しいのも近年の傾向。ずっとビルの中で仕事をしていると水分が
たまり、体がむくんでくることがある。
夏に多いこうした状態を避けるには、体から余分な水を排出する利尿作用がある食材を使う
のがよい。
 
劉所長が薦めるのは、スイカの皮。
究極の医食同源といわれるほど漢方では夏に使われる。
「以前は漬物にすることが多かったが、スープにしたりゼリーにしたりすればロにしやすい」
という。
 
「体は恒常性を保つ、すなち様々な機能が適度なバラスの下に働いており、これをホメオスタ
シスという。
高温、高湿の環境ではこれが崩れがち。
体のバランスをとっている自律神経にも影響する」と、特定非営利活動法人NPO法人
医療教育情報センターの橋本信也理事長。

= 胃腸を整え体力維持 = 
東京慈恵会医科大学の内科教授をしていた同理事長は「(夏の蒸し暑さで)自律神経に問題が
生じ胃腸の動きが悪くなった場合には高たんぱく質の食事を」と強調する。
しかも夏は食欲が落ちるので「口当たりがよく、あっさりしたものをとるように心がけよう」
と呼びかける。
橋本理事長が薦めるのは消化のよい白身の魚や、枝豆や豆腐など植物性のたんぱく質
汗をよくかく人は、塩分を少し多めにとるのがよい。
たんぱく質とともに炭水化物もしっかりとる。
ご飯や芋類、うどん、そばなどが最適だ。
 
今から300年ほど前に貝原益軒が著した『養生訓』も食に多くのスペースを割いており、
食べることが養生の基本であると説いている。

「『未病を治すのは食から』というのが古今東西変わらぬ原則。
ポイントは腸内環境を整えること。
そして、当たり前のことだが、その土地の生活にあった食材を選び、食べやすいように調理法
を工夫することが大切 」と劉影所長は指摘する。
 

日本食で快食快便

腸内環境を整える観点からは、口から入れることとともに排せつも大切。
理化学研究所バイオリソースセンターの辨野義己室長は「健腸生活 = 快食快便を」と説く。
畜肉など動物性脂肪が少なく野菜や魚が多い日本食が腸内環境を整えるのによく、特に体力を
消耗する夏にこそお薦めだという。
「これに腸内細菌のバランスを良くするヨーグルトをとればよい。ヨーグルトとサツマイモの
組み合わせが理想的かな と」辨野室長。
 
快食快便は体の解毒にも通じる。
その意味では便秘は大敵だ。
「理想的には1日2回ほどの快便がいい。 そして、便は腸内環境を知らせてくれる」として、
辨野室長は腸の健康状態や若々しさを意味する『腸年齢』のチェックを忘れないよう呼び
かける。
適切な食事ができているかの判断材料になる。
 
夏は体内で作り出すエネルギーよりも使う方が多くなってしまいがち。
そして、夏にたまった疲労は秋、冬の体調にも響いてくる。夏に体力が落ちると、後々まで
影響が残りがちだ。
何カ月も体の不調に悩んだりしないために「夏こそ食べ物などに一番気を配らなければいけない」
と劉影所長は念を押す。

出典 日経新聞・朝刊 2008.8.10
版権 日経新聞

明日からちょっと夏休みです。

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