咳ぜんそく その2(2/2)

昨日の後半です。

出始めたら安静第一

「このときに活性化する炎症細胞が主に好酸球と呼ばれるもの。白血球の一種です」と、
千葉大学大学院医学研究院の巽浩一郎教授。
通常、白血球の約3~5%程度の好酸球だが、このときは10~20%にもなる。
咳はアレルギー性炎症によるものなので、周囲に感染することはない。

ぜんそくも一般のぜんそくも、気道の炎症によるもの。
「咳ぜんそくは気道粘膜に、より強い炎症が起こる。一方、一般のぜんそくでも気道粘膜
の炎症は生じるが、咳ぜんそくよりも気管支の平滑筋(気道を狭くする筋肉)の収縮が強く
起こると推定される」と巽教授。
その結果、一般のぜんそくでは気管支が細くな
ってしまい、ぜん鴫が起こるわけだ。

「1週間」がサイン

治療には気管支拡張薬に加えて、好酸球の活性化を抑える抗アレルギー剤、または吸入
ステロイド薬などを併せて服用する。市販の咳止め薬では治らず、ぜんそくの治療と
基本的に変わらない。
 
ステロイドと聞くと副作用を心配する人も少なくな
いが「吸入ステロイドは、経口のものと違って肺以外には残らない。副作用をほとんど
省いたもので、咳ぜんそくには非常に有効」と佐野院長。
軽度なら2、3週間の服用で症状が治まる。
ただし、重度の人だと1カ月から1カ月半ほどかかるという。
 
巽教授は「強い咳が1週間以上続き、改善する兆しが見られないなら、咳ぜんそく
疑った方がいい」と言う。
「遺伝素因もあるので、既往歴や家族歴にアレルギー疾患があるようなら用心を」
   
自然治癒したようでも、何らかのきっかけで再発することが多い。
それを繰り返すうちに、ぜんそくに進展してしまうことも。
「咳ぜんそくの人の30%が移行する」佐野院長)というから要注意だ。
   
「咳ぜんそくという病名が登場したのは、ここ10~20年くらいのこと」と巽教授
は話す。
アトピーや花粉症などが増えているのと同様、一種の文明病」と位置づける。
ぜんそくが疑われたら早急に医師の診断を仰ぐことだ。
一般の内科では見過ごされることもあるので、アレルギー専門医や呼吸器内科医に診て
もらった方がいいだろう。


ホコリ、たばこの煙を断つ = = 飲酒も控えて

「咳ぜんそくには気管支拡張楽と吸入ステロイド薬を使うのが一般的だが、それだけでは
治まらない人も多い」と千葉大の巽教授。
そんなときにプラスアルファで使うのが漢方薬だと言う。
咳止め用の麦門冬場(ばくもんどうとう)のほか、重いときには麻杏甘石湯(まきょう
かんせきとう)や五虎湯(ごことう)などを使う。
「苦しいときに西洋薬は必須だが、漢方薬を併用するとより速く症状が軽くなる」というのが
巽教授の経験則だ。

では、咳ぜんそくになったら、日常生活では何に気をつけるべきか。
まず、様々なホコリやペットの毛など、アレルギー症状を引き起こすもとは避ける。
気管支に強い刺激を与えるたばこはご法度だ。他人の吐き出す副流煙にも気をつけたい。
気管支に直接影響するわけではないが、飲酒も控えること。

出典 日経新聞・朝刊 2008.11.8
版権 日経新聞


<喘息 関連記事>
ぜんそく薬「テオフィリン」 乳幼児の使用制限へ
不用意投与で深刻な副作用  脳症で死亡例
気管支ぜんそくや気管支炎の治療薬として広く使われている「テオフィリン」で、乳幼児
が重いけいれんや脳症を起こして死亡したり、知的障害や身体のまひが残ったりした症例
の報告が相次ぎ、日本小児アレルギー学会は、5歳以下への使用制限を盛り込んだ小児
気管支ぜんそく治療指針の改訂版を、19日から福井市で開く学会で発表する。
国内で年間40万人以上に処方されている薬だが、単なる風邪や、必要な血中濃度の測定
なしで投薬されているケースも目立つという。

学会 治療指針を改訂
テオフィリンは、治療に有効な血中濃度の値と、けいれんなど副作用の危険が高まる値が
近く、薬の添付文書は、血中濃度を測りながら使うよう求めている。

新潟市民病院の医師らは、服用後に重いけいれんや脳症で運ばれた子どもが1991~02
年の間に54人おり、うち2人が死亡、7人に知的障害やてんかん、まひなどの後遺症が
残った、と03年10月の日本小児科学会誌に報告した。

また大阪市総合医療センターの塩見正司・小児救急科部長によると、98~04年に
同センターに運ばれた服用後の子どものうち、11人に知的障害などが残り、別に1人が
点滴による過剰投与のせいで死亡した。

代表的なメーカーの三菱ウェルファーマの集計でも、シロップ剤を発売した93年以降、
5歳以下でけいれん約160例、重症けいれん約80例、後遺症約20例の副作用報告
がある。

日本小児アレルギー学会の新たな治療指針は、薬の投与を「基本治療」「追加治療」の
二つに区分。
テオフィリンは第一選択にはせず、追加治療で検討する薬とし、「ぜんそく治療に精通した
医師が注意深く使うべきだ」とした。

特に2歳未満には、最後の選択肢として使用を極力制限する。
なかでも座薬は血中濃度が急激に上がる危険性が指摘されているため、「推奨しない」
とした。

同学会は、小児神経、小児救急の学会と合同で厚生労働省の研究班を設け、副作用の発生状況
やメカニズムを調べている。

指針作成委員長の森川昭広・群馬大教授の話「重いけいれんとの因果関係を示す十分な証拠
はないが、体質的にけいれんを起こしやすい乳幼児への投与は、慎重になるべきだと判断した」

テオフィリン
気管支を広げ、炎症を鎮める作用を持つ。米国では91年に重いけいれんの多発が社会問題化
し、米国小児科学会が使用を制限した。
欧州でも小児にはほとんど処方されないが、日本では吸入ステロイド、β(ベータ)2刺激薬
などと並び、日常管理と発作時の両面でよく使われる。
読売新聞  2005.11.18


ぜんそく死亡率に地域格差、最大3.4倍
「吸入ステロイド薬」使用少ない地域高く
気管支ぜんそくの発作による死亡率に、都道府県間で最大3・4倍の医療格差があることが、
同愛記念病院(東京・墨田区)の鈴木直仁・アレルギー・呼吸器科医長の調査で明らかに
なった。

気道の炎症を抑える「吸入ステロイド薬」の使用率が低い地域で、死亡率が高い傾向があった。

国の人口動態統計によると、気管支ぜんそくで年に約3200人が死亡し、その3分の2を
60歳以上の高齢者が占める。
鈴木医長は、2005年の都道府県ごとの統計を基に、高齢化による地域差の影響を除いた
死亡率を計算。
死亡率が最も低いのは静岡(1・34人)で、富山、新潟と続いた。
最も高いのは宮崎(4・54人)で、静岡の約3・4倍。以下、沖縄、徳島の順で、「西高東低」
の傾向を示した。

鈴木医長は、吸入ステロイド薬の都道府県別の使用率も調べた。使用率が高いのは秋田
(死亡率の低さ4位)で、静岡、新潟が続いた。低いのは沖縄、鹿児島(同43位)、福岡(
同31位)の順。
こちらは「東高西低」の傾向を示し、死亡率と使用率が反比例する様相が明らかになった。

吸入ステロイド薬は、ぜんそく死を減らす効果があり、日本アレルギー学会の大人の気管支
ぜんそく治療の指針は、ぜんそくを週1回以上起こす患者に最初に使う薬として推奨している。
しかし、高齢者に吸入の方法を指導するのが難しいことなどの理由で、地域によって普及に
格差がある。
読売新聞  2007.6.19