声帯結節

きょうは、声が出にくくなる「声帯結節」のお話です。
よく耳にする「声帯ポリープ」とは別の病気です。
結節というとわかりにくいので、耳鼻科の先生は患者さんには『ポリープのよう
なもの』と説明されることもあります。

どんな病気か

声帯に生じる炎症性の腫瘤(しゅりゅう)(こぶ)ないしは隆起(りゅうき)で、
通常は両側に発生します。
まれに片側だけに発生することもあります。
大人(成人型)だけでなく、子ども(小児型)にも発生します。
発声時にもっとも声帯の振幅が起こりやすい、声帯のほぼ中央部(声帯膜様部)
に(前から約1/3の所)出来るために声に変化(ハスキーボイス)が起きます。
隆起のために声帯が発声時に完全に閉鎖しない状態になってしまうからです。
正常な状態の方ではきちんと声帯は閉じています。
声が出にくくなっているにも関わらず、声を出さざるを得ない。
声を出しにくいからよけいに声を張り上げようとして声帯に負担をかける。
この悪循環が声帯の酷使を生みます。
声帯に隆起(結節)がなく一見正常のようでも、発声すると声帯膜様部のほぼ
中央に泡が溜まってくることがあり、これを“フォーミング”と呼んでいます。
同部位が振動しにくい状態、つまり硬くなっていることが予想できます
(結節予備軍)。

原因は何か

発声時の声帯粘膜の慢性的な機械的摩擦(まさつ)が原因と考えられており、
声帯にできる一種の“手のひらのマメ”や“ペンだこ”と考えると理解しやすい
と思います。
慢性的な機械的刺激により粘膜上皮が硬くなり、粘膜下に液の貯留や線維化
が起こり腫れてきます。
したがって、音声を日常的に酷使している職業、すなわち歌手(特にアマチュア)、
教師、保母、アナウンサーなどに好発します。
“謡人結節(ようじんけっせつ)”という素敵な名前もあります。
子どもの場合は、よく声を使う活発な低学年の児童に好発します(小児結節)。
やや男子(原因は無理な大声)に多い傾向があります。
声変わりのとき(思春期)に自然に消失することがあります(基本的には
経過観察)。
ただし、生まれつきのものは先天異常、増悪傾向や息苦しさがある場合は
喉頭乳頭腫を考える必要があります。

症状の現れ方

ほとんどの場合、声がれ(嗄声(させい))が主な症状です。
のどの違和感や発声時の違和感などの症状のこともあります。
声を使う頻度により、症状の軽快、増悪がみられる(たとえば、教師であれば
夏休みに声がよくなるなど)こともあります。
日によって声の調子が変わりやすく、「長く喋ると出にくくなる」ことや、
時にのどの痛みを訴えられこともあります。

検査と診断

間接喉頭鏡検査や喉頭ファイバースコープ検査で声帯を観察し、声帯結節を
確認します。

治療の方法

まず、保存的治療を行います。
治療は『声をセーブする』ことが大切です。
消炎薬の投与やステロイドホルモンの吸入を中心にした薬物治療や、誤った
発声法を矯正し、正しい発声法を習得させるために音声治療が行われます。
これらの保存的治療の効果がない時や、早期に治したい場合は、結節の
切除手術を行います。
声がだんだん出てくることもあるのであわてて手術をしないのが原則です。
手術にしても声帯を傷つけるために手術後にまた同じ場所に結節が出来る
可能性もあるようです。

手術は、一般的には入院のうえ、全身麻酔をかけて、喉頭顕微鏡下手術
(ラリンゴマイクロサージェリー)として行われます。
この手術のあとには、声帯の傷の安静のために1週間前後の沈黙期間を
要します。

子どもの場合は、変声期がすぎると自然に治ることが多いので、声がれが
高度でなければ、経過観察だけを行います。子どもで手術を考慮する時は、
声がれが高度で本の朗読や友達との意思疎通(そつう)にも支障がある場合や、
声がれによる劣等感により精神的影響がみられる場合などに限られます。

病気に気づいたらどうする

のどを酷使しないように注意します。
それでも改善しなければ、耳鼻咽喉科を受診します。



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