逆流性食道炎 その2

■治療

まずは生活態度を改めることが基本です。

暴飲暴食、早食い、食後すぐに横になるは三大悪です。
1. 胸焼けを起こしやすい食品を出来るだけ減らす:
天ぷら等の揚げ物や脂肪食、オレンジなどの柑橘類を減らします。
食塩の取りすぎは逆流を起こし易くなります。
その他、カレーライス、ハンバーグ、シューマイ、マグロのトロ、揚げせんべい、
さつまいも、オレンジジュース、コーラ、チョコレート、ココア、甘味和菓子、
ショートケーキ、、ペパーミント等もよくありません。

2. 酒・たばこや刺激物(コーヒー、香辛料、カフェイン)や濃い緑茶、炭酸飲料
(コーラ等) ビールに枝豆は胃酸の分泌が多くなるので控えます。

3. 寝るときに頭部が10-20cm程度高くなるようにクッションやマットを折り曲
げて布団の下に敷く等の工夫をします。
又横向きに寝る場合は、左を下にして寝るとよいようです。(一般的には右を下に
して寝ると逆流しやすくなりますが、これに対して、右を下にして寝る方が逆流し
にくいと言う患者もいます。
また解剖学的にはうつぶせでは逆流が少ないと言われる)
<コメント>
この、右か左かについては昨日触れました。
私には左を下にしたほうが逆流が少ないという理屈が今ひとつわかりません。
うつぶせがよいのは解剖学的によく理解できます。

4. 肥満解消に努めます。

5. 腹圧を上げないようにします。(重いものを持たない、前屈みを避ける、ベルト
を強く締めない、排便時力まない)
前かがみの続く草むしりをよくありません。
骨粗鬆症で背中が円(まる)くなると、それだけで胃液が食道に逆流しやすくなって
しまいます。
骨塩が少ないと指摘されている方は、背中が曲がってしまわないように更年期から
対策が必要です。
ベルトやコルセットなどで締め付けるのも腹圧を上げます。

6. 食べ過ぎない。 つらいですが腹8分目以下を心がけます。

7. ゆっくり食べます。

8. 運動や食物繊維の多い食事を心がけます。

9. 食べた後最低30分はごろんと横にならないようにします。
食後2時間は起きている努力をします。
どうしても横になりたいときは頭を上げた姿勢を取る。

10. 熱い物は避けます。

11. 薬服用時は、水を一緒にたくさん飲むようにします。

12. 牛乳、卵、大根、山芋、キャベツ、豆腐は逆流性食道炎に良いので積極的
にとります。

13. 食後にガムを噛むのは有効です。(唾液が弱アルカリ性なので胃酸を中和して
症状を緩和します)

<薬剤>
胃酸の分泌を強力に抑える目的で、プロトンポンプ阻害薬やH2ブロッカーが
使われます。
症状そのものは通常1-2週間で軽快します。
但し、一時的には治ったようにみえても再発し易いので、薬を長期にわたって
飲むことになります。
プロトンポンプ阻害薬H2ブロッカーよりも胃酸を抑える作用が強く、より有効
です。
しかし薬価が高いという欠点があります。
薬剤名ではタケプロンオメプラール(オメプラゾン)・パリエットの3種が
使われています。

一方、H2ブロッカーにはガスター・ザンタック・タガメット・プロテカジン・
アシノン等があり、こちらのほうが種類はたくさんあります。
その他マルファ等の液体も症状を抑えるのに使われます。

薬を一定期間服用しても効果が薄いときは、漫然と同じ薬を服用せず、鼻から
食道に管を入れて胃酸の分泌が抑えられているかどうかを調べる方法もありますが
一般的ではありません。

その他の留意点
■食道や胃の蠕動運動が何らかの原因で悪い場合は、食物が食道⇒胃⇒小腸に
進まないので、逆流性食道炎が起こりやすくなります。 
この蠕動運動を改善する薬剤もあります。(ガナトンガスモチン
など)
■くすりが無い時は一時的には牛乳や水を飲めば症状が和らぐことがあります。
アルカリ性の胆汁や膵液といった十二指腸の消化液が食道まで逆流する人もあり、
この場合は胃酸分泌抑制剤では症状が改善しません。
カルシウム拮抗薬、テオフィリン、β刺激薬などは下部食道括約筋の緊張をゆるめる
作用があるので、これらの薬剤を服用している場合は他の薬に変える必要があります。
■薬で治らない場合は手術も考慮されます。
腹腔鏡手術や内視鏡による手術もあります。
腹腔鏡手術:
全身麻酔が必要となります。
胸や腹に穴を開けて内視鏡を挿入して行います。(ニッセン法)入院期間は1週間
程度です。

内視鏡手術(ELGP法[経内視鏡的噴門部縫縮術]):
手術時間は1-1.5時間、2泊3日程度の入院が必要です。

逆流性食道炎の人に食道ガン(腺ガン)が増えているとの報告があります。
逆流性食道炎と診断されたら、症状の強弱に関係なく、慢性化させないように
きっちり治療します。

<参考サイト>
逆流性食道炎(胃食道逆流症・GERD)
http://www.ne.jp/asahi/web/oki/health/shokudoen.html

<自遊時間>
昨日の日曜日、医師会の休日診療所の出務でした。
■朝から夕方まで私ともう1人の先生と二人で救急(?)患者さんをみました。
朝行った時点で駐車場は満車。
道路まで患者さんがあふれていました。
ほとんどの方が高熱で来院され、そのほとんだがインフルエンザ。
結局100人ちょっとの方が来院されました。
みんな高熱のため無表情で、さながら地獄絵のような光景でした。

来院された患者さんのうち87人にインフルエンザ迅速検査を鼻に綿棒を入れて
行い、62人が陽性。
いずれもA型でした。
陰性だった方もタイミングが合わなかっただけで、おそらく実際はインフル
エンザと思われます。
家族内感染も多くみられました。
例年のことですが、インフルエンザワクチンを2回打ってもしっかりかかって
います。
多くはA香港型と思われるのですが、検査キットではAソ連型(どうして今もって
ソ連”ということは別として)と区別はつきません。
5歳以上の方にはタミフル(多くはAソ連型に耐性といわれています)ではなく
できるだけリレンザを処方しました。
各地域で流行しているインフルエンザの型をわれわれ医療従事者に、リアルタイム
で情報提供して欲しいものです(たとえば保健所集計→医師会)。
事後の集計はまったく意味を持ちません。
こういったことを、お役人に期待するのは無理でしょうし、考えもつかないこと
でしょうが。

インフルエンザワクチンがまったく効果がなかった例が数多くあることに対して
厚労省はどのよに考えどういったデータを公開しているのでしょうか。
そういったことに何も疑問を抱かず何らアクションを起こさない日本医師会側にも
大いに問題があります。
医師会が患者さんの味方であるということは、こういったことに取り組むことこと
によって国民に思っていただけるはずです。
何だか患者不在の医師会活動のような気がしてなりません。
国民の声が聞こえない現在の与党にも似ています。

■昨日の昼食は恐妻弁当でした。
昼の短い休憩時間に弁当をかけこもうと蓋を開けたとたん、箸がないことに
気づきました。
これにはあせりました。
看護師さんに聞いても予備の箸はないとのこと。
たまたま部屋に箸に使えそうなプラスチックの柄のついた団扇(うちわ)が2つ、
目につきました。
力を入れて団扇を壊している最中に、先ほどの看護師さんが入って来て、「先生
ありました」と箸を持ってきてくれました。
えらいところを見られて顔が赤くなりました。
休日診療所の先生達。
備品を破壊してすいませんでした。
(匿名希望)

読んでいただいて有難うございます。
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