ヒトiPS細胞で脊損損傷治療

人工多能性幹細胞(iPS細胞)の臨床応用を展望するシンポジウム「iPS細胞
が切り拓(ひら)く今後の医学研究」(慶応大研究推進センター、慶応大iPS
細胞研究拠点主催、毎日新聞社共催)が平成21年2月4日、東京都港区の慶応大
で開かれました。
iPS細胞を開発した山中伸弥・京都大教授をはじめ、慶応大からはiPS細胞
研究拠点の代表者である岡野栄之教授、角膜などの再生に取り組む坪田一男教授、
心筋再生が専門の福田恵一教授らが参加。
中内啓光・東京大教授、高橋政代理化学研究所チームリーダーなど他機関からも、
この分野を世界でリードする研究者が集まり、最新の成果が報告されました。
http://mainichi.jp/select/science/news/20090205k0000m040061000c.html
出典 毎日jp 2009.2.4
版権 毎日新聞社


ヒトiPS細胞で脊損損傷治療 慶大、マウスで成功

■人間の万能細胞(iPS細胞)からつくった神経幹細胞を脊髄(せきずい)損傷
で後ろ脚が麻痺(まひ)したマウスに移植し、運動機能を改善することに、慶応大の
岡野栄之教授と戸山芳昭教授のチームが成功した。
対象がマウスとはいえ、人間のiPS細胞で治療効果を確認したのは世界で初めてだ。
慶応大(東京・三田)で4日に開かれたシンポジウムで発表した。

■人間とマウスの神経細胞は分子構造や機能がよく似ていて、互いが結びついて神経
回路を形成する。
岡野教授らは京都大がつくった人間のiPS細胞から、神経細胞やその周辺組織の
もとになる神経幹細胞を作製。
脊髄損傷から9日目のマウス40匹に移植し、治療効果を調べた。
実験には移植による拒絶反応を起こさない特殊なマウスを使った。
すると、実験中にほかの病気などで死んだ11匹を除く29匹すべてが、1カ月半後
には後ろ脚に体重をかけて歩き回るまでに回復した。

■解剖して調べたところ、神経組織が再生している様子が確認できた。
移植した神経幹細胞の一部が神経細胞になったとみられるという。

■さらに神経細胞の細長く伸びた部分(神経線維)を覆って保護する組織も修復されて
おり、このことも神経の機能の回復につながった可能性が高いとしている。

■岡野教授は、移植した神経幹細胞由来の細胞ががんになる危険がないかなど、長期の
安全性確認が今後の課題とし、さらに研究を進める。
http://www.asahi.com/science/update/0204/TKY200902040127.html
出典 asahi.com 2009.2.4
版権 朝日新聞社

読売新聞 2009.2.4 より
臨床応用にはなお課題多く
■ヒトiPS細胞を使った今回の成果は、再生医療の実現に向け大きな前進と言える。
国内だけでも約10万人がいる脊髄損傷患者には朗報だが、臨床応用にはハードルが
少なくない。

■脊髄損傷の患者にiPS細胞から作った神経幹細胞を移植するのに最適なのは、損傷
から9日後。

■それ以前は損傷の拡大を防ぐ免疫反応によって拒絶され、それ以後だと傷口が閉じて
しまうからだ。
現時点で、患者の細胞から神経幹細胞を作るのに数か月間かかる。
いかに効率よく移植するかが課題となる。

■ほかにも移植した細胞のがん化の問題がある。
安全なiPS細胞作りは世界中で進んでいる。こうした課題を克服し、再生医療が身近
になるには、まだ10年以上かかるというのが専門家の一致した見方だ。
過度な期待は控え、長期的な視点で研究の進展を見守っていく必要がある。

<番外編>

東大がiPS細胞から血小板  世界初、将来は献血代替も

■人体のあらゆる組織に成長できる新型万能細胞「iPS細胞」から、血液成分の1つ
で出血を止める作用がある血小板をつくることに、東京大の中内啓光教授(幹細胞生物学)
らのチームが3日までに成功した。

■チームによると、人のiPS細胞から血小板ができたのは世界初。

■手術の際などに使われる血小板は現在、献血で集められているが、数日しか保存できない
のが悩み。
今回の血小板の安全性が確認され、大量供給できるようになれば、将来、献血に替わる手法
となる可能性がある。

■中内教授らは、iPS細胞を開発した山中伸弥京都大教授と同じ手法で、人の皮膚細胞
に3-4個の遺伝子を入れ、iPS細胞を作製。

■培養する際に、人の骨髄細胞や、細胞増殖を促すタンパク質などを加えたところ、血小板
のもとになる「巨核球」と呼ばれる細胞ができ、さらに巨核球から血小板ができるのを確認
した。

■血小板のほか、人の赤血球や白血球をiPS細胞からつくる技術的な見通しも立っている
という
http://www.47news.jp/CN/200902/CN2009020301000947.html
出典 共同通信2009.2.3
版権 共同通信社

<コメント>
中内啓光先生は、お互いに若い頃に接点のあった先生で陰ながらずっと応援していました。
それぞれの研究がいつ実用化されるかということが誰もが関心のあるところです。
是非とも世界に先駆けて実用化していただいて、日本発の明るいニュースを発信していただ
きたいものです。


読んでいただいて有難うございます。
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