ロタウィルス

毎年年明けから流行する病気にインフルエンザがあります。
今も猛威を奮っていますが、その陰に隠れたもう一つの感染症があります。
それはロタウイルス感染症です。
ノロウイルスほどではありませんが、感染力の強い病気です。
免疫のない小児では6ヶ月~2歳くらいまでに必ずと言っていいほどかかります。
乳幼児の冬の急性の下痢症の8割以上を占めるといわれるほどです。

先進国ではロタウイルスによる胃腸炎で死亡することはまれですが、全世界では、発展途上国を中心にロタウイルスによる胃腸炎で毎年、数十万人のこどもが亡くなっていると考えられています。
きょうはこの話題をとりあげてみました。


ロタウイルス感染症の特徴
■乳幼児の冬の急性下痢症の最も主要な原因がロタウイルスによる感染症です。
冬季の前半はノロウイルス、後半はロタウイルスが主に流行します。
■生後6ヶ月から2歳の乳幼児に多くみられ、5歳までにほとんどの小児が経験します。
■(ウィルスの影響で便に色をつける胆汁がうまく分泌されず)米のとぎ汁のような白色の下痢便が特徴で、そのため白痢あるいは仮性小児コレラとも言われていました。
■主な症状は嘔吐と下痢ですが、ノロウイルスよりも発熱を伴う場合が多く、重症度が高いとされています。
■通常1歳を中心に流行がみられますが、保育所、幼稚園、小学校などの小児や、病院、老人ホーム、福祉施設などの成人でも集団発生がみられることがあります。
■中枢神経にも影響し合併症として、痙攣、脳炎髄膜炎、脳症などをおこすこともあります。

● 感染経路
ロタウイルスは感染力が非常に強く、10個以下のウイルスで感染が起こります。
このため、患者の便中のウイルスがなんらかの形でほかの人の口に入って感染します。
■ウイルスは汚染された水や食物を介して、あるいは汚染された物の表面(ドアノブ、手すり等)を触った手などから口に入り感染します。

● 症 状
■嘔吐、下痢、発熱が主な症状です。
咳や鼻水が見られる場合もあります。
■潜伏期間は約2日で、激しい嘔吐(1日5~6回)、激しい水様性の下痢が特徴ですが3~8日程度で治まります。
■発熱は半日~1日で終わる場合が多く、2日を超える例はあまりありません。
■激しい嘔吐や下痢により急激に水分を失いますので、特に乳幼児では脱水症状に気をつける必要があります。
ロタウイルスのように局所感染を起こし潜伏期間が短い感染症では、感染後の免疫が不完全かあるいは免疫が成立しても持続しない(1年以内)ので、たびたび再感染を起こします。
しかし2度目にかかる場合は、重症でないのが通常です。
■年長児や成人では感染しても発症しない(不顕性感染)場合があります。

● 治療方法
■脱水症を防ぐため、市販のイオン飲料等で水分を補給する必要があります。
■少し(50~100cc)ずつ回数を多くしても飲ませます。
一度に多く飲ませると吐いてしまいます。
冷たい飲み物はおなかが刺激されるので、少し温めた方がいいといわれています。
柑橘類の果汁は下痢の原因になることがあります。
■下痢止め薬は、ウィルスが排泄されずにかえって病気の回復を遅らせることがあります。
■下痢と嘔吐が同時に起こった場合は脱水の進行が速いため、医療機関を受診します。
脱水(口から水分をとってもおしっこや汗が出なくなったり、おしっこの量や回数が減ったりします)は進行すると命にかかわります。 

● 予防方法
日頃から、食事前やトイレの後などにおいて、せっけんを使ってしっかりと手を洗うことが大切です。

● 二次感染を防ぐために
■患者の便や嘔吐物には大量のウイルスが含まれているので、その処理には十分注意が必要です。
ロタウイルスは体外の環境下でも安定です。
下痢の症状がなくなった後も、患者の便にはしばらく(2、3日)ウイルスの排出が続くので、症状が治まっても安心はできません。
■汚物を処理する際には使い捨ての手袋を使用し、用便後や調理前の手洗いを徹底します。
タオルが一度病原体に汚染されてしまうと、かえってタオルが感染源となり、タオルでふくことが感染のきっかけとなってしまいます(使い捨ての紙タオルが望ましい)。
■殺菌には熱湯あるいは0.05~0.1%の次亜塩素酸ナトリウムを使用します。
アルコールや逆性石鹸にはあまり殺菌効果はありません。
■調理器具、おもちゃ、衣類、タオル等は熱湯(85℃以上)で1分以上の加熱が有効です。
■市販の塩素系漂白剤(通常は5~10%次亜塩素酸ナトリウム)なら50倍~100倍に薄めて使用します(例えば、原液10ミリリットルを1リットルの水で薄める)。

汚物の処理方法
■患者の便や嘔吐物を処理するときは、使い捨ての手袋とマスクを着用する。
■便や嘔吐物はペーパータオル等で取り除き、ビニール袋に入れる。
■残った便や嘔吐物の上にペーパータオルをかぶせ、その上から50倍~100倍に薄めた市販の塩素系漂白剤を十分浸るように注ぎ、汚染場所を広げないようにペーパータオルでよく拭く。
■ウイルスは乾燥すると空気中に漂い、これが口に入って感染することがあるので、便や嘔吐物を乾燥させない。



国産鶏肉、2割にサルモネラ菌 耐性菌4割超す
http://www.asahi.com/national/update/0202/OSK200902020075_01.html
出典 asahi.com 2009.2.3
版権 朝日新聞社
■国産鶏肉(ひき肉)の約2割から、食中毒を起こすサルモネラ菌が検出された。欧州に比べ、2倍以上の汚染率だった。
また、5種類以上の抗生剤が効かない耐性菌が4割を超えていた。
市販の鶏肉820検体を調べたもので、全国規模で調べた初の調査になる。
サルモネラ菌は加熱すれば死滅するため、専門家は十分な加熱を呼びかけている。
■調査は、天使大学大学院(札幌市)の平井克哉教授(家畜微生物学、岐阜大名誉教授)が07~08年、各地の衛生研究所の協力で実施した。
■鶏肉から見つかったサルモネラ菌の大半が、抗生剤が効かない耐性菌だった。
5種類以上の抗生剤が効かない多剤耐性菌も45%あった。
8種類の薬剤が効かない菌も見つかった。
ごく一部だが、治療の切り札となる新しいキノロン系の抗生剤が効かない菌もあった。
     
サルモネラ菌〉 
■鶏、豚などの消化管にすみ、汚染された卵や肉などから、人に感染する。
食品での汚染、残留の基準はない。
■70度で1分以上加熱すると死ぬ。
感染すると、8~72時間の潜伏期を経て、激しい腹痛や下痢、高熱などを引き起こす。
症状は4~7日ほど続き、まれに死ぬこともある。
■国内では07年、約3600人が発症し、食中毒原因(発生件数)の3位になっている。
<コメント>
鶏肉に食中毒で有名なのはキャンピロバクターです。
サルモネラにも注意が必要ということですね。
いずれにしろ、鳥刺しや生レバーなどの生肉を食べることはとんでもないことです。
当院にも外食で食べて”あたる”方が後をたちません。
保健所の飲食店に対する指導も不十分です。