iPS血小板の臨床承認

iPS血小板の臨床承認 京大1年以内開始へ

厚生労働省再生医療等評価部会は21日、血液の難病患者のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から血液成分の血小板を作り、患者自身に投与する京都大の臨床研究計画を承認した。
iPS細胞から作った細胞を患者に移植する臨床研究や治験が国に認められたのは、目の難病や心臓病、パーキンソン病に続き4例目。
血液成分に応用した臨床研究は世界初となる。今後1年以内の開始を目指す。

京大iPS細胞研究所の研究グループが7月20日に届け出ていた。
計画によると、対象は血小板や白血球などが減少する「再生不良性貧血」を患い、体質による免疫の拒絶反応で他人から輸血を受けられない患者1人。患者の血液から作ったiPS細胞を血小板を生み出す「巨核球」という細胞に変化させ凍結保存。使う際に解凍して血小板を作り、5カ月間で3回に分け輸血する。血小板の量を徐々に増やし、計約1400億個を投与。安全性を確認すると共に有効性も検証する。

iPS細胞で作った組織はがん化のリスクが指摘される。血小板は細胞分裂に必要な核を持たないため増殖せず、増殖する細胞も輸血前に放射線照射で取り除くため、危険性は極めて低いという。
 厚労省などによると、この難病は血小板の減少などで出血しやすくなるほか感染症にかかりやすくなる疾患で、国内患者数は約1万人。このうち今回の臨床研究の対象者のような体質を持つ患者は全国で数人程度という。血液成分を作り出す幹細胞に異常が生じて発症するため、血小板を投与しても根治せず、重症の場合は継続的な輸血が必要になる。

拒絶反応抑制の特性生かす
京都大の研究チームが21日に国の承認を受けた臨床研究計画は、特殊な免疫型のために他人の細胞では治療できない患者が対象で、患者自身から作製することで免疫の拒絶反応を抑えることができるiPS細胞(人工多能性幹細胞)の特性を生かした計画と言える。

iPS細胞は体細胞に遺伝子などを導入することで、体のさまざまな部位の細胞になる能力を持たせたものだ。基本的な遺伝情報は体細胞の持ち主と同じで、持ち主にiPS細胞から作った細胞や組織を移植した場合、拒絶反応は起こらないと考えられている。
 
今回の患者は、免疫抑制剤を使ったとしても他人の血小板を輸血できない。
iPS細胞とほぼ同じ性質を持つES細胞(胚性幹細胞)も、他人の受精卵から作っているため利用できない。ただ、患者自身のiPS細胞を使う場合、コストが大きいという課題がある。
京大によると、今回の研究では約5000万円かかるという。
 
一方、免疫型が特殊ではない患者用として、コストを抑えるため他人由来のiPS細胞を使った血小板製剤の製造計画も進む。
ベンチャー企業が米国で今年度、日本でも来年度中に治験を始める予定だ。
少子高齢化で将来献血による輸血が不足した場合に備え、補充するような血液製剤を提案したい」と研究代表は話す。

参考・引用一部改変
毎日新聞 2018.9.21

*関連サイト
「血小板輸血不応症を合併した再生不良性貧血」患者を対象とするiPS細胞由来血小板の自己輸血に関する臨床研究について
http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/pressrelease/news/180820-170000.html