アルコール性肝障害

4月は何かと飲酒の機会の多い月です。
未成年の飲酒はもちろん法律で禁止されています。
しかし例年必ずといっていいほど、大学へ進学した新入生の、先輩の無理強いに
よる「一気飲み」のための不幸なニュースが話題になります。
アルコールは、飲むと理性が麻痺するため幾つになっても失敗談がつきまといます。
一国を代表する方でも国際的に大恥をかきました。
日本では「酒のせい」とか「酒の上での」といったことで許されてしまう風潮も
ありました。
しかし、アルコールで命を落とすということがあっては悔やみ切れません。

アルコールと命のかかわりとしては、急性アルコール中毒と肝硬変・肝がんが
あります

アルコール性肝障害は一般的に脂肪肝から肝硬変へと進展します。
また、女性は男性より少ない飲酒量と短い期間で障害が進むといわれます。
要するに女性は飲酒に注意が必要ということです。

肝細胞にはアセトアルデヒド脱水素酵素という解毒酵素があります。
下戸の人はアセトアルデヒド脱水素酵素2型が部分的ないしは完全に欠損して
います。
日本人の約半数の人がこのタイプに属するといわれ、こういった人は一気飲みは
危険です。

飲酒は肝臓以外にも脳にも影響を与え、脳の萎縮が起こることもあります。


以下は
アルコール性肝障害 家庭の医学 - Yahoo!ヘルスケア
http://health.yahoo.co.jp/katei/detail/index.html?sc=ST050230&dn=2&t=key
からの引用です。

1)アルコール性脂肪肝
若年者に多く、比較的少ない飲酒量でも発症します。自他覚症状には、それほど
特徴的なものはなく(自覚症状はないことが多く、あっても軽度の倦怠感ぐらい)、
肝機能検査では軽度の異常を示すものが約半数に認められます。
他の病型に比べてもい値を示します。

2)アルコール性肝線維症
臨床症状および肝機能検査では脂肪肝より異常を示す頻度は高いようですが、これ
も、あっても倦怠感ぐらいでしょうか。

3)アルコール性肝炎
大酒家が、大量飲酒を契機に発症する急性肝細胞壊死による急性肝炎に似た病態を
いいます。
症状のほとんどみられない場合も少なくないようですが、腹痛、黄疸(おうだん)、
発熱、脳症(のうしょう)などに加え、重症型では多臓器不全を合併し約40%が死亡
するといわれています。
他の病型との比較では、アルコール性肝炎は比較的若年で、短期間に大量の飲酒を
している例に多く、臨床症状の発現頻度も高く、とくに黄疸の強い場合が多いよう
です。

4)アルコール性肝硬変
他の原因による肝硬変に比較して、全身倦怠感、食欲不振、下痢を認める傾向が多く、
これらは過剰の飲酒に関連していると考えられています。他覚症状としては、くも
状血管拡張と肝腫大(かんしゅだい)を認めることが多い以外は、他の原因による
肝硬変と変わりありません。

<番外編>
その1 適正な飲酒量
国の健康づくりの指針「健康日本21」では、「節度ある適度な飲酒」として、

通常のアルコール代謝能力があれば、1日平均のアルコール量で約20グラムと
している。
日本酒換算で1合、ビールなら中瓶1本、ワインは2杯程度が目安になる。

その2 飲酒量と死亡率
厚生労働省研究班が全国の男性2万人(40歳以上60歳未満)を対象に、10~
12年にわたり、飲酒量と死亡率の関係を調べた。
その結果、日本酒に換算した1日あたりの量で「1合まで」の場合に死亡率が最も
低かった。「2合まで」がそれに次ぎ、
「飲まない」人より死亡率が低かった。 
                      読売新聞 2006.2.11

その3 アルコール性肝疾患の特徴
� 日本酒1日3合(アルコール量60~70g)以上を5年以上継続して飲酒
した場合アルコール性肝障害が発症する
� 日本酒1日5合(アルコール量約120g)以上を10年以上継続すると
肝硬変に進展しやすい
� γーGPTの上昇とGOT優位のトランスアミナーゼ上昇が特徴

その4 コーヒーとアルコール性肝障害
飲酒量が同じの場合は、コーヒーを多く飲む人ほどアルコール性の肝硬変になりに
くいことが、米カリフォルニア州での大規模な疫学調査で確認された。
調査を実施した研究者は、1日1杯のコーヒーで発症の危険性は8割に減るとしな
がらも、予防には「お酒の飲み過ぎを避けるのが先決」と、くぎも刺している。
                      読売新聞 2006.6.13


<関連記事>
アルコール性肝障害
http://homepage3.nifty.com/mickeym/No.301_400/309aruko.html
■アルコールを大量に摂取すると、腸内細菌が出す細胞刺激物質がクッパー細胞の
働きを活発にさせるため、TNF(腫瘍壊死因子)-αが大量に作られ、肝細胞を傷つけ
肝炎や肝硬変になると推定されています。

アルコール性肝障害
http://byouki.makibisi.net/index.html/
■ビールなら大瓶6本ぐらいを毎日欠かさず15年以上飲酒している場合、50
パーセント以上の確率で肝硬変なるというデータがあります。また、肝硬変に
ならなくても、アルコールの多量摂取によって何らかのアルコール性肝障害を起こ
しているとされています。


読んでいただいて有難うございます。
コメントをお待ちしています。
井蛙内科開業医/診療録(3) http://wellfrog3.exblog.jp/
(H20.12.11~)
井蛙内科開業医/診療録(2) http://wellfrog2.exblog.jp/
(~H20.12.10)
井蛙内科開業医/診療録  http://wellfrog.exblog.jp/
(~H20.5.21)
(いずれも内科専門医向けのブログです)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器専門医向けのブログです)