新型インフルエンザ その13

新型インフルエンザ:感染者96人に 大阪・兵庫、休校・閉鎖広がる

兵庫県大阪府新型インフルエンザ感染は17日も拡大し、感染が確認された患者
は92人に達した。
成田空港での検疫で見つかった高校生らと合わせ日本の患者は計96人。
大半は特定の高校の生徒や家族などだが、つながりがはっきりしない患者も出ており、
さらに拡大する様相もみせている。
大阪府感染症指定医療機関が満床にならないよう、軽症者の自宅療養も認めるなど、
国の行動計画第3段階の「まん延期」に相当する対応を決定。
茨木市など3市での大規模商業施設の営業自粛要請も決めたが、橋下徹知事は社会的
影響の大きさから、「通常のインフルエンザ対応にできないか」と対策の緩和を検討
する必要性にも言及した。

両府県の関係者などによると大阪府茨木市関西大倉中・高校、兵庫県立神戸、兵庫
高校など学校関係者が感染者の多数を占め、集団感染の様相。
大阪府八尾市の小学生や関西大学の学生が感染するなど高校生以外にも感染者が拡大
した。
いずれも症状は軽いという。
感染者の居住地は大阪・兵庫の広範囲に及び、学校休校、施設閉鎖など影響が大幅に
広がった。

大阪府は同府八尾市の小学6年生の女児(11)の感染が確認されたことを発表した。
国内の小学生では初めての確認例で、渡航歴はないという。
今月13日からせきなどの症状があり、16日に39度台の熱が出て、休日診療所で
受診した。

兵庫県西宮市は17日、市内の実家にいる男子大学生が、新型インフルエンザ感染が
確定したと発表した。
大学生の感染が確認されたのも初めて。
関西大学の4年生で、症状が出るまで大学のある大阪府吹田市で暮らしていた。

西宮市によると、大学生は今月15日に発熱などを訴えて16日に同市の医療機関
受診。
17日に国立感染症研究所で検査して、感染が確定した。渡航歴はないという。

兵庫県は新たな感染確認を受けて、神戸市内全域と、明石市などの全県立学校を休校、
患者が発生した区域内の大学や市立・私立学校などには休校を要請する。

一方、舛添要一厚生労働相らに休業・休校に伴う損失補償制度の創設や、風評被害
対策などを盛り込んだ緊急要望を提出する。
http://mainichi.jp/select/science/news/20090518ddm001040049000c.html
出典 毎日新聞・東京朝刊 2009.5.18 
版権 毎日新聞社
<コメント>
神戸市医師会は16日に開いた会議で、発熱などで感染の疑いがある患者から相談を受
けた場合、確定患者との濃厚な接触歴などがなくても、直接発熱相談センターに相談し
てもらう方針を確認したということです。
同医師会では、「国内発生早期』に移行して潜在的な感染者が増えたと予想されること
から、感染者が外来に来ることによる院内感染を防ぐため」と説明しています。
一方、厚生労働省は確定患者との濃厚接触や蔓延国への渡航歴がなければ「疑い患
者も通常通り診察を」との従来の見解を示しており、現場の医師の意識との間でずれが
生じています。
刻々と状況が変化している今、「総司令部」の厚労省としては不眠不休で現場の状況を
把握してスピーディーな対応をして欲しいものです。
土日休んでなどいると、国民の健康は守れません。
最前線の状況を司令本部が十分に把握していない。
かつての太平洋戦争と何ら変わらないではありませんか。


新型インフル:急増する受診者への対応 医療機関は苦慮

新型インフルエンザの感染が拡大する大阪や兵庫では、急増する受診者への対応に
医療機関が苦慮している。
保健所の発熱相談センターには電話が殺到し、検査キットなどの不足を訴える医師
も多く「限界に近づきつつある」と悲鳴が上がる。
感染がさらに広がれば、診察する医療施設は発熱外来から全施設に広げられる。
だが、診療した医師が「濃厚接触者」として自宅待機させられたり、感染しても
休業補償する制度はなく、国の対策の不十分さが浮かんでいる。

◇「限界寸前」の発熱相談センター
「1週間分の相談電話が1日でかかってきた。電話が鳴りやまない」。
大阪府発熱相談センターの担当者は疲れた表情を見せた。

各保健所などのセンターには17日午前までの24時間で1039件の相談が
寄せられた。
大阪市のセンターに17日午前9時~午後5時半に381件、神戸市のセンター
には16日588件の相談が殺到し、パンク寸前だ。
回線を増やすなど対応する方針だが、情勢は不透明だ。

神戸市では、発熱相談センターの電話につながらなかった人などが、相談なしに
市内の医療機関の発熱外来に直接来院するケースも相次いでいる。
担当者は「現場は混乱して戦場のようだ。受け入れ能力は限界に近づきつつある」。
電話がつながらなかった人に対応するため玄関前で独自に簡易検査をする民間
病院まで現れた。

17日、新型インフルの感染拡大を受けて開かれた大阪府医師会の臨時代議員会。
代議員の医師たちが「検査キットもタミフルも足りない」と窮状を訴えた。
会場でアンケートしたところ、出席者の25%が検査キットを備えていないと
答え、大半がタミフルなどの備蓄が不十分と答えた。

感染者は日々増加している。
代議員会では「(数日内に)パンデミックになる」と指摘する医師もいた。
感染症指定医療機関は大阪、京都、兵庫の3府県で計168床に過ぎない。
感染が拡大すれば指定医療機関ではない一般医療機関が対処することも考え
られる。

実際、国の行動計画は対策が第3段階の「まん延期」に入ったら、入院を重症者
のみに絞り、軽症者を自宅療養に切り替えるとしている。「間もなく私たちが
新型インフルの治療を)引き受けざるを得なくなる」。
医師たちは、タミフルなどの入手が困難な状況を訴えながら、行政に早急な対策
を求めた。

16日にあった神戸市医師会の会議では新型インフル患者を診察した開業医が、
他の患者に感染を拡大させる可能性があるとして厚生労働省に休業を“指導”され
たことが報告され、開業医から不満が噴出した。
こうしたケースについて厚労省は、医療の萎縮(いしゅく)を招かないよう近く
対応の手引きを示すことにしており「患者と医師の双方が、(効果のある)
不織布マスクを着けていれば濃厚接触者にならないのではないか」と話す。

一方、日本医師会は、発熱外来で働く医師が新型インフルエンザに感染した場合
の休業補償を求めているが、厚労省は「医師確保のため契約でいろいろな対応を
している自治体もあるが、国としての休業補償は難しい」と説明する。

◇「軽症者の隔離、入院は不要」
世界保健機関鳥インフルエンザ薬物治療ガイドライン委員会委員の菅谷憲夫・
けいゆう病院小児科部長の話 
国内感染が確認されたばかりであり、国民感情を考えれば、最初は休校や行事
中止などの措置も仕方ない。
だが、政府は今回の新型インフルエンザの症状が季節性インフルエンザと変
わらない、と説明している。
それならば、従来の季節性インフルエンザと同様の対応をすればよいのでは
ないか。

休校するとしても、対象は発生した学校だけで十分だ。
子どもが保育園や学校へ行けなくなると、親も仕事を休まなければならなく
なる。
その社会的なマイナスの方が大きい。

患者が増えれば、発熱外来から患者があふれるだろう。
今後は、すべての病院・診療所が通常通り診察すればいい。
軽症者を隔離して入院させることも不要だ。
海外渡航歴などの有無を診断基準にすることもナンセンスだ。

大阪府橋下徹知事が国に季節性インフルエンザと同様の対策を求めたことは、
理解できる。
水際対策から国内の医療体制整備に切り替える時期だ。

過度に恐れる病気ではない。だが、発症48時間以内の治療薬の投与や、持病
のある人への適切な治療体制の確保は欠かせない。
 
◇なぜ多い高校生の感染
カナダから帰国した国内最初の患者をはじめ、高校生の感染が目立つ。
国立感染症研究所の岡部信彦・感染症情報センター長は科学的結論は出て
いないとしながらも「高校生は学校という狭い空間で長時間集団生活し、行動
範囲も広い。小中学生らよりは感染の機会が多く、感染のしやすさにつながって
いるのではないか」と話す。

今回、米国でもニューヨークの中・高校の集団感染がきっかけとなり、感染が
広がった。
米医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に今月掲載
された米国内の患者を分析した論文によると、4月15日~5月5日に感染が
確認された642人の6割が18歳以下で、16%が学校での集団感染で発症
していた。

鈴木宏・新潟大教授(国際感染症学)は「年齢が高い人が新型に対し何らかの
免疫を持っている可能性は否定できないが、高校生のクラブ活動などの行動
パターンが関係しているかもしれない。過去にも剣道やバスケットボールなど
の大会を通じて、麻疹(ましん)(はしか)が流行したことがある。スポーツ
は身体が接触する機会が多いし、声を掛け合うなど感染を広げやすい」と指摘
する。

また、ウイルスの感染力は年代によって変わらないとされるが、症状の出方が
異なることはよくある。
たとえば、子どもの麻疹は症状が軽いが、大人になってかかると重症化する。
浦島充佳・東京慈恵会医科大准教授(小児科学)は「(新型インフルは)10
代後半の若者が感染すると発症しやすい特徴を持つ可能性がある。
若者は免疫反応が強く出るため症状が重くなりやすいとも言われている」と
指摘する。
インフルエンザは症状が重いとそれだけウイルスが多く作られ、他者を感染
させやすい。
これらの要素が組み合わさって、高校での感染が広がっている可能性はある。
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20090518k0000m040107000c.html
出典 毎日jp 2009年5月18日 1時51分
版権 毎日新聞社
<コメント>
神戸での新型インフルエンザ患者を診察した開業医が、他の患者に感染を拡大させ
る可能性があるとして同省に(案の定)休業を”指導”されました。
開業医からは、休業を余儀なくされたことに不満が噴出しています。
一つ疑問はリレンザという抗ウイルス剤がありながら、10代には原則使用禁止の
タミフルが例の高校生に投与されたということです。


新型インフル:増え続ける感染者 大阪市は休校など行わず

新型インフルエンザの感染者は17日も大阪と兵庫で増え続けた。
しかし大阪市は神戸市などと異なり、学校休校措置や集客施設への休業要請を
見送った。
背景には、弱毒性とされる新型インフルエンザへの過度な対応の結果「都市機能
がマヒする」との懸念が見え隠れする。
「国は再考を」(平松邦夫大阪市長)。
「国は毒性に関する知見を明確に」(橋下徹大阪府知事)。
地方から悲鳴が上がった。
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20090518k0000m040099000c.html
出典 毎日jp 2009年5月18日 1時24分
版権 毎日新聞社