節約遺伝子 とは

糖尿病の発症原因には食べ過ぎ、運動不足、ストレス過多、肥満のような環境
因子があります。
その他にも、遺伝的な要因が存在します。
家族や親族内にしばしば複数の糖尿病患者を認めることから納得していただけ
ると思います。

最近では糖尿病を引き起こすいくつかの遺伝子異常も明らかにされています。
実は遺伝子と糖尿病の関係について、人類の歴史を踏まえた非常に面白い仮説が
あるのです。
それは節約遺伝子というものです。


節約遺伝子とは

生活習慣病が増加する理由の説明に節約遺伝子説という考え方があります。
私達のの祖先である現世人は15~20万年前、地球上に出現しました。
以来、狩猟・採集の生活をしていたため、いつ食べ物が手に入るかわからないの
で、摂取したエネルギーを効率よく体内に取り込んで貯えることにより、飢餓に
備えて生存に有利な仕組みを体内で働かせていました。
この仕組みをコントロールするのが節約遺伝子です。
現在のような飽食の時代、節約遺伝子が発達していると、過剰栄養によるエネル
ギーが体内に蓄積して肥満や糖尿病が発症する、という考えです。

一方、日本とヨーロッパでは約5千~1万年前から生活環境に差異が生じました。
つまり、日本では農耕社会でした。
したがって炭水化物中心の食生活となり脂肪摂取は極めて少なく、とくに獣肉由来
の脂肪はゼロに近かったのです。
ヨーロッパ等では農耕に加えて牧畜が発達し、1年に約100kgの肉を摂取し、高
脂肪(とくに飽和脂肪酸)摂取の環境にありました。
この食生活の違いが両地域の民族の体型に大きな違いを生じさせたのです。
欧州では骨格が大きく皮下脂肪が多い、一方アジアでは華奢(きゃしゃ)で皮下脂
肪の少ない体型となったのです。
我が国では約50年前に欧米型の食生活が移入され、一挙に脂肪の摂取は3倍(飽和
脂肪酸は20倍)に増加し、日本人に肥満や糖尿病の増加をきたました。
ところが肥満の程度、日本人は白人に比べればはるかに軽度です。

この現象と節約遺伝子のかかわりについては大いに議論されています。
白人やアメリカのピーマインディアンなどには超肥満が多く、これは節約遺伝子が活
発に働いているためと説明されています。
一方、肥満の程度が軽い日本人の節約遺伝子は欧米人と比べどうなのかということで
す。
遺伝子は環境に適応して進化するものなので、節約遺伝子もわが国の有史以来の環境
に影響をうけていると考えられるます。
しかし、日本人の縄文以降の生活環境が欧米と比べて飢餓か、裕福かということがよ
くわかっていません。

日本は飢饉があり貧しかったので節約遺伝子は発達しているとする説と、飢饉はあっ
てもヨーロッパより少なく、稲作などにより一定の食糧が確保できたので裕福であり、
節約遺伝子は発達していないという説があるのです。
このように節約遺伝子については同じ日本人についても考え方が正反対になってしま
います。
日本人の肥満の捉え方によってどんどん肥満しているのか、白人に比べて肥満の進行は
軽度であると捕えるか。
それによって、節約遺伝子の意義付けも異なってきます。

<参考および引用サイト>
関西電力病院 清野 裕 院長
生活習慣病と遺伝子・環境因子のかかわり」
http://oh-kinmui.jp/letter/2006/no72.pdf
(一部改変)


<節約遺伝子 関連サイト>
肥満と節約遺伝子
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jasso/message/pdf/message_1003.pdf

糖尿病抑制技術(2:節約遺伝子理論の活用)…
http://www.randdmanagement.com/c_genome/ge_026.htm

栄養学と遺伝子  食事と体質について探ろう!
http://www.hakodate-jc.ac.jp/syokukenkou/column_0004.html





<自遊時間>

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出典 日経新聞・夕刊 2009.7.24
版権 日経新聞




<きょうの一曲>?b>The Ventures "Walk Don't Run"
The Ventures "Walk Don't Run"
http://www.youtube.com/watch?v=lJ11y7pYl-8&feature=related



<番外編>
懐かしのオールディーズ Oldies But Goodies
http://ody.seesaa.net/category/4879612-1.html