NAFLD

肥満、糖尿病、高血圧… 脂肪肝から肝硬変、肝がんへ 認知度低く見過ごしも

肝臓疾患といえば、お酒の飲み過ぎかウイルスが原因というイメージが強いが、最近は飲まない人でも、肥満や糖尿病などが原因で脂肪肝になったり、重症化して肝硬変や肝がんにつながるケースが増えている。
「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD=ナッフルディー)」と呼ばれる。
正しい知識を持って、肝臓の状態を点検しよう。 (野村由美子)



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肝硬変に進行したNASHの腹腔鏡写真。上部の表面がデコボコしたのが肝硬変。下は過剰に存在する内臓脂肪(岡上武院長提供)



高血圧の持病がある大阪府吹田市内の女性(73)は、お酒を飲む習慣がなく、太ってもいないのに、1年ほど前から肝機能に異常が出るようになった。

超音波で肝臓に腫瘍が見つかり、済生会吹田病院で摘出手術を受けた。
その肝臓は「典型的なNASH(ナッシュ)からの肝がんでした」と、岡上武院長は説明する。

ウイルス性、アルコール性の肝炎以外の要因でかかる肝疾患の総称がNAFLD。
そのうち、炎症や線維化を起こすまで進行したものが「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」だ。

その大半は肥満、高血圧、糖尿病などの生活習慣病を持っている人。
こうした生活習慣病とNAFLDとの関係は未解明の部分もあり、3年前から厚生労働省の研究班で実態の把握や解明に取り組んでいる。

NAFLDの多くは、単純性脂肪肝と呼ばれるもので、そのまま肝炎や肝がんなどに移行することはないが、心筋梗塞脳卒中などのリスクが高まるため、脂肪を蓄えない生活を心掛ける必要がある。
しかし、脂肪の過酸化や鉄分の蓄積などの要因が加わると、炎症や組織の線維化が起こるNASHになっていく。
現在2割以上がNASHになっていると考えられる。

生活習慣病以外でも薬の副作用、睡眠時無呼吸症候群がNAFLDの原因になることもある。
NAFLDもNASHもなりやすい体質が遺伝する可能性もあり、遺伝子を特定する研究も進んでいる。

「ウイルス性以外の肝がんが、過去10年で倍に増えているが、この間、アルコール消費量は変わらない。NASHからの移行が多いのでは。生活習慣病の増加に伴い、今後確実に増えていくだろう」と岡上院長は分析する。

患者は男女差はあまりないが、女性は閉経を過ぎるとNASHの割合が高くなる。
最近は、子どものNASHの増加も問題視されている。

治療は原因によって異なる。
糖尿病や肥満、高血圧など原因となった疾患を特定し、それを治療することが基本になる。
肝硬変を防止する必要がある場合は、線維化抑制剤を投与する。
患者の病態により治療法が異なるが、治療効果を挙げるにはいずれも早期発見が重要だ。

しかし、まだ内科医の間でもNAFLDの認識は低く、糖尿病や高血圧などの治療で内科に通院していても、それぞれの病気のチェックだけで肝臓は見過ごされることもある。

岡上院長は「まずはこの病気の存在を知ってほしい。肥満や高血圧、糖尿病などの人で、特に思い当たる原因がないのに肝機能検査値が悪くなっていたら、NAFLDやNASHの可能性が高い。たかが脂肪肝と侮らず、専門医にかかってほしい」と話している。
日本肝臓学会のホームページに全国の専門医が掲載されている。

NAFLDの予防策は、多くの生活習慣病の予防と同じく栄養バランスの良い食事、適度な運動が基本。夜遅くに食事をしてすぐに寝るのが最も脂肪を蓄えやすいため、注意が必要だ。

 
NAFLD=nonalcoholic fatty liver diseaseの略。
「非アルコール性」とは、飲酒習慣がないか、1日1合(ビール大瓶1本)以下しか飲まない人を指す。


<私的コメント>
NAFLDとNASHの(概念の)の違いが理解できましたでしょうか。

出典 中日新聞・朝刊 2010.9.21
版権 中日新聞社





<番外編>
= インフルワクチン 猛暑で生産遅れ = 
#ニワトリ夏バテ、原料の卵不足
流行期を前に、インフルエンザワクチンの予防接種が今月から始まった。
しかし今年は、夏の猛暑のためワクチンの生産が遅れている。
原因は、ワクチン製造に使われる鶏卵を産むニワトリが「夏バテ」し、卵の質や量に影響したためだ。

インフルエンザワクチンは、ウイルスを有精卵の中で培養させた後、増殖力をなくしたもので、使用される卵は重さや形などに厳格な規格がある。
しかし、今年は規格に合致した卵の生産量が減少。
国内でワクチンを生産している4メーカーのうち3メーカーが「猛暑で生産に影響が出ている」としている。

あるメーカーの担当者は、養鶏場から届く卵の数が減少したとし、「規格の卵を1日1個産むはずが2日に1個という状況」と話す。このメーカーはワクチン700万本を11月初旬までに出荷する予定だったが、11月下旬までかかる見通しという。

別のメーカーも、生産に2週間程度の遅れが出ているという。
ワクチンの元となるウイルスは毎年国立感染症研究所からメーカーに譲渡されるが、このメーカーの担当者は「今年はウイルスの働きも弱く、ダブルパンチだ」と漏らす。

卵を生産しているAさんは「暑さでニワトリが食欲をなくし、卵のサイズが小さくなって規格から外れてしまった」と説明。
Aさんによると、有精卵の生産はワクチン生産計画に合わせて1年以上前からひよこを育てるなどの準備が必要で、「急には増産できない」という。

厚生労働省血液対策課は「今年はワクチンの生産量を増やしており、実質的に影響はない」としている。ただ、市民に予防接種を呼び掛ける立場の自治体担当者の間には「『ワクチンがまだ届かない』と医療機関から相談があった」などの声もあり、一部で若干混乱が生じたとみられる。

出典 中日新聞・夕刊 2010.10.4
版権 中日新聞社

<私的コメント>
出入りの薬品卸業者からは「今年の孟夏で産んだ卵がたくさん腐ってしまった」と聞いていました。
暑くて産む数が減っていたのですね。




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