新型インフルエンザのスピード検査

新型インフルをスピード検査 早期治療で重症化防ぐ

新型インフルエンザのウイルスがヒトに感染する仕組みを逆手に取り、従来の10万倍以上の感度でウイルスを検出できる手法を、鹿児島大の隅田(すだ)泰生(やすお)教授らの研究グループが開発した。
発症前でも感染を確認でき、早期治療で重症化を防げると期待されている。近く、検査機器の試験運用を兵庫医科大で始める方針。

新型インフルに感染しているかどうかは、まずは簡易検査キットを使い、その後ウイルスの遺伝子を増幅させるPCR検査で確定する。
しかし、ウイルスが患者の体内であまり増えていない感染の初期段階では「陰性」と診断されるという問題がある。

隅田教授らが着目したのは、ウイルスがヒトの細胞の表面にある「糖鎖(とうさ)」にくっつき、感染する仕組み。
人工的に作った糖鎖を小さな金の粒子の表面に取り付け、ウイルスが入った患者の唾液(だえき)と混ぜて遠心分離させたところ、重量がある金粒子とくっついたウイルスを高い濃度で分離、取り出すことができた。
簡易検査で「陰性」になっていたものも見逃さないという。

隅田教授は「早く治療できれば重症化を防げる。治ってから職場復帰するときの検査にも使える」と話す。鼻の奥から検体をとる従来の手法は痛みを伴うが、唾液を使うので患者の負担も減るという。

研究グループは検査機器を兵庫県内のメーカーと共同開発中。
新型と確定するまでに現在は、PCR検査を含め半日かかっているが、新手法では30分ほどに短縮できるといい、年内にも兵庫医大で試験運用を始める。
同大の中嶋一彦助教は「実用化されれば、保健所などに検査を依頼せずに各病院で陽性かどうか判断でき、大幅に利便性が高まる」と期待する。


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http://www.asahi.com/science/update/1212/SEB200912120044.html
出典 asahi.com 2009.12.13
版権 朝日新聞社
<コメント>
従来、新型インフルエンザの診断のためのPCR法は、保健所などを通して公的機関に依頼しなければ出来ませんでした。
この検査法は決して難しい検査法ではなくPCR法のための検査機器がある医療機関なら出来る方法です。
いわば公的機関の寡占状態が続いていたのです。
そのことに対してクレームをつけることなく現在に至っていたのです。
今回のニュースはそういった意味でとても嬉しく感じます。

日常診療していて保健所に対して感じる不信感があります。
それは食中毒に対する対応です。
保健所の時間外にあたる午後5時以降や、土日や休日に食中毒患者が発生した場合に対応してもらえません。
要するに危機管理が出来ていないのです。
和歌山でのカレー事件発生の時や初期の新型インフルエンザ発生の際にも初期の対応が問題となりました。
報道でみる新型インフルエンザの診断も今まですべて入院した重症例か死亡例に関してのみPCR法を行って「いただいて」いたのが実情です。
きっと時間内でしか対応していただけなかっただろうと思っただけでも、保健所に対する医療機関の苦労とくやしさが伝わってきます。

典型的ニュース例
患者は今月○日に38度の発熱があり、簡易検査でインフルエンザA型と分かった。
タミフルを投与されたが、翌○日早朝に症状が悪化し亡くなったという。
その後、遺伝子検査を実施し、新型インフルエンザの感染が判明した。
(結局なくなった後に、むなしく検査)

<番外編 その1>
「感染も症状出ず」2割、採血調査…大阪
大阪府立公衆衛生研究所は11日、新型インフルエンザ流行初期に多数の感染者を出した関西大倉中学・高校(大阪府茨木市)の生徒や家族ら647人を対象に行った血液中の抗体の有無を調べる検査結果を発表した。
ウイルスに感染しながら症状が出ない「不顕性感染」の人が感染者の約2割に当たる18人確認された。

国立感染症研究所の協力で8月下旬、採血と聞き取り調査を実施。
抗体の量から新型に感染したとみられる生徒らは、遺伝子検査で新型の感染が確定した患者を含め102人いた。
症状のわからない4人を除く98人のうち、38度以上の高熱などインフルエンザの症状があったのは44人(45%)で、無症状だったのが高校生17人、教職員1人の計18人(18%)いた。
感染と診断がつかない軽症者は36人(37%)いた。

また、感染確定者を除く626人のうち、新型インフルのワクチン接種を受けた人と同程度かそれ以上の抗体量を持っている人が159人(25%)いた。
明らかに感染して発症した人がいる一方で、新型に感染したとは言い切れないケースもあり、府立公衆衛生研究所の高橋和郎副所長は「過去のインフルエンザの免疫が一部働いていると考えられる」としている。
http://osaka.yomiuri.co.jp/tokusyu/influenza/20091212-OYO8T00722.htm?from=tokusyu
出典 読売新聞 2009.12.12
版権 読売新聞社
<コメント>
日経新聞・朝刊 2009.12.12では次のようなコメントがついています。
高橋和郎副所長は『限られた集団内の調査で普遍化はできないが、新型の不顕性感染を調査で確認したのは世界でも初めてとみられる』と説明。不顕性感染の割合は『季節性インフルエンザとほぼ同水準』と推定している」



私も診療していて寒気が出たり熱が出たりすることがあり、そんな時にはリレンザをすぐに吸います。
しかし高熱にはなりません。
しかもインフルエンザは新型も含めて一度もかかったことがありません。
きっとこんなケースだと思います。



<番外編 その2>
優先順位の厳守通知へ…ワクチン不正接種問題で
兵庫県宝塚市の小児科診療所の院長が、医療従事者向けの新型インフルエンザワクチンを親族に使った不正接種の問題を受け、厚生労働省は9日、各地の医療機関に対し、国が定めた接種の優先順位を厳守するよう、今月中にも都道府県を通じて通知する方針を決めた。
宝塚市での事例に加え、同省は「他の医療機関でも不正接種が複数判明したため」としている。

同省新型インフルエンザ対策推進本部(本部長=長妻昭厚労相)によると、鳥取県では11月、医療従事者向けワクチンが病院職員の親族に使われていたことがわかり、県が病院に口頭で指導。ほかにも不正接種が明らかになった複数の医療機関を、同省や自治体が指導したケースがあるという。

宝塚市での問題について同本部は9日、院長から電話で事情を聞くなど調査を進めており、「事実関係を詳細に確認し、指導の中身を検討する」としている。
出典 読売新聞 2009.12.10
版権 読売新聞社
http://osaka.yomiuri.co.jp/tokusyu/influenza/20091210-OYO8T00251.htm
<コメント>
それほどの大袈裟なことなのか甚だ疑問です。
原則論でいいのでは。

「新型」ワクチン…受験生に優先接種枠 鳥取、高知 福井・奈良なども検討
http://osaka.yomiuri.co.jp/tokusyu/influenza/20091213-OYO8T00263.htm
<コメント>
「国が定めた接種の優先順位を厳守」するようにということですが、各県がすでに遵守していません。

<番外編 その3>
今年の漢字:「新」 京都・清水寺で揮毫
http://mainichi.jp/photo/archive/news/2009/12/11/20091211k0000e040084000c.html
イメージ 2

豪快に「今年の漢字」を書き上げる森清範貫主京都市東山区清水寺で2009年12月11日午後2時すぎ、望月亮一撮影
(ちょっとちょと森清範貫主さん。そこで「はねる」と漢字検定では×ですよ。)

■「新型インフルエンザ:たつのの50代女性が死亡」
http://mainichi.jp/area/hyogo/news/20091213ddlk28040233000c.html
「たったの50代」とはや読みしてしまいました。


<番外編 その4>
オフィス街「路上弁当」規制強化 周辺飲食店が安売りに「待った」
中央区は2010年1月から路上での弁当販売に対し監視指導を強化する。規制対象になるのは、ワゴンや机に弁当を並べて販売している「行商」。東京都の条例で、行商は「人力により移行しながら販売すること」と定めている。立ち止まっていいのは、客に商品や金銭を渡す時だけで、「客待ち」は禁止だ。ほかにも、温かい弁当を扱うことはできない、人が一人で運搬できる量しか売れない、いった制限がある。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091213-00000001-jct-bus_all
J-CASTニュース 2009.12.13
<コメント>
「お役人」のすることは、と思ってしまいます。
真面目に取り組んでいるだけに怖いです。




 
読んでいただいて有難うございます。
コメントをお待ちしています。
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