腎嚢胞(じんのうほう)とは

人間ドックや健診で、腎臓に嚢胞があると言われて来院する方が時々来院されます。
これは超音波検査が人間ドックや健診で採用される機会が増えたことにも関係しています。
正式には単純性腎嚢胞といいます。
この嚢胞は、腎の表面や内部にでき、薄い皮膜の中に血清に近い無色透明の液が入っています。
50歳以上の人に多くみられ、超音波検査やコンピューター断層撮影(CT検査)で1割から2割といったかなりの頻度で見つかります。

単純性腎嚢胞はどんな病気か
片側あるいは両側の腎臓に1~数個の嚢胞(嚢胞液という液体が詰まっている袋)ができる病気で、加齢とともに頻度は増加します。
 
通常は無症状でほとんど問題になりません。
孤立性の大きな嚢胞ができると圧迫症状がみられ、時に外科的治療が必要になる場合があります。
大きさは数mmから10cmを超えるものまであります。
原因についての詳細は不明です。

症状の現れ方
多くの場合は無症状です。
孤立性の大きな嚢胞ができた場合は、時に腹部重圧感などの圧迫症状などを呈することがあります。
腎盂(じんう)の近くにできたものは水腎症(すいじんしょう)を来しやすく、水腎症(すいじんしょう)を起こすと尿が停滞し、腎盂は腫大して嚢状となります。
腫大した腎盂により腎実質が圧迫され、次第に薄くなり(乏しくなり)、腎機能障害が生じます。
しかし、その頻度は低いものです。
時には、血尿の原因ともなります。
非常に稀ですが嚢胞内に出血や感染、外傷時に破裂を起こすこともあります。

検査と診断
腎がんが腎嚢胞に合併したり、腎がんが嚢胞化することがあります。
(腎嚢胞が癌になることは殆んどありませんが、腎癌の5%に嚢胞が伴います)
悪性腫瘍を否定するために、CTや超音波検査を行います。
 
悪性腫瘍が疑われればMRI、血管造影、嚢胞穿刺(せんし)(針を刺す)による組織診断を行います。
良性の単純性腎嚢胞と診断がつき、症状がなければ経過をみます。

治療の方法 
嚢胞の大きさや数は、年齢とともに増加しますが、その変化は緩やかであり、無症状で合併症のない場合は治療の必要性はありません。
多くの場合は、経過観察のみとなりますが、圧迫症状があったり、腎機能に悪影響を与えているものには治療がなされます。
圧迫症状、高血圧、尿路の閉塞などがあれば、外科的切除、開窓術、経皮的穿刺による吸引固定(経皮的嚢胞穿刺術)、腹腔鏡下嚢胞切除(ふくくうきょうかのうほうせつじょ)などが行われます。

<経皮的嚢胞穿刺術について>
超音波で見ながら嚢胞内に細い針を刺し、中に溜まっている液を吸引します。
さらに吸引のみでは再発率が高いため、抗生物質またはアルコールを、つぶした嚢胞内に注入します。最近の医療技術の進歩により、安全で、合併症や副作用も少なく治すことが出来ます。

単純性腎嚢胞に気づいたらどうする
検診や他の病気で医療機関を受診した際に発見されることが多いようです。
腎嚢胞を指摘された場合は、症状が無くとも専門医の診察を受けてください.

<参考および引用サイト>
単純性腎嚢胞
http://health.goo.ne.jp/medical/search/10J11300.html
「腎臓にのう胞がある」と言われたとき
http://www.fms.gr.jp/?module=Kenkou&action=Detail&eid=903






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