急性冠症候群(ACS)

皆さん、「急性冠症候群」という言葉を耳にしたことがありますか?
日本人の死因の第2位の心臓疾患の新しい概念で、急性心筋梗塞、不安定狭心症、虚血性の突然死の3つを指して「急性冠症候群」と呼びます。
動脈硬化によって狭くなった冠動脈内のプラークが破裂し、血栓ができることにおり、急激に血流が悪くなって起こる心臓病の総称です。

冠動脈;心臓の筋肉すなわち心筋に酸素と栄養を供給する動脈
プラーク;血管の壁に入り込んだコレステロールのかたまり
血栓;血のかたまり


##急性冠症候群(ACS
#急性冠症候群(ACS)という病気
心臓が活動するために酸素と栄養を供給する血管(冠動脈と呼びます)は、他の血管と同様に、年齢と共に動脈硬化などにより狭くなることがあります。
 
急性冠症候群(ACSと呼びます)は、狭くなった冠動脈内に血の固まり(血栓)が生じることによって、血液の流れが非常に悪くなったり、詰まってしまうことで起こるといわれています。
そうなると、心臓が必要とする血液量が得られないため、心筋が酸素不足となり、結果として胸痛などの症状が引き起こされてしまいます。
 
この血栓ができる主な原因には、血管内にあるプラークと呼ばれるコレステロールのつまった瘤(こぶ)のようなものが破れることがあげられます。
プラークは血中の悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が、血管の壁の中に入り込むためにできると考えられています(図)。


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#急性冠症候群になりやすい人
多くの臨床試験の結果により、冠動脈疾患と急性冠症候群の危険因子が明らかになっています。
危険因子が多くある人ほど、冠動脈疾患、急性冠症候群にかかり易いといえます。

<主要な冠動脈疾患の危険因子>
1.高LDLコレステロール血症
2.低HDLコレステロール血症
3.加齢(男性45歳以上、女性55歳以上)
4.糖尿病
5.高血圧
6.喫煙
7.家族に冠動脈疾患にかかっている人がいる場合

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#急性冠症候群の治療
急性冠症候群の治療は以下の3つの治療法が中心となります。
1)薬物治療
薬物治療には大きく2つの目的があり、それぞれの目的に応じた薬剤が使用されます。
(1)狭心症発作を解消し、生活の質を改善すること。
硝酸薬、カルシウム拮抗薬、β遮断薬などが使用されます。
代表的な薬物
硝酸薬:ニトログリセリンなどで、血管を拡張させて、狭心症の発作を改善します。
β(ベータ)遮断薬:心拍数を減らして心臓の酸素消費量を減らします。
カルシウム拮抗薬:冠動脈を拡張して、痙攣を伴う狭心症を改善します。
(2)心筋梗塞の移行を抑制して、長期予防や再発防止を行うこと。
抗血小板薬、高脂血症薬(スタチン)、ACE阻害薬などが使用されます。

代表的な薬物
抗血小板薬(アスピリン):血液を固まりにくくする薬です。
高脂血症薬(スタチン):肝臓でコレステロールの合成を抑制することで血中のLDLコレステロールを下げます。狭心症心筋梗塞の再発を防ぐことができます。
ACE阻害薬、AII受容体阻害薬:血圧を下げる作用に加え心臓保護作用があるといわれています。
薬剤は長期間服用しなければならないので、安全性の高い薬剤が選択されます。
薬剤に対して不安や疑問がある場合は、医師や薬剤師に相談してください。

2)経皮的冠動脈形成術(PCI
インターベンション治療ともいいます。
細くて柔らかくしなやかなチューブ(カテーテル)をふとももの付け根や腕の動脈から冠動脈まで送り込んで、狭くなった血管を広げ、血液の流れを改善する治療法です。(図1)

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このPCIには風船療法(バルーン血管形成術)とステント留置術とがあります。
最近ではステント留置術が主流です。
この方法では、まずカテーテルを、肘から手に走る橈骨動脈や、脚の付け根の大腿動脈に差し込み、冠動脈入り口までカテーテルを注入して、冠動脈検査をします。
狭い場所(狭窄部位)が見つかれば、ステントという金網をその部位に留置します。
留置の方法は、折り畳んだステントの内部にしぼんだ風船を通し狭窄部位で風船をふくらませて押し付け、再び風船をしぼませてステントを留置します。

3)冠動脈バイパス術
手術により血管のつまってしまった部分に新しい血管をつなげて、新しい血流の通路を作る方法です。(図2)

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#急性冠症候群の予防
●食生活:腹八分目を心がけ、食事に含まれる脂質を減らすことを心がけてください。

●運動:水泳、ウォーキングなどの有酸素運動を1回30分程度、週3,4回行うことで急性冠症候群の予防、再発を防ぐことができます。
腕立て伏せなどの激しい運動は血圧が上昇し心臓に負担がかかりますので避けてください。
早朝と深夜は冠動脈が収縮していることが多いので、運動は避けたほうが良いです。
運動を開始する前に医師や理学療法士に相談するのが良いでしょう。

●ストレス:ストレスにより心拍数や血圧が上昇して心筋梗塞不整脈の原因になることがあります。
十分な睡眠や気分転換でストレスをうまく解消することが大切です。

●飲酒、タバコ:過度な飲酒は避けましょう。
タバコを吸うと急性冠症候群が発症しやすくなりますので、禁煙したほうが良いでしょう。


<参考および引用サイト>
急性冠症候群(ACS)という病気
http://www.japan-acs.or.jp/acs_1.html
急性冠症候群になりやすい人
http://www.japan-acs.or.jp/acs_2.html
急性冠症候群の治療
http://www.japan-acs.or.jp/acs_3.html
急性冠症候群の予防
http://www.japan-acs.or.jp/acs_4.html

<参考書籍>
週刊朝日 2010.1.22 名医の最新治療 「急性冠症候群」



<きょうの一曲>
Beethoven:交響曲第7番「第1楽章」1/2
http://www.youtube.com/watch?v=5vSYlKG7XOo




Beethoven:交響曲第7番「第3楽章」
http://www.youtube.com/watch?v=7pPN6v4Y-tg


(コメント;フルトヴェングラーの音源がこんなにいい音で記録されていおるのには感激しました)






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