メタボ指導で体重減

メタボ健診に効果 1年で平均1.7キロ減 全国調査

40~74歳へのメタボ健診(特定健診)で、食事や運動などの指導を受けた人は1年間で体重が平均で1.7キロ減ったことが国立保健医療科学院などによる全国規模の調査でわかった。
体重は男性2.4%、女性3.0%の減少で、おなか回り(腹囲)は男性が2センチ、女性は2.48センチ減った。

イメージ 1


メタボ健診後の保健指導の体重減少などで全国的な大規模集計が出たのは初めて。
同院の今井博久疫学部長らは、北海道から九州まで協力が得られた8都道府県で、メタボ健診が始まった2008年度に受診した38万人を対象に追跡調査した。

38万人のうち6万人が腹囲が基準を上回るなどして保健指導の対象になった。
うち1万2千人(平均64.83歳)が実際に保健指導に参加して体重減などを目指した。
指導参加者の体重は08年度に比べて09年度は男性で平均1.65キロ(2.4%)減、女性は1.79キロ(3.0%)減だった。

保健指導の対象になったものの指導までは受けなかった人も体重は減っていたが、その減少幅は男性0.49キロ、女性0.61キロと少なく、保健指導の効果があったとみられた。

体重、腹囲のほかには、中性脂肪が男性11%減、女性10%減、最高血圧が男性1.4%低下、女性1.8%低下などの効果がみられた。

ただ、保健指導の効果には地域差があった。
岩手・三重・山口・香川・高知・宮崎の6県で体重減少幅を比較した結果、男性では山口や岩手が2キロ以上減ったが、宮崎は1.25キロで平均より低かった。
女性でも地域差があった。
岩手県の35市町村の分析では、3市町村で平均3キロ以上減った一方、体重が0.2キロ増えた市町村もあった。

地域差の要因に保健指導の方法が市町村ごとに違うことが考えられる。
岩手県内の市町村ごとにみると、食事記録表だけを使う場合より、食事写真を撮らせたり食事内容を詳しく尋ねたりするなどの指導をした市町村が体重・腹囲減少の効果が高かった。
指導スタッフ1人が住民6人以上を受け持つより5人以下の少数指導の方が効果が高かった。

今井部長は「滑り出しとしては体重減などの効果が出た。効果には差もあり、指導の改善につなげてほしい。今後、病気の予防や医療費への影響なども検証する必要がある」と語る。(編集委員・浅井文和)

イメージ 2


 * * *

特定健診〉 
生活習慣病予防のために2008年度から始まった。
市町村の国民健康保険や健保組合などが実施する。
心筋梗塞脳梗塞などのリスクが高まるメタボリックシンドローム内臓脂肪症候群)に着目しているため「メタボ健診」とも呼ばれる。
腹囲、血糖、脂質、血圧の健診結果をもとに、高リスクの人は食事や運動などの特定保健指導を受ける。腹囲は男性85センチ以上、女性90センチ以上が指導対象だが、この基準などをめぐって見直し論議が起きている。

出典 朝日新聞・朝刊 2010.7.27
版権 朝日新聞社


<私的コメント>
「食事や運動などの指導を受けた人」は健康志向の強い人ですから当然といえば当然です。
問題は、減量が継続できるかということです。
「メタボ健診」自体、厚労省が具体的数字を公表しているかどうか知りませんが、実施当初から「壮大なる無駄遣いの実験」と揶揄されて来ました。
ところで今回の記事で「国立保健医療科学院」なる組織を知りました。
昨今、事業仕分けがされている中、はたしてこの組織自体は必要でしょうか。
サイトで見る限り目を疑うような立派な建物です。
国自体がメタボです。
この組織自体の予算を削減するなり廃止して減量すべきではないでしょうか。
そもそも、国が始めた事業を国の機関が検証すること自体が荒唐無稽です。
結論は最初からわかっています。
三者機関が調査すべきです。
そもそも費用対効果のコストパフォーマンスが民間なら真っ先に検討される筈です。
もちろん、この費用には「国立保健医療科学院」自体も含むべきです。
「1年で平均1.7キロ減 」。
だからどうしたの、といいたくもなります。




一方、こういった記事もその後にありました。

メタボ健診、指導「終了」7%どまり 厚労省まとめ

2008年4月から始まった特定健診(メタボ健診)を受け、特定保健指導の対象となった人のうち終了者は7.8%にとどまっていることが25日、厚生労働省のまとめ(確定値)で分かった。
生活習慣病予防に向けた指導を継続できない人が目立った。
初年度の受診率は38.3%で、12年度に70%とした全国目標の半分程度と低迷していた。

同省によると、内臓脂肪症候群メタボリックシンドローム)を改善して生活習慣病を予防するための特定健診は08年度に40~74歳を対象として導入された。
特定健診を受けた人のうち、腹囲や血液検査で基準値を上回り、特定保健指導の対象者となった人は約394万人(19.8%)。
だが保健師などによる指導を最後まで終了したのは約31万人(7.8%)のみで、指導を最後まで受けない人が多かった。

初年度の対象者は約5190万人だったが、受診者は約1990万人(38.3%)にとどまった。
組織別にみると、公務員などが加入する共済組合は58.7%、大企業のサラリーマンなどが加入する企業健保組合は58.0%と高かったが、市町村国保が30.8%、中小企業のサラリーマンなどが加入する全国健康保険協会協会けんぽ)が29.5%と低かった。

同省の実施率の全国目標は70%だが、加入者が受診しやすい大企業など単一の健保組合は12年度に80%、協会けんぽは70%、市町村国保は65%を目標としている。
初年度で対応が遅れたケースも多かった。同省は「初年度で十分対応できなかった」というケースもあるという。

腹囲の基準(男性は85センチ以上、女性は90センチ以上)を満たし、高血糖値、高コレステロール、高血圧の3つの基準のうち2つ以上満たす内臓脂肪症候群だった人は約288万人(14.5%)に上った。
腹囲以外で、高血糖値など3つの基準のうち1つ以上満たす「予備群」は約247万人(12.4%)だった。

厚労省は06年5月に公表した「国民健康・栄養調査」で40~74歳の内臓脂肪症候群が強く疑われる人は約940万人で、予備群は約1020万人という推計を出している。
今回はこうした数字を下回っており、特定健診を受けない潜在的な患者が多いことを裏付けた。

同省は「特定健診の受診率を増やすため努力している市町村もある」と指摘、受診率を高めるよう工夫を求めている。

イメージ 3


出典 日経新聞・朝刊 2010.8.26
版権 日経新聞

<私的コメント>
この厚労省の発表は一見良心的なようにも感じられます。
しかし、結局は「もっと特定保健指導」を受けなさい、という強引な結論が最初から用意されているのです。

また、受診者の少なさは意識の低さというよりも、この「メタボ健診」自体を医療機関や国民が評価していないためです。

官僚は一度決めたことは、たとえ間違っていても「ゴリ押し」します。
こういった「ゴリ押し」を見る度に、太平洋戦争をいつまでも止めなかった軍部を連想するのは私だけでしょうか。

そして間違っていても、いつものことですが責任の所在ははっきりしません。
ゆとり教育」は誰の責任でしょうか。
「卒後研修制度によって始まった医師偏在による医師不足」は誰の責任でしょうか。
「メタボ健診」しかり。

これらのA級戦犯は誰ですか?




<番外編>
保険適用の前倒し了承 抗がん剤などで中医協
厚生労働省中央社会保険医療協議会中医協)は25日、海外で標準的に使われているが国内では保険適用外の抗がん剤などについて「医療上の必要性が高い」と判断した場合、承認前に迅速に保険適用することを了承した。
海外の臨床試験(治験)結果などを活用し早期に承認する「公知申請」の手続きに入った段階で保険適用とする。

同省が国内医薬品の承認遅れ(ドラッグ・ラグ)の短縮と患者負担の軽減のため、同日開催された中医協に提案した。

まず26日と30日に開催する同省の薬事・食品衛生審議会(薬食審)で公知申請の手続きに入ることを認めた医薬品が対象となる。いずれも国内で別の疾患で承認されている適応外薬で、承認前でも副作用被害が起きた場合、通常の補償と同じ扱いにする。国内で全く承認されていない薬(未承認薬)は対象外という。

薬食審で検討されるのは卵巣がん用のゲムシタビン(販売名ジェムザール)や、再発して切除不能胃がん用のカペシタビン(販売名ゼローダ)など5薬品の7疾患。
患者や学会の要望を受けて同省の検討会議が3日、公知申請の対象となると判断していた。

公知申請の手続きに入れば例外的に保険適用の治療と併用して保険適用まで薬代を全額自己負担すれば使えるが、承認前に保険適用することで患者の負担を軽減する。

出典 日経新聞・朝刊 2010.8.26
版権 日経新聞





<きょうの一曲> How High the Moon
Lola Albright - How High the Moon
http://www.youtube.com/watch?v=S4jFd0XYYb0&feature=related

Natalie Gauci - How high the moon
http://www.youtube.com/watch?v=UcJ5aL4rzyQ&NR=1






読んでいただいて有難うございます。
コメントをお待ちしています。
井蛙内科開業医/診療録(4)
http://wellfrog4.exblog.jp/
(H21.10.16~)
井蛙内科開業医/診療録(3)
http://wellfrog3.exblog.jp/
(H20.12.11~)
井蛙内科開業医/診療録(2)
http://wellfrog2.exblog.jp/
(H20.5.22~)
井蛙内科開業医/診療録 
http://wellfrog.exblog.jp/
(H19.8.3~)
(いずれも内科専門医向けのブログです)
「井蛙」内科メモ帖 
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/

葦の髄から循環器の世界をのぞく
http://blog.m3.com/reed/
(循環器専門医向けのブログです)
「葦の髄」メモ帖
http://yaplog.jp/hurst/
(「葦の髄から循環器の世界をのぞく」のイラスト版です)