老眼対策について

40代半ばを過ぎると、老眼の予防や進行防止、さらに緑内障白内障などの「目の成人病」の発症も気になってきます。
漢方薬サプリメント(栄養補助食品)など「目にいいこと」をいろいろ試したくなりますが、その効果はどの程度あるのでしょうか。


 老眼とともにかかりやすくなる目の病気は? やるべきチェックは?
 3つの病気に注意。40歳を過ぎたら、一度眼科で検査を
40代以降は老眼だけではなく、「目の3大成人病」といわれる緑内障白内障黄斑変性症に対する注意が必要。特に家族に病歴がある人は年に1回、ない人も2年に1回は視力、視野、眼圧、眼底などの検診を受けるようにしましょう。

緑内障は明確な原因がないのに眼圧が高くなり、視神経が圧迫され、視野が狭くなる病気。
早期発見すれば進行を止められますが、治療が遅れると失明につながることもあります。
早期発見の最重要ポイントは、「眼底検査」を受けることです。

白内障は水晶体が白く濁ってしまう病気で、早い人は40代で、60代にはほとんどの人に出現します。
特に強い近視の人は発病が早い傾向があります。
最近は日帰り手術施設も増えています。

黄斑変性症は高齢になるほど発症率が上がり、「70代以上に多い」「欧米人に多い」といわれていましたが、最近は日本でも患者が増えています。
早い人は40代で発症、視野がゆがんだり、視野中心が見えなくなったりします。

「目の成人病」の発症にも、血流や房水の流れの悪さからくる目の細胞の活性低下がかかわっているのではないか、といわれています。
40代で健康な37人の眼圧を調べたところ、老眼がない人より老眼がある人のほうが眼圧が高かったというデータもあります。
ちなみに、高い眼圧は緑内障になりやすいサインです。
病気予防のためにも老眼鏡は最低限の度数にして、毛様体を甘やかさないようにすることがすすめられます。

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 目にいいサプリは老眼予防にもなる?
 可能性に期待しましょう
眼精疲労対策など、目にいい成分として真っ先に頭に浮かぶのはビタミンAやブルーベリー、カシスなどに含まれるポリフェノールアントシアニン、サケやエビなど魚介類や藻の赤い色素、アスタキサンチンなどです。

とはいえ、老眼にも予防効果があるかといえば、今のところエビデンス(科学的根拠)はありません。

しかし、目の老化を防ぐという広い意味で、活性酸素を抑える成分には期待できます。
例えば、加齢黄斑変性症に対しては、抗酸化力があるビタミンA(βカロチン)、同C、同E、亜鉛、銅に予防・治療効果があったとの臨床試験報告があります。
酸化を防いで若さを保つ点で期待できると考えられます。

また、魚油などに含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)には、毛細血管がはり巡らされている網膜など目の血流や、脳の血流をアップする作用があります。

抗酸化力では、ルテインアスタキサンチンなども注目されています。
これらは全身の老化予防効果が期待できる成分。
目のアンチエイジングは全身のアンチエイジングとつながっています。

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’’’Q’’’ ’’’東洋医学では老眼対策はないの?’’’
’’’A’’’ ’’’もちろん、あります!’’’
漢方では、老眼は全身のエネルギーの流れや、血液の貯蔵、筋肉の機能などをつかさどる「肝」と、腎臓などの泌尿器系のほか、生殖器・ホルモン・免疫系をつかさどる「腎」の衰えで起こると考えます。

老眼と時期が重なる更年期障害も、腎の衰えが大きな原因の一つ。
そこで、肝と腎の働きを高める漢方薬を使います。
また、目の95%は水分ですから、「水」の代謝を促進することも大切。
緑内障治療に利尿剤を使うなど、西洋医学でも目の健康と水分代謝の関係が常識化しています。 

目の次に水分が多いのは脳。
漢方の視点では目の衰えと脳の衰えは同時に起こるので、一緒にケアします。
目から得た情報が脳で処理できなければ、“見えた”ことにはなりません。

目と脳の血流や水分の代謝をよくする漢方の代表格は腎の機能を補う八味地黄丸(はちみじおうがん)。また血の滞りによる不調が多い40代、50代には、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)も効果を発揮します。
更年期障害の治療に使われる連珠飲(れんじゅいん)もストレスによる目の疲れなどに効きます。

生活習慣としては、
1.体を冷やさない 
2.水分代謝を悪くする甘いもの、塩辛いもの、冷たい飲み物などを避ける 
3.部屋を明るくし過ぎない 
4.目や脳の疲れを抑えるため、疲れをとるため、しっかり眠る 
の4つが大切です。

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(日経ヘルス プルミエ 黒住紗織、ライター 竹島由起)
[日経ヘルス プルミエ2010年8月号の記事を基に再構成]

出典 日経新聞・Web刊 2010.12.3(一部改変)
版権 日経新聞


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