子宮頸がん予防に本腰

ワクチン、高い有効性 検診、接種後も重要

近年、子宮頸がんワクチンが注目を集めている。
政府は臨時国会で成立した補正予算に接種費用約344億円を盛り込み、公的補助を始める。
だが「すぐに接種する必要があるのか」との不安や「ワクチンを受ければ子宮頸がんにならない」などの誤解も広がっているようだ。
検診受診率が2割程度にとどまる中、ワクチン接種と検診の併用で効果的予防に取り組む自治体もある。


「非常に有効性の高いワクチンです」。
先月、東京都内での国際ワクチンシンポジウムで、英ケンブリッジ大学のマーガレット・スタンレー教授は子宮頸がんワクチンについて海外の論文などを紹介、「まだ導入していない国は積極的に検討すべきだ」と強調した。

日本では昨年12月に国内で初めて同がんワクチンが販売され、接種費用を補助する自治体が増えている。厚生労働省の調査では今年度で公費助成を実施ないし予定しているのは回答のあった自治体の1割弱の126市区町村。
3回接種で約5万円と高額でもあり、1万2千円以上を助成する自治体が86市区町村に上る。


対象者は13~16歳
政府は臨時国会で同ワクチンの接種費用補助のため約344億円を盛った補正予算を成立。
対象は中学1年(13歳相当)から高校1年(16歳相当)とした。

海外では100以上の国で接種が始まり、約30カ国で公費助成がある。
「日本もやっと」と評価する声の一方、「ワクチンの正しい情報が伝わっていない」との懸念も聞かれる。

性感染症の子宮頸がんを起こすウイルス(HPV)は100種類以上あり、性交渉を始めた女性の7~9割はHPVに感染するが、うち8~9割は自然に消失してしまう。
発がん性のHPVに感染しても、がんを発症するのは1000人に1.5人のみとされる。

昨年12月に日本で販売されたワクチン(商品名・サーバリックス)は発がん性のあるHPVのうち「ハイリスクの2種類」に有効。
日本人では、同がんの原因はこの2種が5~7割とされ、ワクチンでの予防効果は1000人に1人程度。海外では4種のHPVに効果があり他の性感染症予防効果もあるワクチン(商品名・ガーダシル)も使われ、日本でも承認申請中だ。


日本は2割どまり
欧米ではワクチン接種だけでなく、子宮頸がん検診の受診割合が7~8割と高い。
だが、日本の受診率は約2割どまりだ。

厚労省によると、同がん患者は年間約8500人で約2500人が死亡している。
10代の性交体験率も高く若い女性の発症も増加。
たとえ性交渉前にワクチンを接種しても、予防効果のないタイプのHPVに感染すれば発症リスクはある。
長期の予防効果も検証中で、検診は欠かせない。

検診には「細胞診」と「DNA検査」がある。
細胞診は子宮内の細胞を採取して顕微鏡で細胞の形の異常を見つける。
DNA検査は採取した細胞内のハイリスクHPVを検出する。

女性5千人に検診を実施すると、50人に早期の異常が見つかるともいわれている。
見逃しの恐れは細胞診のみだと13人、感度が高いDNA検査でも3人。
だが両検査の組み合わせで1人に減らせるという。

このため従来の細胞診に加えDNA検査も併用する自治体もある。
島根県は2007年から1市と1町で従来の細胞診にDNA検査を加えるモデル事業を実施。
特に若年者には「両検査結果が陰性なら3年間は子宮頸がんになる可能性はない」と受診間隔を空けられるメリットも伝えた。

その結果、受診率は全体で約1.5倍(若年者は2倍)に増え、3年後の受診で済む女性は9割以上に上った。
県の担当者は「毎年の受診を呼びかけるより受診率向上には効果的。自治体も費用が少なくて済む」という。
今年度は県内の8割の市町村が併用型を導入、がんになる前の発見が1.5倍に増えた。

細胞診費用は約6500円、DNA検査は約4000円。
公費助成されたワクチン接種と併用検診を組み合わせれば、効果的で効率的な子宮頸がん予防が可能で、ワクチンだけでなく検診も受ける必要がある。


ヒブなどにもワクチン補助 助成額、自治体間で格差も
政府は補正予算で子宮頸がんに加え2つのワクチンにも公費助成を決めた。
細菌性髄膜炎を防ぐ小児用肺炎球菌ワクチンと、ヒブ(インフルエンザ菌b型)ワクチンだ。
いずれも接種対象者は0~4歳の乳幼児。
国の出資額は基金の形で計1085億円。

ただ、公費助成の対象は海外に比べて少ない。
副作用被害による訴訟で国が敗訴するなどしたため、予防接種法に基づく法定接種の対象としていたワクチンの数を減らしたからだ。
こうした海外との考え方の違いは「ワクチン・ギャップ」といわれる。

今回の公費助成も国の補助は半分で、市町村が残りを補助しないと全額自己負担となる。
自治体で格差が生じる可能性があり、厚労省の予防接種部会で「欧米は国の全額カバーだ」として検討を求める声も出た。

昨年流行した新型インフルエンザでワクチンへの期待が高まるなど、ワクチンへの国民の認識は変わりつつある。
同部会では新たに水痘、おたふくかぜ、B型肝炎などを公費助成の対象にする検討が進んでいる。
(前村聡、長倉克枝)


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出典 日経新聞・夕刊 2010.12.9(一部改変)
版権 日経新聞


<私的コメント>
子宮頸がんワクチンだけでなく子宮頸がん検診、他のワクチンの公費助成の話と盛りだくさんの内容となっています。
「子宮がん検診」ではなく「子宮頸がん検診」と表記したことは評価したいと思います。
自治体によっては未だに「子宮がん検診」と言っています。
この表現では「子宮体がん」の検診もしたことになってしまい、受診者に誤解を抱かせてしまうからです。
惜しむらくは「子宮頸がんワクチン」に含まれるアジュバントの問題点も取り上げて欲しかったのですが。



<子宮頸がんワクチン 関連サイト>
子宮頸がんワクチン
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy/archive/2010/05/08
ワクチン政策の充実を
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy/archive/2010/03/11
子宮頸がんワクチン
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy/archive/2008/11/24


<番外編>
来春の花粉、2月から=飛散量2~10倍-気象会社など
民間気象会社ウェザーニューズは8日、来春は2月上旬から花粉の飛散が始まるとの予測を発表した。
東・西日本では3月上旬にピークを迎える所が多くなる見通し。
昨シーズンより飛散開始が早く、同社は早めの対策を呼び掛けている。
 
日本気象協会も同日、花粉飛散の予測を発表。
今夏の日照時間が長かったため飛散量は多くなり、少なかった昨シーズンと比べ2~10倍、近畿と東海では10倍以上になる所もある。
北海道や東北の一部では、例年より少ない見通し。

出典  時事ドットコム 2010.12.8
版権  時事通信社


他に
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