こむら返りが続く時

糖尿病の可能性も こむら返り、続く時は注意

運動中、脚がつる経験をした人は少なくないだろう。
ごくありふれた症状である「こむら返り」だが、繰り返し起こす場合には、病気が潜んでいることもある。急にこむら返りを起こすようになった、週に何度も起こす、就寝中などの安静時にも繰り返す――。
そんな場合は、注意が必要だ。

「数カ月前、就寝中の明け方にこむら返りを起こしたのが始まりだった。特に運動をした覚えもなく不思議に思うだけだったが、度々繰り返すようになった。通勤中にも脚がつったため病院に行くと、糖尿病だと言われた」。
会社員のKさん(47歳)は病気がわかった経緯をこのように話す。


大半は心配なし
こむら返りとは、痛みを伴う筋肉の痙攣(けいれん)のこと。
主にふくらはぎである腓腹筋(ひふくきん)で起きることが多い。
運動時や運動後、就寝中などに起こりやすく、多くの人が経験するなじみ深い症状だ。
大半は脱水などによる一過性のもので、病気と無関係で心配ない。
しかし、Kさんのように、繰り返す場合には、思わぬ病気のサインの場合があるので注意してほしい。

実は、こむら返りがどのようなメカニズムで起こるのか、よくわかっていない。
しかし、「筋肉自体に原因があって起こる場合と、筋肉につながる神経が原因の場合とに分けられる」と、慶応義塾大学客員教授で、糖尿病に詳しい、東京都済生会渋谷診療所の松岡健平医師は説明する。

例えば、運動時に起こるこむら返りは、筋肉の疲労や、発汗などによる脱水で血液中の電解質のバランスが崩れ、筋肉自体の過敏性が高まって痙攣するものだ。
冷えなどの血行障害で筋肉に老廃物がたまり、十分な栄養を補給できないことも引き金となる。

一方、神経に原因がある場合には、何らかの障害を受けた神経が、筋肉に異常な信号を送り、過剰に筋肉が収縮して起こると考えられている。

糖尿病でこむら返りが起こるのは、このタイプだ。
血糖値が高い状態が続くと、末梢神経に小さな傷がつき、刺激が起こる。
糖尿病の三大合併症の一つに神経障害があるが、こむら返りもこの一つ。
糖尿病患者の多くが訴える。

糖尿病で起こる場合、就寝中の明け方など、安静時が多いのが特徴だ。
Kさんのように、こむら返りで受診して糖尿病が見つかることもある。
喉が渇く、多尿などの症状もあれば、糖尿病が疑われる。
内科を受診するといい。


腰の神経圧迫も
糖尿病と同様に、こむら返りが多く表れるのが、腰部脊柱管狭窄症だ。
背骨にある神経を包む管である脊柱管が狭くなり、神経が圧迫されて様々な症状が出る病気で、50歳以降で多い。

脊柱管狭窄症患者に行った調査では、約7割にこむら返りを認め、夜間就寝中に起こるケースが7割以上で、頻度は数日に1回が最も多かったという報告がある。
脊柱管狭窄症の場合、間欠跛行(はこう)も特徴的な症状。歩くと脚がしびれて痛くなるが、休むと楽になる症状だ。

こむら返りを繰り返し、間欠跛行があれば、整形外科、特に脊椎脊髄を専門とする医師のいる医療機関を受診するといい。

このほか、女性に多い甲状腺機能低下症でも、こむら返りを起こす。
手足の冷えも訴える人では、甲状腺機能低下症だったケースが少なくない。

こむら返りを予防するために効果的なのが、つってしまう筋肉のストレッチだ。
運動前や就寝前などに、ストレッチをするといい。
脊柱管狭窄症では術後もこむら返りが起こることが多いが、日常的につりやすい筋肉を十分にストレッチしておくと、それが防げる。
ラジオ体操でも効果がある。

一方、糖尿病の場合は血糖のコントロールが一番。
血糖が安定すると、起こさなくなる。

これから寒さが増すと、こむら返りを起こしやすい。
もし、繰り返すようなら、軽視せず、医療機関を受診しよう。
                         (ライター 武田 京子)
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芍薬甘草湯もおすすめ
ストレッチ同様、こむら返りの予防に効果的なのが、漢方薬芍薬甘草(しゃくやくかんぞう)湯だ。
ゴルフなどの運動前や、就寝前などに服用しておくと、こむら返りを防げる。

芍薬甘草湯が効く理由は明らかではないが、芍薬の筋肉を弛緩(しかん)させる作用と、甘草の血行を改善し炎症を抑える作用の効果だと考えられている。

出典 日経プラスワン 2010.12.4
版権 日経新聞

<私的コメント>
最近こんな経験をしました。
70代の女性で狭心症で通院中の方です。
最近、「こむら返りで悩んでいる」という話をされました。
糖尿病はありません。

四肢の血圧を測定してみたところ右上腕150/73mmHg、右足首80/39mmHg。左上腕113/66mmHg、左足首77/50mmHg。
一般的に足首の方が血圧は高いのが普通ですが、明らかに足首の血圧が両側で低くなっています。
左上腕も低いので腕の動脈の血流低下も疑われます。
女性に多い大動脈炎症候群(脈なし病)も疑われますが閉塞性動脈硬化症を疑って、血流改善を目的にプロサイリン錠(一般名ベラプロスト)を1か月間服用していただきました。
1か月後に来院された時に「こむら返りはほとんど起きなくなりました」と笑顔で話されました。

「こむら返り」の方がみえた時には四肢血圧測定も重要だ、という教訓を得ました。

糖尿病専門の先生にかかると、即座に糖尿病のせいだと決めつけられてしまう懸念もあります。
何事も先入観はよくないのです。

糖尿病の方で閉塞性動脈硬化症を合併する症例も珍しくないのです。




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