腹式呼吸のすすめ

腹式呼吸のすすめ

アンチエイジング」を考える時、呼吸の仕方はとても重要な役割を果たす。
 
呼吸には胸を上下させて行う胸式呼吸と、おなかで行う腹式呼吸がある。
腹式呼吸は効率のよい呼吸法といわれているが、正しいやり方を知らない
人は意外に多い。
 
腹式呼吸がよい理由は、深い呼吸ができるからだ。
ストレスの多い環境に生きる現代人は浅く速い胸式呼吸になりがちだが、浅く速い呼吸では、体内
の細胞に酸素が十分に供給できない。

東洋には、古くからの腹式呼吸法である丹田呼吸法がある。
ルーツはお釈迦様の時代にまでさかのぼるといわれ、座禅の時の呼吸もこれだ。
丹田とはおへそと肛門を線で結んだちょうど中間の部分をさす。
この丹田を意識しながら、おなかと背中がくっつくようなイメージで長い時間をかけて口から
息を吐ききり、今度は鼻から同じくらいゆっくりと息を吸う。
熟練した禅僧の場合、この吐いて吸っての一連の動作が、1分間に6回程度になるそ
うだ。
呼吸数は減ってもたっぶりと酸素をとりこむことができる呼吸法だ。
 
現代の腹式呼吸では、横隔膜や腹筋の働きが重要になってくる。
十分に息を吐き出そうとすると、自然に腹筋に力が入り、内議や横隔膜を押し上げる。
腹筋が緩むと、今度は自然に息を吸い込むことができる。
呼吸というと、息を吸うことが重要と考える人が多いようだが、私はむしろ吐くことを
大切にしたいと思いう。
 
私は階段を上がるときに、自分で「吐いて、吐いて、吐いて」とかけ声をかけるように空
気を吐き出しながら、まず3段上がり、次の1段を上がる時にすばやく空気を吸い込む。
力んで息を吸わなくても、自然に体に空気が入りこむのだ。
 
駅でエスカレーターに乗る若い人と競って、私が先に上階に達すると、いつも「やったな」
と心の中でガッツポーズだ。
この達成感がますます私を健康にしてくれる。

エレベーターやエスカレーターに乗らないで、こんな要領で階段を上れば、足腰が鍛えられるだけでなく、腹筋と横隔膜がよく収縮し、自然と効率のよい腹式呼吸ができるようになるはずだ。
最も手軽なアンチエイジング法だ。
出典 
朝日新聞・朝刊 2007.2.10
「95歳 あるがまま行く」 日野原重明


私的コメント
日野原重明 先生は今や103歳。
まさに「畏るべし」です。