冬の肌トラブル、予防のポイント

屋内外で気温差が大きく、空気が乾燥する冬場の環境は皮膚の大敵。
かゆみが生じたり、カサついたりと、皮膚にまつわるトラブルが起こりやすい。

かゆみ・カサつき 冬の肌トラブル、予防のポイント

この時期、発症しやすいものの一つが寒冷じんましん。
じんましんは食べ物や薬の服用など様々な要因が引き起こす急性の皮膚病だが、これは、冷気や冷たい水が皮膚を刺激することで起こる。
刺激を受けた皮膚の部分が蚊に刺されたように赤くふくらむなどして、かゆくなる。
寒冷じんましんは誰にでも起こりうる。

皮膚の表面は角層に覆われ、その下に表皮、真皮と呼ばれるものがあり、外からの刺激物などの侵入を防いでいる。
真皮の部分にある細胞(肥満細胞)が刺激を受けると、じんましんの症状が出る。


「汗詰まり」も
予防にはまず、冷たい風や水に触れないようにすること。
外出の際はマスクや手袋、マフラーなどでしっかり防寒をして、皮膚をなるべく冷気にさらさないようにする。

患部をあたためるとかゆみは軽減するが、かきむしると、じんましんの範囲が広がる場合がある。
防寒対策をしても、症状が続いたり、改善しなかったりした場合は血液や免疫不全など別の原因が潜んでいる可能性がある。

屋内外の気温差などが大きいと「汗詰まり」も起こしやすい。
手のひらや足の裏に小さな水ぶくれができ、痛がゆくなるのが特徴だ。
本来は季節の変わり目によく出る症状だが、急に冷え込んだかと思うと、翌日は冷え込みがゆるむといった気象条件の時などに症状が出やすい。
これは汗の調節がうまくいかなくなるためだ。

初期の段階なら市販のかゆみ止めを患部に塗り、かきむしらないよう注意すればよい。
<私的コメント>
臨床経験からは、市販のかゆみ止めは無効だったり却って悪化することもあるようです。

しばらくして皮がむけ始めたら、今度はかゆみ止めではなく、尿素系のクリームを塗る。
そうすれば2週間程度で治る。

乾燥する冬場には「皮脂欠乏症(乾皮症)」もよく起こる。
皮膚表面の水分や脂が減少し、乾燥していくのが原因で、症状はひざ下(すね)や太もも、わき腹などに出やすい。皮膚の角質が粉をふいたように白くカサカサになり、かゆみをともなってはがれ落ち、次第にひび割れてくる。
さらに悪化すると皮脂欠乏性湿疹を発症することもある。

皮脂欠乏症の予防には、皮膚の保湿が欠かせない。
保湿用クリームなどをたっぷりととり、すりこみ過ぎないように注意して、手のひらでやさしく丁寧に、広範囲に塗るようにする。

冬場の肌のトラブルは、快適な睡眠の妨げにもつながる。
エアコンを付けたままにしたり、厚手の下着などもこもこした服を着て床についたりすると、睡眠の質に支障が出る場合がある。
乾燥や下着の繊維、ゴムなどが皮膚を刺激し、夜中にかゆみを発生させ、熟睡を妨げるからだ。

眠れない夜も
加齢と乾燥によるかゆみが原因で不眠となる高齢者も多い。
皮膚のバリアー機能は加齢とともに低下し、若い時期に比べ、皮膚は乾燥しやすくなる。
寒いとついエアコンの設定温度を上げてしまうが、その分、室内の乾燥が進むことにもなる。

また、年配者の中には厚手の下着を身につけて寝る人も多いが、もこもこした繊維は皮膚への刺激が強いため、肌に優しい素材のものを選ぶようにしたい。

部屋の快適湿度は50~60%程度だが、気温が17度以下に下がるとその湿度を保つのは難しく、結果として肌の乾燥が始まる。
気温が下がれば、空気中に含まれる水分量も減るので、加湿器やぬれタオルを利用し、保湿を心がけることが大切だ。

水仕事の後に手先をケア
冬場には進行性指掌角皮(ししょうかくひ)症に悩む女性も少なくない。
俗に「手あれ」と呼ばれる症状だ。
親指や人さし指から次第に指全体へと広がる。
時に赤みやかゆみを伴い、水ぶくれやひび割れへと症状は進む。

洗剤などを使って水仕事をする人や、手先をよく使う人などに起こりやすい。
予防には、作業が終わった後にきちんと肌に潤いを与えることを忘れないようにすること。
食器洗いなどをする際はゴム手袋を着用し、冷たい水や洗剤に直接、触れないように注意する。
ゴム手袋も、まずは綿の手袋をはめた上からするようにすると、皮膚への刺激を減らすことができる。

出典 日経新聞・朝刊 2014.1.11
版権 日経新聞