今年のインフルエンザワクチンは効く?

今年のワクチン製造株、効果は期待できる?  今年は抗原一致率が高い

■インフルエンザワクチンの効果を見るための指標は主に3つ。
(1)シーズンのワクチン株として選定したウイルス株(ワクチン原株)と、その原株を大量生産のために操作したウイルス株(ワクチン製造株)との抗原性一致率
(2)ワクチン製造株と、実際に流行したウイルス株(流行株)との抗原性一致率
(3)ワクチンを実際にヒトに接種した後の交叉反応性の高い赤血球凝集抑制(HI)抗体価

■2012/13シーズンと昨シーズンのA(H3N2)亜型株は、ワクチン原株から大量生産のための増殖能の高いワクチン製造株を作製する過程で抗原性が変化する卵馴化の影響がともに大きく、(1)の一致率が低下していた。
(近年、H3N2亜型株は卵馴化による抗原性変異を特に起こしやすくなっていることが指摘されている)

■実は2012/13シーズンは、H3N2亜型のワクチン製造株のほぼ100%が抗原性変異を起こしていた。
これでは、流行株の予測が正確でも本来の効果が見込めない。それに加えてH3N2亜型の流行が大きかったため、期待したワクチンの防御効果が得られなかったようだ。

■昨シーズンも、ワクチン原株と流行株の抗原性一致率は100%で、適切なワクチン株を選定していたにもかかわらず、製造株にした時点で流行株との一致率が21%と前述の通り大きく低下。
実に79%が抗原性の変異を起こしていた。

■ただし、昨シーズンはA(H1N1)pdm09亜型の流行が大きく、H3N2亜型は小さな流行にとどまったため、ワクチン効果の減弱が目立たなかったとも考えられる。

■翻って今シーズンは、11月28日までに全国で分離・検出されたインフルエンザウイルス110例中99例がH3N2亜型株。
ワクチンの実力が試されるH3N2亜型の流行年となる可能性が高い。

■今年こそは(1)の条件を十分に満たすため、より抗原性の変化が小さいH3N2亜型株を探索した結果、A/ニューヨーク/39/2012(H3N2)への変更が決まった。
2014年3月から8月までに流行したウイルス株とワクチン原株の抗原性一致率は100%。注目のワクチン製造株と流行株の抗原性一致率も82%と高い。
(18%はわずかな変化を起こしていたが、類似株に含まれるレベルの小さな変化)