認知症の早期発見

認知症の早期発見

生活習慣の改善で、進行抑制も
認知症になっても穏やかな生活を送ることができる人が少しずつ増えている。
その鍵をにぎるのが早期発見だ。
年をとり、記憶力や認知機能が落ちていくのは自然なこと。
大事なのは、日常生活に支障が出る前に気づき、早期に支える態勢を整えることだ。

■加齢に伴うもの忘れでは、我が子の名前のような重要なことは忘れない。
だが、認知症などに伴う記憶力低下では、子の名前を思い出せなかったり、思い出深い経験自体を忘れたりすることがある。
 
■どの程度のもの忘れなら心配ないのかを見わけるのは難しい。
不安をおぼえたら、専門家に相談したほうがいい。

■全国の市区町村や保健所、地域包括支援センターなどに認知症の相談窓口が整備され
てきている。

神経内科や精神神経科、老年科などによる「もの忘れ外来」も各地にある。
 
認知症を早く見つけることは、家族の理解を深め、患者の安心にもつながる。
 
■家族が、本人のためと思って、もの忘れを繰り返し注意することが、認知症の場合は
逆効果になる。

■注意するほど患者は不安になり、家族や周囲との溝が深まる。

■病気だとわかれば、こうした悪循環は防げる。
 
■近年、認知症とは言えないレベルの「軽度認知機能障害」があることも明らかになってきた。

■もとはアルツハイマー病の初期症状として注目され、日常生活に大きな支障はない。

■ただ、この段階で気づいて、運動を増やすなど生活習慣を改善すると、進行を抑制でき
たという報告もある。
 
認知症の兆候が疑われたら、まず専門医を受診し、その後も半年~1年に1回はチェックを受けたほうがいい。

■運動は認知症が進むのを遅らせるだけでなく、人とのかかわりを増やし、不活発になるのを防ぐ。
昼夜逆転や不眠を解消し、生活リズムも正せる。

■運動が苦手で、一日中パジャマで過ごしているような人は、きちんと着替えるだけで
もめりはりをつけることになる。

■早期発見は、治療にも有利だ。
アルツハイマー病は、治療薬アリセプト塩酸ドネペジル)などを服用すると進行を一時期遅らせられる。

脳梗塞脳出血などが原因になる脳血管性認知症も、生活習慣の改善で脳梗塞などの再発リスクを減らすことで悪化を防げる。
 
■レビー小体型の認知症では幻覚や妄想、前頭側頭型では異常な行動が目立つが、これらの一部は薬で症状を抑えられる。

■頭を打った後などに起きる慢性硬膜下血度や、脳腫蕩など、認知機能が低下するほかの病気も、早期ほど治療や改善が期待できる。

認知症かな、と思ったら?
1.  いつも日にちを忘れている
2. 少し前のことをしばしば忘れる
3.  いつも同じ話をする、と言われる
4.  特定の単語や言葉が出てこないことがしばしばある
5.  会話を理解することがかなり難しくなったと感じる
6.  料理や仕事の段取りが極端に悪くなった。
7.  何をするにもおっくうに感じたり、イライラしたりする
8.  夜、部屋の中で家族以外の気配がしたり、姿が見えたりする
9.  性格が極端に変わった、協調性がなくなった、と言われる

1~6はアルツハイマー認知症でよくみられる症状。
とくに記憶力や言語機能が低下している場合に起きる。
6、7は脳梗塞脳出血などで起きる脳血管性認知症の代表的な症状で、意欲や自発性が
低下す
8はレビー小体型認知症に多くみられ、幻覚や妄想が特徴的。
9は前頭側頭型認知症でみられ、場にふさわしい行動ができなくなったり、気分のむらが強くなったりする。
社会ルールを守れなくなる例もある。
認知機能を低下させる病気はほかにもる。
チェックリストで大丈夫でも、不安や違和感がある場合は、病院を受診しよう。

出典 朝日新聞・夕刊 2014.12.8 (一部改変)
版権 朝日新聞社