疥癬

疥癬

おなかや胸に赤いぶつぶつができてかゆみを起こす病気には色々ある。
アトピー性皮膚炎や、かぶれ(接触皮膚炎)、慢性湿疹などでも激しいかゆみがあり、顔や頭にぶつぶつがない場合には疥癬(かいせん)を疑った方がいいかもしれない。
 
疥癬はヒゼンダニという体長0・4ミリほどのダニが皮膚に寄生して起きる。主に手や肌の接触で人にうつるが、寝具や衣類などを介することもまれにあるとされる。
季節に関係になく一年中起きる。
 
診断をつけるには患者の体をみてヒゼンダニを探す。
赤いぶつぶつのところにダニがいる場合は少ない。
手のひらや指の間などでダニが皮膚を掘り進んで白い線のようになった「疥癬トンネル」にいることが多い。
目では見えないことも多く、専用のルーペでトンネルを拡大してダニを見つける。
 
治療では薬を使う。
飲み薬のイベルメクチンと、塗り薬のフェノトリンがある。
塗り薬は昨年、疥癬治療薬として国の承認を受けた。
症状がないところでもダニが潜んでいる可能性があるため首から下の全身にくまなく塗る。

近年、老人ホームや老人保健施設など高齢者が一緒に暮らす施設での集団発生も報告されている。
子どもが保育園でうっることもある。

完全に診断するのは難しいことも多い。
集団発生があると患者の何倍もの人数の入所者や職員の症状やダニの有無のチェックが必要となる。
症状から疥癬が疑わしいのにダニが全然見つからず、様子を見ることもあ
る。
また、体にダニがいるのに症状が出ない潜伏期間が約1~2カ月あり継続的な対応が必要となる。

毎年7万~15万人の新たな患者が出るとみられる。
疥癬を区別するためには疥癬トンネルを見つけることが重要となる。
男性の患者では外陰部に小豆大の赤褐色のしこりができるという特徴がある。
重い病気や免疫抑制剤などで免疫力が低下している人では「角化型疥癬」という症状が違うタイプの疥癬になる。
灰色から黄白色のざらざらしたカキ殼状のかさぶたのようなものが手、足、おしりなどにできるのが特徴。
通常の疥癬では症状が出ない顔や頭にも症状が出る。
ダニの数が非常に多く集団発生の発端になりやすい。
 
疥癬は命にかかわる病気ではないが、かゆくてつらい病気を他の人に広げないために、疑われる場合は早めに専門医を受診しよう。


もしかして疥癬?
① ⬜︎ おなか、胸などに赤いブツブツができて、激しいかゆみがある
② ⬜︎ 特に夜間にかゆくて、眠れないことがある
③ ⬜︎ 男性では外陰部に小豆ぐらいの大きさの赤褐色のしこりがある
④ ⬜︎ 手のひらなどに白っぽい線のような痕がある
⑤ ⬜︎ 家族や介護者ら接触する人で同じような症状の人がいる   
⑥ ⬜︎ 手、足、おしりなどに灰色から黄白色でざらざらと厚いかさぶたのよう
なものができた


① はアトピー性皮膚炎やかぶれ、慢性湿疹、疥癬などいろいろ考えられます。このうち疥癬は原則として顔や頭に症状が出ません。
②③は疥癬の症状です。
アトピー性皮膚炎やかぶれ、慢性湿疹、疥癬などいろいろ考えられます。このうち疥癬は原則として顔や頭に症状が出ません。
④は疥癬の原因になるヒゼンダニが皮膚を掘り進んだ痕で、「疥トンネル」と呼ばれます。
⑤はダニが手や肌の接触でうつって広がるためです。
⑥は免疫力が低下した人にできる角化型疥癬の症状です。

出典
朝日新聞・夕刊 2015.6.4 (一部改変)



疥癬のことを詳しく知りたい方は日本皮膚科学会がネットで公開している「皮膚科Q&A」の中の「疥癬」の部分をご覧ください。
https://www.dermatol.or.jp/qa/qa6/index.html