胃がんの内視鏡治療

胃がん内視鏡治療、身近に 体の負担軽く・対象は限定的

市区町村が実施する胃がん検診で、従来のX線検査に加え、内視鏡検査が導入される見通しだ。
見つかった胃がんが早期なら、口から入れる内視鏡で治療できる場合がある。
胃を切り取る手術に比べ、治療後の食生活への影響も少なく、全国の病院に広がっている。
最近では、開腹手術によらない内視鏡的粘膜下層剥離(はくり)術(ESD)という治療法が普及して来た。
この方法は、胃の粘膜にできたがんを、口から入れた内視鏡で見ながら電気メスで切り取る治療法だ。
胃の全部や一部を切る外科手術に比べて、胃を残すことができるため、治療後の食生活などの支障が少ない。
入院期間も短くてすむ。
 
胃がんの外科手術とほぼ同じ数になっている医療機関もある。
 
ただ、早期の胃がんがすべて内視鏡で治療できるわけではない。
 
胃がんは当初、胃の内側にある粘膜層にでき、下層へと深く広がっていく。
がんが粘膜層か粘膜下層にとどまっていれば一般的に早期がんと言われる。
ESDの対象となるのは基本的には早期がんでもがんが粘膜層にとどまるとみられる場合だけだ。
 
一方、がんの深さ(深達度)を治療前に正確に知ることは難しい。
そこでESDで切り取ったがん細胞を病理医が詳しく調べ、がんが下層により深く達していたと判断される場合などは追加の外科手術が必要になる。
こうしたケースが2割弱あるという。
内視鏡治療をして、その結果、手術になる可能性があることも十分に説明し理解してもらう必要がある。

■技術進み器具も改良
市区町村が実施する胃がん検診をめぐって専門家による厚生労働省の検討会は今年9月、これまでの胃X線検査に加え、内視鏡検査を推奨するとの中間報告をまとめた。
厚労省では、がん検診の指針を改定して来年春からの実施を目指す。
 
独自に内視鏡検査を実施する一部の市では、X線検査に比べて胃がんの発見率が3倍以上になったところもある。
今後、ESDを受ける胃がん患者も増えることが予想される。
 
ESDは外科手術に比べて歴史が浅いが、現在は全国の主要な病院に広がっている。
以前は難しい治療だったが、テクニックがかなり普遍化した、と専門医は話す。
 
出血や胃に穴が開く合併症が起きることがあるが、器具の改良が進み、止血や穴をふさぐ処置が適切にできるようになっている。
内視鏡で対処できず緊急外科手術をすることも以前より大幅に減った。
 
対象となる患者についても研究が進む。
 
現在、日本胃癌学会の診療ガイドラインでは、がんが2センチを超える場合などは「慎重に試みられるべき」とする。
ただ、2センチ超でもがんが粘膜層にとどまっている場合もあり、実際には治療が行われている。
全国の病院で2センチ超などで治療を受けた患者を長期的に調べる臨床研究も実施中である。

出典
朝日新聞・朝刊 2015.11.17



イメージ 1

京都・下鴨神社 境内 2015.11.15 撮影