眼内レンズ、「単焦点」と「多焦点」

眼内レンズ、違い理解して 白内障に「単焦点」と「多焦点」

眼内レンズ、違い理解して 白内障に「単焦点」と「多焦点」

年を取ればだれもがなると言われる白内障

症状が進むと水晶体を取り出して、替わりに「眼内レンズ」を入れる手術が必要になることが多い。

焦点が複数ある眼内レンズを使えば眼鏡が必要なくなることもあるが、長所と短所を理解して選択す

ることが重要だ。

 

生活に合わせて選択

白内障は目の水晶体が年齢とともに白く濁り、視力が落ちる病気だ。

60代で6~8割、70代では8割以上に水晶体の濁りがあるという調査結果がある。

 

現在の手術の主流は超音波法という方法だ。

点眼麻酔の後、細いメスを入れ、超音波で濁った水晶体を砕き、吸引する。そこに折りたたんだ人工の眼内レンズを入れて、中で開いたレンズを中央で固定する。

10~20分で終わる。

 

眼内レンズには焦点がひとつの単焦点と、主に二つある多焦点のものがある。

単焦点は比較的はっきり見えるが、ピントの合わない部分は眼鏡が必要になる。

読書が趣味なら近距離、屋外で遠くを見る機会が多いなら遠距離、といった具合に生活に合わせてレンズの焦点を選ぶことができる。

公的医療保険が適用され、片目の日帰り手術の場合、医療機関によって多少の差はあるが3割負担で5万~6万円ほど。

 

一方、多焦点は眼鏡なしの生活が期待できるが、レンズの構造上、焦点を結ばない光があり、くっきり感は落ちる。

焦点が合わない光が周りに拡散して、夜間に街灯や車のライトがにじんだり、まぶしく感じたりするグレアと呼ばれる現象がある。

 

多焦点眼内レンズは公的医療保険の適用になっていないが、先進医療に認められており、検査や入院費などに保険が適用される。

全国400以上の医療機関で実施され、費用は片目で30万~50万円ほど。

国内の年間約140万件の白内障手術のうち、多焦点は1~2%を占める。

 

手術前は遠視と老眼で眼鏡を手放せなかったが、手術後は眼鏡なしで生活している人も多い。

 

手術後の満足度に差

日本眼科医会が毎週実施している「目の電話相談」では、2014年度の相談549件のうち、79件が白内障手術に関するものだった。

術後の視力や見え方に不満を訴える声も多いという。

「多焦点眼内レンズを入れたがよく見えない」という相談もあり、術前の過度な期待とのギャップがある。

 

ある医療機関の眼科が08~14年に多焦点眼内レンズを両目に入れた26人を調査。

満足度は平均80点だったが、30点から100点まで開きがあった。

眼鏡を使っている人は約半数で、多焦点を入れた後に、単焦点に交換する再手術を2人が受けていた。

光がにじんで見えることなど、手術前に術後の見え方がイメージしにくいことが不満につながっているのかもしれない、」と専門家は語る。

 

一方、多焦点眼内レンズには、先進医療で認められたもの以外に、自由診療で使われる多機能レンズも次々に出てきている。

焦点が3カ所だったり、乱視に対応できたり光のにじみが出にくかったりするというレンズもある。

術前にしっかり検査し、個々に説明することが必要となる。

 

多焦点眼内レンズを入れると老眼鏡が必要なくなることもあるため、将来は老眼手術としても浸透していく可能性がある。

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参考・引用一部改変

朝日新聞・朝刊 2016.3.29