呑気症

空気を過剰にのみ込む呑気症

ゲップ・胃の不快感・おなら 歯科治療が有効な場合も
無意識に空気をのみ込みすぎておなかの張りやおなら、ゲップが頻繁に出る症状が呑気(どんき)症だ。
空気嚥下(えんげ)症ともいう。
緊張や不安から首や肩に力が入ったり歯を食いしばったりすると、唾とともに空気をのみやすい。
専門家は「病気の仕組みを理解して、歯科治療を含めた処置を考える必要がある」と説明する。

「固唾をのむ」という言葉があるように、不安や緊張で唾を飲む経験をした人は多いだろう。
口の中が狭くなって舌が上顎に当たると、唾液が喉の奥に流れ込んで無意識に飲み込んでしまう。
このとき、1回ごとに喉の奥の空気を3~5cc取り込んでしまう。
頻繁に唾を飲むとおなかの中に空気がたまり、呑気症を引き起こす。
 
空気が原因なので、胃や腸を検査しても異常は見つからない。
内科でガスを減らす薬や整腸剤などを処方されても効き目がほとんどない。
 
歯を食いしばったりかみしめたりして呑気症になる人が多い。
胃腸の不快感のほか、顎関節や目の奥の痛み、頭痛、目まいを伴うときもある。
 
かみしめる行為が目立つ場合を「かみしめ・呑気症候群」と呼ぶ。
症状の改善には、空気をのみ込む癖を直すのが先決だ。

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かみしめ・呑気症候群を長らく研究してきた研究者は「食いしばったり歯ぎしりしたりすると、顎や首の筋肉が唾液腺を刺激して唾液分泌が多くなり、飲み込む回数が増える」と説明する。
患者数の統計がなく実態が把握できていないが、日本人の4人に1人といわれる胃腸の不良の一因になっているとの見方もある。
 
呑気症になじみがないのは、医療機関で診断される例が少ないからだ。
気になる症状で訪ねても、原因不明とされる場合も多い。
 
緊張や不安による不調は心療内科、歯の食いしばりは歯科、胃腸の不調は内科などと複数の診療科にまたがる症状が特徴だが、歯科での治療が基本となる。
 
医療関係者の間でも認知度が低い。
本来は心療内科と歯科の連携が望ましいが、ほとんど実現していない。
同クリニックには患者がホームページの情報を見て訪れるケースが多いという。
 
それでは、空気をのみ込む頻度を減らすにはどうするか。
歯科では「スプリント」と呼ぶ器具を作り、日中や夜間に歯にかぶせる。
上下の歯に隙間を空けて、食いしばる行為を意識できる。
これだけで胃腸の不快感がなくなり、頭痛などの症状も改善する例が多いという。
歯にかぶせる器具以外にも、日ごろから舌先を前歯の裏において口の中に空間を作るといった方法もある。

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心理的なアプローチも効果が見込めるという。
無意識のかみしめを防ぐため、よく目にする場所に「歯を離す」などと書いた貼り紙をして心がける。
首や肩、顎の筋肉を緊張させたり緩めたりし、緊張を意識できるようにする。
不安や緊張、気持ちの落ち込みが強い場合は抗不安薬抗うつ薬などを処方する場合もある。
 
患者の多くはかかりつけの医療機関で「気にしすぎ」「原因はストレスなので趣味を見つけて発散しましょう」などといわれ、長く不調に苦しんでいる人もいるという。
 
受験を控えて急にゲップが増える受験生もいる。

医師の認知度低く かかりつけ病院で相談を
呑気症を疑う症状に悩む患者はどうしたらよいのだろうか。
すんなりと治療に進むかどうかはわからない。
医師や歯科医の間で病気の認知度が低いためだ。
 
ホームページなどで情報を集め、プリントアウトしてかかりつけの歯科にかかれば、スムーズに治療を始められる。
 
一方で、呑気症の症状である胃腸の不調や頭痛、ふらつきなどは様々な原因で起こり、命に関わるケースもあるので注意が必要だ。
 
自分自身で呑気症と決めつけ、たいしたことはないと放置しておくと、重い病気だったら手遅れになりかねない。
 
呑気症の原因になりうるかみしめなどに本人は気づきにくいが、空気を頻繁にのむような癖が思い当たらないとしたら、ほかの病気を疑ってかからなければならない。
 
消化管のがんによる腸閉塞なども似たような体調不良が現れる一例で、早期治療が必要になる。
強い頭痛は脳腫瘍や脳出血などでも起こる。
 
まずは、かかりつけの病院で症状を伝え、これらの重い病気ではないことを確認してからでも遅くはない。

 
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参考
日経新聞・朝刊 2016.6.12


番外編
のんき
(性格や気分がのんびりとしていること。こせこせしないこと)

「のん(暖)」は唐音。「呑気」「暢気」は当て字
◯暖気
×呑気
×暢気