肌のシミ、治療はタイプ別に

肌のシミ、治療はタイプ別に  まず診断、まれに悪性も

ホルモンの影響?紫外線のせい?遺伝?
加齢とともに目立つようになる肌のシミ。
夏は強い紫外線を浴びることで、色が濃くなるため、気にする人が増える季節でもある。
シミは正しい治療を受ければ薄くすることが可能だが、治療法を誤れば悪化することもある。
以下は、皮膚科専門医によるタイプ別の治療法や注意点のポイントだ。

「目の下のシミを薄くしようと、医療機関でレーザー照射を受けたら、逆に濃くなってし
まった」。
そういった訴えがしばしばある。

こういった場合には肝斑(かんぱん)のことが多い。
30~40代の女性に見られ、詳しいメカニズムは不明だが、妊娠や生理不順、経口避妊薬などの使用をきっかけに頬骨や下あご、口の回りなどに面状に現れる。
紫外線を浴びると、さらに濃くなるため、夏場に海や山でのレジャーを楽しんだ後、悪化したと感じる人が増えるという。

肝斑はほかのシミには効果のあるレーザー治療を施した場合、逆にシミが濃くなってしまう。
さらに「紫外線や炎症が原因のシミと重なっている場合もあり、判別が難しい」こともあり、皮膚科の専門医を受診し、正しい診断を受けることが肝心だ。
 
肝斑には内服薬
治療には、じんましん患者の肝斑が薄くなったことから美白作用のあることが分かったトラネキサム酸やビタミンCの内服が有効。
2~3ヵ月飲み続ければ、大半は薄くなる。
医師が処方する薬のほか、大衆薬も販売されている。
 
そもそも、茶褐色や濃褐色のシミは、メラニン色素が皮膚に沈着することで起こる。
皮膚の代謝が活発な20代までは気にならないが、加齢に伴って代謝のスピードが低下、目立つようになる。
 
タイプは肝斑を含め、大きく3つに分かれる。
シミ治療を希望する患者の中で最も多いのが老人性色素斑だ。
日光黒子(にっこうこくし)とも呼ばれ、紫外線を長い期間にわたって浴び続けることで発生する。
 
屋外作業の多い仕事をしている人や頻繁に屋外スポーツを楽しむ人がなりやすく、放置するとイボ状に隆起することもある。
 
紫外線が原因の老人性色素斑に対し、ソバカスは遺伝が原因。
幼児期から現れ、肝斑などと違って思春期ごろにはかなり目立つようになる。
半米粒大のシミが両ほおから鼻にかけて多発するのが特徴だ。

レーザーは保険外
いずれの治療にもレーザー照射が有効。
必要な照射回数はシミの大きさや濃さによって異なるものの、直径3ミリのシミでI回、10ミリのシミだと25回程度が照射回数の目安。
照射直後は赤く腫れてかさぶたになるが、1~2週間程度できれいになるという。
 
ただし、シミ治療のためのレーザー照射は原則、保険診療の適用外となる。
照射回数と費用、通院期間については、治療を受ける前に医師に相談しておくといいだろう。
 
大半のシミは良性だが、ごくまれに、放ったままにしておくと生命にかかわる場合もある。
悪性のシミにはシミが盛り上がったように見える基底細胞がんやほくろのがんの一種である悪性黒子があり、治療には手術が必要だという。
良性のシミと取り違えて、悪性のシミにレーザーを当てると、がんが活性化して転移する危険性もある。
 
これらの皮膚がんは長年紫外線を浴びた高齢者ほど発症する確率が高まる。
ほくろや湿疹などと勘違いせずに、色むらや痛み、出血を伴うもの、新たに発生したもの、短期間で大きくなるといった急な変化に気付いた場合は、早めの受診を心掛けよう。



外回りで仕事、屋外で運動・・・ 日焼けで赤くなる人は注意
一部の男性は女性以上に紫外線対策に気を使うべきだ。
一部の男性とは、外回りや屋外作業の多い仕事をしている人、ゴルフ、テニス、ザーフィ
ンなど屋外でのスポーツを楽しんでいる人たちのこと。
 
美容に関心の強い女性の大半は日常的に化粧をしており、ファンデーションだけでも日焼け止め効果が期待できる。
一方、化粧をしない男性が日焼け止めクリームを塗らなければ肌は紫外線に対して無防備な状態のまま。
屋外にいる時間の長い男性は加齢に伴って老人性色素斑が増えるだけでなく、皮膚がんのリスクも高まる。
日焼けすると赤くなり、あまり色がつかない人ほど紫外線対策が必要とされる。
 
屋外で過ごす時間が長い場合は、1年を通じて日焼け止めクリームをこまめに塗ることが大切。
加えて、帽子やサングラスの着用も習慣にしたい。


<まとめ>
肌のシミは種類によって対処法が異なる
肝斑
・原因
妊娠・出産などホルモンバランスの崩れをきっかけに現れる。紫外線を浴びると濃くなる。
・特徴
30~40代の女性に見られるほお骨や、下あごなどに面状のシミが現れる
・治療法・注意点
トラネキサム酸やビタミンCの内服、美白作用のあるクリームの外用
レーザー照射はシミが濃くなるので逆効果

老人性色素斑
・原因
長期間にわたって浴びた紫外線が原因
・特徴
40代以降に見られる顔の側面やほおなどに直径1~数センチ大のシミができる
・治療法・注意点
レーザー照射
レーザー治療は保険診療の対象外で、全額自己負担となる。費用は直径1センチのシミで3万円程度が目安

ソバカス
・原因
遺伝が原因。
紫外線を浴びると濃くなる
・特徴
幼児期から現れ、思春期ごろから目立つようになる
ほおや鼻に半米粒大のシミが多発する

・治療法・注意点
レーザー照射
レーザー治療は保険診療の対象外で、全額自己負担となる。費用は直径1センチのシミで3万円程度が目安


参考
日経新聞・朝刊 2010.8.14